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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第九部 カズハ・アックスプラントと竜人族の姫(中編)
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024 こんにちは、カズハです。俺、捕食されちゃいました。

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LV.61 カズハ・アックスプラント

武器:血塗られた黒双剣ブラッディ・スパーディオン【偽双剣】(攻撃力1)

防具:布の黒装束(防御力1)

装飾品:火撃の指輪(魔力3)

特殊効果:斬撃強化(小)、火属性強化(小)

状態:疲労【超極大】

魔力値:2790

スキル:『ファスト・ブレード LV.17』『スライドカッター LV.45』『アクセルブレード LV.30』『スピンスラッシュ LV.31』『ツインブレイドLV.19』『ブルファイト・アタックLV.18』『センティピード・テイルLV.13』『ダブルインサートLV.8』『エクセル・スラッシュLV.7』

魔法:『力士(陰)』『蛇目(陰)』『塩撒(陰)』『隠密(陰)』『悪夢(陰)』『迅速(陰)』

得意属性:『火属性』『陰属性』

弱点属性:『光属性』『闇属性』

性別:女

体力:3192

総合結果:『瀕死』

----------



「はぁ、はぁ、はぁ…………。はぁぁぁ~~~~…………。終わったぁぁ~~~…………」


 最後の一体となった四首仙人ラクシュミの頭部に血塗られた黒双剣ブラッディ・スパーディオンを突き立てたまま、俺はその場に倒れ込みます。

 マジ死ぬかと思った。もう二度とやらないこんな試練。無理。馬鹿。


「……か、カズハ、様……。終わったの……ですか…………?」


 俺と同じく全身ボロボロのレイさんが倒れたまま俺に右腕を伸ばしてくる。

 彼女もよくこの過酷な試練を乗り切ったと思う。

 俺の思い付きで連れて来られただけだったのに。さすがレイさん。俺の信頼する仲間。そしてエース。


ピー、ピー、ピー。


『――二刀流習得試練、お疲れ様でした。三十分後にこの空間は自動消滅致します。それまでに準備を整え、亜空間から脱出して下さい』


 機械的な音声が白い空間内に響き渡ります。

 今すぐには立ち上がれないから、ちょっと休憩したらレイさんと一緒にここから脱出しよう。

 いや久しぶりに本気で修行しました。何年ぶりだろ、こんなに頑張ったの。


『二刀流習得者、カズハ・アックスプラント、およびレインハーレイン・アルガルド。両者にクリア報酬【二刀流】と【ツーエッジソード】を贈呈します』


「……ツーエッジ……ソード?」


「おおきたきた。これが二刀流の最強スキルだぜ、レイさん」


 俺は空間をタップし、スキルの項目を確認する。

 二刀流を習得して、ここぞというタイミングで『ツーエッジソード』を使うってのが俺の定石の戦い方だからね。

 武器を両手でそれぞれ装備して攻撃力がおよそ二倍。そこにツーエッジソードを使って更に二倍。

 防御力が半減しちゃうリスクはあるけれど、これさえ覚えれば大抵の敵に勝つことが可能です。


「後は勇者の剣と、爺さんに作ってもらう剣でどうにかなるかな。あー、マジ疲れた。ちょっと仮眠しても良い? レイさん?」


 俺は大の字に寝転がり目を閉じます。

 まあこのまま寝過ごしちゃってもこの亜空間からは強制的に退場させられるから別に良いんだけどね。

 とにかく今は休憩したい……。何も考えたく無いし、何もしたくない……。


「……よし」


 ? 今、レイさんが何か言った気がするけど、さすがに起き上がることも出来ないでしょう。

 後で彼女がこの三日間でどんな二刀流スキルを獲得できたかも聞いてみよう。

 俺とは戦闘スタイルが違うから習得する二刀流スキルも若干違ってくるだろうし。


「モゾモゾ……」


 ?? 一体レイさんは何をそんなにモゾモゾしているんだろう……?

 トイレかな? ……いや、この亜空間じゃ腹も減らないしトイレにも行かなくても大丈夫なはずなんだけど……。


「……カズハ様? 約束を覚えておいでですよね?」


「約束?」


 少しずつ彼女の声が近づいてくるのが分かる。

 約束……? 何だっけ、約束って……?

 それよりもめっちゃ疲れてるから目を開けるのも億劫なんだけど……。


「むにゅ」


「むにゅ???」


 今なにか柔らかいものが俺の腹の上あたりに触れました。

 あれ? なんかレイさんの気配が下のほうから感じ――。


「……って裸っ!?!? なにしてんの、レイさん!??」


 そっと目を開けたら、そこは肌色の世界でした。

 ……いやいやいや!! ここ白い世界だから!! どうして眼前に肌色が広がっちゃうの!?


「約束通り、カズハ様を頂きに参りました」


「頂きに参りました!?!?」


 もはやレイさんの目はハート型に変化し、完全に自分のモードに入ってしまわれております。

 彼女の全身は透き通ったように白く、この白い亜空間とも絶妙にマッチしていて――じゃなくてっ!!


「カズハ様をしゃぶりたい」


「いやいやいや!! 目を覚ましてレイさん!! ぐっ……!! ち、力が強すぎる……!! 毎度ながらどうなってんのこれ!!!」


 俺の上に跨ったレイさんは圧倒的な力で俺を押さえつけてきます。

 まるで魔獣王みたいだ……! どこからこんな力が湧き出てくるの! 今しがた死闘が終わったばかりだっつうのに!!


「……あ! そうか! こういう時のために……『ツーエッジソード』!!」


 俺は咄嗟に今さっき習得したばかりの二刀流スキルを発動します。

 これで攻撃力が二倍! 単純に腕力も二倍に増したから、これでレイさんを引き剥がし……引き剥が――せない!??


「カズハ様……。レイは永遠に貴女様のしもべですわ」


「僕だったら俺を離して!! 捕食しようとしないで!!!」


「駄目です。これは御褒美ですもの。約束しましたもの」


「どんな約束!?」


「『凄いことをしても良い』って」


「凄いことって…………あっ」


 …………うん。

 確かにそんな感じのことを言った気がする……。

 でもあれはその場の勢いというか、そもそも口から出まかせというか……。


「だからレイは凄いことをさせて頂きますわ。それはもう、ビックリするくらい凄いことを」


「いやいやいや!! ちょっと待って!! くっそ……剥がせない!! 何なのその馬鹿力は……!!」


「聞きたいですか、カズハ様? 今からレイがカズハ様にどんな恥辱を与えるのかとか」


「聞きたいわけねぇだろおお!! ホントごめん! いやごめんなさいレイさん!! あの時の俺はどうかしてたというか、ちょっとレイさんのやる気を出させるために嘘を吐いたというか……!」


 どんどんレイさんの顔が俺に近付いてきます。

 まるでリアルなホラー映画を見ているようだ……! 怖い、喰われるこれマジで……!!


 そして最後にレイさんは俺の耳元でこう囁いたのでした。



「――カズハ様の全てを、頂きますわ」



 俺は恐怖のあまり全身が凍りつきました。

 そして後悔しました。


 あの時、軽い気持ちで『凄いことをしてもいいよ』なんて言ってしまったことを。



 ――というか、亜空間ここにレイさんを連れて来たことを。




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― 新着の感想 ―
[良い点] ここを出ても更なる変態が待ち受けているからな
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