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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第八部 カズハ・アックスプラントと竜人族の姫(前編)
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008 知識チートでは限界があるだろうけど、どうにか慎重に進みます。

 ――帝都アルルゼクト、王の間。

 すでに入口付近では帝王と謁見をするため、数十名という見習いの戦士や魔法使い、武道家などがごった返しています。

 ここがもしも『一周目の世界』であるならば、今日は王と謁見をするために国中から腕自慢が集まる日でもあるんだけど……。


「(やっぱ一周目と流れがほぼ一緒だよなぁ……。違うところと言えば、『これ』だけか……)」


「次の者! 前へ!」


 護衛の兵士に呼ばれ、俺は王様の前まで歩きます。

 この国の帝王、ガロン・アゼルライムスは少しだけ高い場所に設置してある王座に座ったまま、威厳のある表情で俺を見下ろします。

 性別は……まあ確認するまでもないか。

 あの髭面で女のわけがないし……。


「おぬしの名前と性別、現在のレベルを答えよ」


「カズハ・アックスプラント。女。レベルは1です」


「職業は?」


「無職です」


「今日はなぜ勇者候補に名乗りを上げた?」


「魔王軍に殺された亡き父の仇を取りたいからです」


 テキパキとガロン王の質問に答えます。

 質問も今までと全く同じ。

 でも『三周目』が始まったころは最初に名前と性別を答えた時点で追い出されました。

 やっぱリリィの言う通りこの世界は男も女も平等みたいですね。

 ……となるとこの世界は『四周目』という線も濃厚になってきたなぁ。

 だとすると俺のレベルが1に戻った理由を探さないとならんのだけど……。


「ふむ、勇者の刻印たる『光』と『闇』も備わっておる。若干『陰』というのが気にかかるが……まあ及第点じゃろう。合格じゃ。二次試験まで精進せよ」


「カズハ・アックスプラント! 勇者候補生一次試験突破! 次の者!」


 警備兵に背中を押され、すぐに次の順番待ちの戦士が王の前に立ちます。

 俺はそのまま隣の別室に移され、二次試験のための説明を受けることになりました。


 二次試験の内容も今までと一緒。

 アゼルライムスの街を出て北西に約40ULウムラウトほど歩いた先にある『始まりの洞窟』の最奥にいるボスを倒してドロップアイテムを持ち帰ること。

 この洞窟は初心者用の洞窟でクリアするのはだいたいレベル5くらいが推奨です。

 最初は装備も弱いし魔法も覚えていないからクリアするのが結構難しいんだけど、街周辺の草原で雑魚を倒してゴールドを貯めて、ちょっとずつ強い装備を整えていけば一週間くらいで達成できるかなぁ。


 それが終われば最終試験。

 今度は街の北東、約120ULウムラウトの位置にあるアゼル湖という大きな湖に生息している『アゼル巨雷亀』を撃退するイベントのクリアが試験合格の条件です。

 このイベントには帝国兵のうち二名を同行者(というか監視者)として貸し出されるわけだけど、その二名というのが俺の場合はグラハムとリリィだったわけですね。

 その縁をきっかけに俺は二人を仲間にして最終的に魔王を倒したという涙ちょちょぎれのストーリーだったわけで――。


「(うーん……。どこまで史実通りに進めたら良いのやら……。あの婆さんの言った通り、今回は絶対に失敗できないから、慎重に動かんとならぬし……)」


「カズハ・アックスプラント! ちゃんと説明を聞いているのか!」


「あ、はい。聞いてます」


「嘘を吐け! じゃあ今説明した勇者候補生規約第三十四条第四項を唱和してみろ!」


 勇者候補生の教育係である帝国兵がそう叫ぶと、同じく説明を受けている候補生達が一斉に俺のほうに向きました。

 あー、なんか注目されてる……。

 どないしよう。あまり目立ちたくないんだけど……。

 仕方ない。無難にいくか。


「勇者候補生規約第三十四条第四項。『勇者たる者、弱きを助け魔を砕き、全ての人間族の生命と尊厳を守り、精霊を神と崇め、また己の強さに過信せず、仲間を思いやり、一本の槍の如く貫いた精神を心に留め、誠心誠意邁進することをここに誓う』」


「へ? ……あ、コホン。そうだ。良く聞いていたな」


 目を丸くした帝国兵はそのまま咳払いをし、俺から目を逸らして説明を続けました。

 ちょっとだけ周りがざわついたけど、まあセーフでしょ。

 ちなみにここテストに出るからね。しかも抜き打ちで。


「――以上で説明は終わりだ! 諸君らの検討を祈る!」


 ようやく退屈な説明が終わり、俺は解放されました。

 ぞろぞろと部屋から戦士たちが出て行って、また次の受験生らが部屋の中に入ってきます。

 さあて、謁見も終わったし頭の中の整理がてら酒場にでも行きますか。

 喉も乾いたからミルク飲みたい、ミルク。





「可能性は二つ……。ここが『一周目』で、俺の性別と男尊女卑だけが改変された世界。もうひとつが『四周目』。俺のレベルは引き継がれず、宝玉の力で四度目の人生の繰り返し……」


 酒場の奥の席に座り、俺は今の状況を紙に書きだして現状分かっていることを整理します。

 こういうときにユウリがいてくれると俺の代わりに考えてくれるんだけど……。

 今更ながら仲間にずいぶん助けられて生きてこれたことを痛感しますね……。


「でも、もしも『四周目』だとしたら、どうにかして解決法を見つけたとしても、そこからまた『三周目』に戻れるものなのか? それとも戻らずに・・・・、このまま魔王を倒して歴史の世界の歪みを調整する……? いやいや、それじゃセレンが助からない。この世界の魔王が死ぬってことはセレンが死ぬってことだから――」


 そもそも婆さんは『四周目に飛ばす』とは一言も言っていなかった。

 それにあの『記憶の魔霧門デモンズゲート』は過去世界に戻るための門だ。

 四周目に飛ぶのに、竜王を探すというのは辻褄が合わない気がする。

 ……やはりキーワードは『竜王』なのだろう。


「やっぱ可能性が一番高いのは、この世界が『一周目』だってことだよなぁ。もうこれに絞って先に進むしかねぇか」


 書き散らした紙を捲り、次のページに一周目の俺の記憶にある攻略ルートを箇条書きにします。

 まあざっとこんな感じかな。


ーーーーーーーーーー

勇者候補一次試験(始まりの街アゼルライムス)/推奨レベル1

     ↓

勇者候補二次試験(始まりの洞窟)/推奨レベル5

     ↓

勇者候補最終試験(アゼル湖)/推奨レベル15

     ↓

闘技大会(エーテルクラン)/推奨レベル25

     ↓

帝都襲来(魔獣王ギャバラン戦)/推奨レベル35

     ↓

精霊の丘(聖者の罪裁剣エンジェルスブレイマー獲得)/推奨レベル40

     ↓

デビルロード踏破(魔屍王ゼロスノート戦)/推奨レベル45

     ↓

最果ての街(魔鳥王ブレイズベルク戦)/推奨レベル50

     ↓

魔王城攻略(魔人王バラディアス戦)/推奨レベル52

     ↓

魔王討伐(魔王セレニュースト・グランザイム戦)/推奨レベル55

ーーーーーーーーーー



 一周目では魔獣王との戦いで王女のエリーヌが死亡し、魔王との戦いでグラハムとリリィが死亡した。

 で、俺はそのままレベルも装備も、魔王がドロップした魔剣も引き継いで二周目に突入して――の流れですね。


「今回も一周目だとしたら、今のままでいくと帝都襲来でギャバランにエリーヌが殺されるから、それまでに竜王を探してどうにかしないとタイムアップ……マジか」


 ギャバランを退けられたのは二周目の段階で、レベルは確か……70を超えてた記憶があります。

 隠し要素である二刀流もゼギウスの爺さんから伝授してもらった後だし、このままいくとエリーヌを助けられずに物語が進んでしまう可能性が高い。


「今回の俺に残っているのは『知識チート』くらいか……。効率良くお金貯めて装備整えてレベル上げて、早いところ竜王ルート? を探さねぇと時間が足りない……」


 竜王ルートというものが存在するかは分からないけど、藁をも掴む思いで進んでいくしかないです。

 慎重に。かつ大胆に。

 ……どうして俺はいつも無理ゲーに巻き込まれるのでしょうか。


「はぁ……。なんかさっそく憂鬱になってきた。でもとりあえず勇者候補までには昇進しておかないと帝国兵から仲間を貸してもらえない規約だし、そこまでは進めないと」


 ギルドで仲間を集めるためにはかなりのお金がいります。

 それは非効率だし、知識チートを駆使するためには仲間の能力をすべて把握していないと駄目。

 つまり、もう誰を連れて行くのかは決まっています。


「グラハムとリリィと……あと一人くらいは必要だよなぁ」


 ミルクを飲み干した俺は立ち上がり、お勘定を済ませます。

 酒場から出て少しだけ考えた俺は、もう一度帝都へと足を向けることに決めました。

 三人目の仲間はおいおい考えるとして、必要なのは竜王についての知識だ。

 帝都にある王立図書館なら色々と資料が残っているだろうし。

 


 頭を掻きむしった俺はボサボサの頭のまま帝都へと向かいました。




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