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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第七部 カズハ・アックスプラントの隠居生活
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027 毎度色々とあるけれど俺は俺の行く道を貫き通します。

「あー……もうマジで憂鬱……」


 ルガルガ組との会議を終えた俺達は集落の西にあるライムの家で休憩をとります。

 オゴエの爺さんも付いてくるかと思ったけど、なにやら調べものがあるとかで一人でさっさと帰っちまったし……。

 あの爺さん、エロいだけじゃなくて他にも色々と知っていそうだったから、もっと情報を聞き出したかったんだけど……。


「お茶でも淹れましょうか。カズハ様は何がよろしいですか?」


「あ、俺ミルクがいい」


「ふふ、かしこまりました」


 リビングルームのソファでくつろぐ俺とレイさんに声を掛けたライムは台所へと向かいました。

 さあ、これからどうすっかねぇ……。

 せっかく家庭菜園の技術を教えてもらおうとした矢先に、まさかの新生物キメラ因子ときたもんだ。

 土壌まで汚染するかね……。マジでジェイドの野郎、腹立つなぁ……。


「議会でも新生物因子による環境被害の懸念は発表されておりましたが、被害状況を把握・分析するためのサンプル入手が思うように進んでいないとのことでしたから……。今朝の会議内容をさきほど魔法便でユウリ様とガゼット博士、その他議会と協力関係にある各国の魔法遺伝子研究所あてに送らせていただきましたわ。後日改めてルガルガ組やオゴエ殿にサンプル提供の要請が送られてくると思います」


「うん、サンキュー、レイさん」


 ちょうどユウリも宮殿に来ているし、ガゼットのおっさんやルーメリアも一緒だとか言ってたから、まあ不幸中の幸いって言ってもいいのかしら。

 昨日の昼過ぎには仲間の一部もルシュタールに到着しているだろうし、ここは一度みんなと合流しておかないとさすがにマズいか……。

 まーた俺が何か悪さをしたとか言われても嫌だし……。


「そういえばユウリがスーマラ洞窟に抗新生物質アンチ・キメラの試薬を撒くとか言ってたけど、それって土壌汚染とかにも効果はあるもんなの?」


「『異常魔法遺伝子サンプリング調査』の件ですわね。……残念ですが、今回研究開発をされた試薬では土壌深くに侵食した新生物因子に対しての効果は限定的だと思われますわ。これまでの研究で明らかになっているのは、新生物因子とは、あくまで『種族間』で感染が広がっていく魔法遺伝子の変異型と言われておりますから、土地や水、草木などの『環境』にまで汚染が広がっているとなると……」


「だよなぁ。また一から研究しなおさないと駄目だよなぁ」


 そのままソファに雪崩れ込む俺。

 これから三国の首長選挙やら種族存続計画ユートピアやら緊急のイベントが目白押しなのに、スケジュールとか色々と変更になっちゃうんだろうなぁ。

 まあさすがに白紙には戻らんだろうけど……。

 

 ふぅむ……。

 よーし、こうなったら方法は一つしかない。

 俺は『俺の方法』で、夢の家庭菜園をつかみ取ってみせるぜ!


「紅茶とミルクをお持ちしました。どうぞ」


 ライムがお盆に乗せた飲み物をテーブルに置いてくれる。

 俺とレイさんはそれぞれミルクと紅茶を受け取り、まずは一口飲みます。

 うん、旨い。やっぱ仕事の後はミルクに限るね。


「なあライム。ひとつ頼みごとがあるんだけど聞いてくれるか?」


「? あ、はい。わたしでお手伝いできることでしたら、何なりと」


「俺と一緒に暮らそう」


「ぼふーー!!? ……げ、ゲホゲホっ!! き、急に何をおっしゃるのですかカズハ様……!!」


 何故かむせて咳き込むレイさん。

 ていうか今めっちゃ俺の顔に紅茶がぶっかかったんですけど……。

 レイさんの唾と一緒に……。


「わたしが……カズハ様と一緒に……暮らす……」


「うん。俺さぁ、世界が平和になったら家庭菜園でもやって、ゆーっくりまーったりと余生を過ごすのが夢だったんだよ。で、せっかく徐々に平和になってきたのに、今度は土壌汚染問題だろ? あの組長もオゴエのじいさんも一筋縄じゃいかなそうだから、たぶん全面的に協力とかはしてくれなそうじゃん」


「ま、まさかカズハ様……。それでライムさんを帝都にお連れするつもりで?」


「いや、帝都じゃ空気も土も汚いから家庭菜園には向いてなさそうじゃん? 俺、個人的には『精霊の丘』あたりが良いと思うんだよね。あそこだったら誰にも邪魔されずに畑仕事とかできそうだし、最果ての街も魔王城もそんなに遠くないからアクセスにも便利だと思われ」


 畑仕事で人手が足りなくなったら、タオの親父さんや最果ての街の住人に協力してもらえれば俺も楽できるし……。

 何だかんだで魔王城のことも気になるから、そっちに戻ってまったり生活するのも悪くない。

 もはやあの城は別荘みたいな扱いだからね☆


「せ、『精霊の丘』といえば精霊族の聖地ではありませんか……! そのような場所で田畑を耕すことができるなんて……! わたし、わたし、幸せでどうにかなってしまいそう……! はうぅ……」


 恍惚の笑みを浮かべたライムはそのままおでこに手を当てソファに倒れ込んでしまいました。

 相変わらず感情表現が豊かな子やね、この子は。


「なりません! ぜーったいに、なりません! ライムさんはルガルガ組で必要な人財ではありませんか! カズハ様に付いて行くという事は『魔王軍の一味』となるという意味です! これ以上、カズハ様の近くに若くて側室候補になりえる可能性のある少女を置くことは――げふんげふん、そうじゃない、そうじゃないわレイ、落ち着くのよ。大丈夫。あなたは捨てられない。側室第一号はあなた。誰にも渡さないわ。ええ、自分を信じるのよレイ。どうしようもなくなったら魔力ゼロのカズハ様を押し倒して既成事実を作ってしまえば良いのだからごにょごにょ……」


「レイさん……。心の声が駄々洩れてる……」


「……はっ! 違う、違いますのよ、カズハ様! 決してカズハ様の寵愛を独り占めしようとしているわけではなく……ええ、そのような既得権益などもってのほか! エリーヌ姫様にも申し訳が立ちませんわ! 独占禁止法違反ですわ!!」


 興奮してしゃべくり散らすレイさんの言っている意味が理解できないので、とりあえず無視します。

 でもライムのあの様子だと、たぶんオッケーを貰えそうだよね。

 こっちには同じドワーフ族のゼギウス爺さんもいるんだし、魔王城で留守番している爺さんの話し相手にでもなってもらえばボケ防止にも繋がるんじゃなかろうか。


「おーし、じゃあ決定! ライム、さっそくで悪ぃけど、昨日収穫した『夢魔イモ』の残りってどこかにあるか?」


「……へ? あ、はい。いちおう全て『地脈のリング』で光を当てて、正常な作物であることを確認したものしか残っておりませんけど……」


 そう答えたライムは立ち上がり、再び台所へと向かっていった。

 会議で皆に見せた新生物キメラ化した芋以外にも、同じ場所で収穫した芋だったら侵食されている痕跡が残っているかもしれない。

 とりあえずそれだけでも持ち帰って、ユウリとガゼットのおっさんに託しておこう。

 土壌問題は俺にはどうすることもできないから、そこはちゃんと専門家に任せる。

 俺は俺で、引き続き家庭菜園の道を切り開いていくぜ!


 善は急げ――。


 オゴエの爺さんやら組長に見つからないうちに、俺はまだごにょごにょ言っているレイさんの尻をひっぱたき、二人を連れてさっさと宮殿に戻ることにしました。




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