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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第一部 カズハ・アックスプラントの三度目の冒険
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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず思考することでした。

 それから再び俺は深い眠りに落ちました。

 夢の中で俺は蒼銀の鎧を着た勇者で。

 その傍らには純白のドレスに身を包んだレイさんが居て。

 うん。これはアレだ。結婚式だ。

 レイさんは嬉しそうな顔で俺を見上げて、時折涙を流していて。

 ああ、なんだろう。この溢れんばかりの幸福感。

 

「ん……」


「ふふ、おはよう御座います。ずいぶんと嬉しそうなお顔ですが、何か良い夢でもご覧になられたのでしょうか」


 目を覚ますと、そこには笑顔のレイさんが俺の顔を覗き込んでいた。

 くっ、危ない……!

 そんなに顔を近づけられちゃうと、唇を奪っちゃうぞ! レイさん……!


「あら? またお熱が出てきたみたいですね。いけませんね。もう少し休まれたほうがいいでしょう」


 俺のおでこに手を当てたレイさんはそう言い、おしぼりを絞って乗せてくれた。

 でもそろそろ宿に戻らないと皆が心配する。

 レイさんはこう言ってくれるけど、甘えてばかりでは申し訳ないし……。

 

 あー、でも懐かしいなぁ。

 昔はエリーヌもこうやって俺が風邪を引いたときに看病をしてくれたのを思い出す。

 二周目のときの結婚生活なんてホント幸せだったからなぁ。

 あの時が人生で一番幸福だったと言っても過言ではないです。うん。


「よいしょ……。で、あとはこの上着を……」


 レイさんは俺の上着を丁寧に脱がしてくれる。

 そして優しく首筋や腕をおしぼりで拭いてくれる。

 ああ、気持ち良い……。また寝ちゃいそう……。


 ていうか、そろそろ王都襲来の時期に備えて準備とかしておこうかなぁ。

 微妙に今までと三周目とでは状況が違ってるから、多少時期が前後する可能性もあるだろうし……。

 奴らの狙いは王や王妃ではなく、エリーヌだからなぁ。

 一周目で彼女は俺の目の前で殺され、魔王軍はそのまま城を落とさずに去っていった。

 敵将の強さは半端なくて、いくら攻撃しても全くダメージを与えられなくて。

 つまりあれはそういうイベント・・・・・・・・だということだ。

 未だに奴らが何故エリーヌをターゲットにしていたのかは不明だけど――。


「……よし。じゃあ、ついでに下着もずらして……」


 レイさんは次に俺の下着を軽く下にずらして足やお腹を拭き始めた。

 もう汗で全身がベタベタだからね。

 ここまで献身的にしてもらっちゃったら、後で改めてお礼をしなきゃ駄目だよね。


 ……あれ? でも待てよ……。

 この三周目ですでに魔王は不在になっちゃったよね。

 不在っつうか……何故か俺の眷属になっちゃったわけだけど……。

 二周目のときだと、俺は魔王を倒して、その次にラスボス戦に突入したわけじゃん。

 でも今回はまだ倒していないから、魔王軍を動かせる奴がいないってことになるんじゃないの?

 ……それともすでにあのラスボスが魔王の座に就いているとか?

 うーん……。

 まあどちらにしても、王都を襲撃されちゃったら俺以外にエリーヌを守れる奴はいないんだから、やっぱ早めに準備しておくしかないよなぁ……。


「あ、そうですわ。ここまで来たら全部脱がしてしまいましょうか」


 レイさんは俺を全裸にして全身くまなく拭き始めました。

 いや、何かホントごめんなさい。

 そこまでしてもらっちゃうと少し恥ずかしいというか……。

 むしろ全裸にする意味はそんなにないんじゃないかと思っちゃうくらいでして……。


「あの、レイさん」


「はい。何でしょうか」


「ええと、ちょっと恥ずかしいです」


「何がですか?」


 ……うん。

 めっちゃ笑顔で返された……。

 どうしよう。

 手を休めるどころか、ますます全身を丹念に拭き始めちゃった……。

 ……あれ?

 なんか段々、手つきがおかしい気が……。

 お尻とか胸とか、必要以上に触ってないですかね……。


「あ、もう大丈夫です。だいぶ綺麗になったし……」


「いいえ。まだ拭いていない箇所がいっぱいあります。遠慮なさらず、私にお任せ下さい」


 ……うん。

 なんか今、背筋がゾクってしたんだけど……。

 なんだろう、これは。

 俺の本能が危険信号を発している……。

 

「……はぁ……はぁはぁ……。カズハ様の……お身体……。はぁはぁ……」


「…………」


 ……なんか聞こえてきた。

 レイさんの鼻息が荒い……。

 どうしよう。怖い。怖くなってきた。

 え? どういうこと?

 俺の理想の女性像が脆く崩れ去っていくんですけど……。


「あ、あの……レイさん。触るの、やめてもらっても良いでしょうか……?」


「はぁ、はぁ……。……れして、はぁはぁ……。……のです」


「…………はい?」


 ごめん。鼻息がうるさくて、何を言っているのか全然聞き取れない。

 何をそんなに興奮しているんですか?

 目がヤバい、目がヤバい。

 

「えーと……あのー……」


 俺がもう一度聞きなおそうとした瞬間。

 レイさんは真っ赤な顔でこう叫んだのでした。


「――わたくしっ! カズハ様に、一目惚れしてしまったのですっ!!」


「……………………はい?」




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