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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第六部 カズハ・アックスプラントと古の亡霊(後編)
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045 因縁の対決も三度目となりました。

 ――魔王城グランザイム内に存在する迷宮、通称『螺旋回廊』。

 かつて帝国の誇る勇者候補生達が幾度となく攻め入り、しかし一度も攻略することが敵わなかった難攻不落の迷宮である。


「相変わらずこの迷宮は謎が多すぎるアルね……。誰が何の目的でこうしたのか――――ひんっ!?」


 薄暗い回廊で短い悲鳴が鳴り響く。

 しかし声の主はすでにそこにはおらず、後ろを歩く兎耳の少女も同じく悲鳴を上げた。


「あ、そこ落とし穴あるから気を付けろよタオ。あとミミリ、その壁に触ると上からスライム落ちてくるから」


『そういうのは先に言うアルよ!!!』

「さ、先に言って下さると助かります……! ひゃんっ! 服が徐々に溶けて……駄目ですぅー!」


 下の階から上を見上げるチャイナ服の少女はまるで口から火でも吹いているようだ。

 ああ、恐ろしい。でもミミリたんがセクシーだからタオは別にいいや。無視。


『グラッチ兵士長。恐らくここが最後の階層エリアでしょう。この先は魔王の待つ黒銀の扉があるのみ。如何致しましょう』


 ……ん?

 どうやらこの先にある階層に敵の軍団が到着した模様です。

 ちょうど良いじゃん。結構広い場所だし、戦うにはうってつけですな。


『隊長やジェイド様を待つまでもない。このまま進軍し、一気に本丸を攻め落とす。すでに魔王にもジェイド様の破理や無の禁断魔法の情報が伝えられているはず。その状況下で最前線に出てくるほど馬鹿ではあるまい』


『確かに。なれば敵の戦力がほぼ皆無に等しい今、我らの勝利は確実というわけですな。ジェイド様の知略は世界の宝。我らによる世界統治がすぐ目の前に……!』


 ……うん。

 なんかキモイ新生物キメラ兵士達が一斉に笑い出しました。

 どうしよう。鳥肌立ってきちゃった……。


「よいしょっと。あー……敵将さんも完全に読み違えてるアルね。その『馬鹿』がこうして目の前まで来ているアルというのに」


「馬鹿とはなんですかタオさん。頭脳プレイと言って下さい」


 どうにかして上までよじ登ってきたタオにさっそく馬鹿にされたし……。

 でも敵の予想の裏をかいたんだから、それって結果オーライってことじゃん。

 たまには褒めてくれないとグレるよ。俺がグレたら大変だよきっと。


「敵将は『十手』のスパンダム・グラッチですね……。ユーフェリウス卿が彼に与えた能力と武器は、ゲイルさん、デボルグさん、それとルーメリアさんから奪ったものです」


「そ、それに不死魔法エデンの付与つきで、しかも強化された新生物キメラ兵士って……。ただでさえ化物アルのに、これじゃ手も足も出せないアルよぅ……」


 そう言い怯えた表情で俺の背に隠れてしまったタオさん。

 うーん、確かに四宝のうちの三つがあの鹿蜘蛛野郎の手に渡ったのはかなり痛い……。

 ていうかチートだろ!

 『次元刀』と『神の爪』が使える時点で誰も勝てねぇっつうの!


「……いや、思い出した。あいつにはまだ色々と・・・借りを返していないんだっけ」


 一度目は紅魔の里の監獄での出来事。そのせいでちょっと鬱になりかけました。

 そして二度目は連邦国での再戦。そのせいで残りの寿命が半分以下になりました。


「まったく……。一体どんだけしつこいんだよ。三度目だよ三度目。しかも今度は俺の大事な仲間の能力まで奪いやがって。……まぁ奪ったのはジェイドだけど。だが許さん。地獄を味わってもらいます」


「ちょ、待つアル……! そんなに堂々と正面から出て行かなくても、背後に回って奇襲をかけるとか――」


 俺は背中の服を引っ張るタオを無視し、目の前の扉を蹴破りました。

 そして目を見開く鹿蜘蛛野郎どもにこう叫んでやったんだよ。


「コノヤロウ、俺の城に土足で入り込みやがって! そこに一人一人並びなさい! 全員ぶっ飛ばしてやるから!」



 ――これが『十手』スパンダム・グラッチ率いる新生物キメラ部隊との戦闘の合図となりました。




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