表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第六部 カズハ・アックスプラントと古の亡霊(後編)
318/477

034 俺だって失敗から学ぶことがたくさんあるんです。

「へくしっ!!」


 瑠燕リュウヤンを見事ぶっ飛ばした俺は優雅に海中遊泳をしつつ帝国に戻る途中です。

 本当はこのまま四皇が乗っているっていう精霊船まで飛んで行ってカズハちゃん無双をしてこようと思ったんですけど、調子に乗って深追いするなってユウリに釘を打たれてるし……。

 ていうか、また誰か俺のうわさ話とかしてませんかね。

 もう俺、風邪とか引かないはずだし、絶対悪口言われてる気がする……。


「あいつらもう、魔王城に着いたかなー。セレンもあのドラゴンゾンビの……なんつったっけ? あいつと家族のドラゴンゾンビも呼び寄せるって言ってたし、そろそろ着いてもおかしくないだろ」


 名前忘れたけど、あの腐ったドラゴンには家族がいるらしい話は前にも聞きました。

 確か夫と子供とか言ってたっけ……。色々突っ込みたいことがあるけど、その辺はスルーして、と。


ピー、ピー。


「あ、ちょうど魔法便きた。ええと……セレンからか。どれ、ポチっとな」


 空間をダブルタップし、魔法便の内容を表示させます。


--------------------

カズハよ。

この魔法便が届いた頃には、お前は瑠燕リュウヤンを撃破していることだろう。

我には分かるぞ。なにせお前は我が主だからな。

そして我が眷属ドラビンと、その夫ドラグルと三人の子供ドラっち、ドラドラ、ドラ子の働きにより魔王軍幹部、及びエリーヌ姫は無事に魔王城に到着した。

『剛盾』、『血槍』、『鼠刃』と続けざまに倒したお前の武勇、末代まで祟ってやるからな。感謝するのだぞ。


親愛なる魔王の眷属セレンより

--------------------


「………………」


 ……うん。なんか最後の言葉とか色々間違えてる気がするけど、魔法便とか使い慣れてないだろうからここもあえてスルーします。


「ていうかドラゴンゾンビの夫と子供にまで勝手に名前付けちゃってるし……。ドラグル……。……ん? ドラゴンゾンビで、ドラグル……? ドラグル……。…………。『ドラゴングルセイド』かっ!?」


 思わず俺は大声を出してしまいます。

 だってドラゴンゾンビ種の『ドラゴングルセイド』って、政府指定危険魔獣だし!


 ※まとめ※

 〇世界の四大陸危険魔獣一覧(政府指定危険魔獣:危険度S級)

 ・ユーフラテス公国:デビルスフィンクス

 ・ラクシャディア共和国:グランドゴレムス

 ・ゲヒルロハネス連邦国:ギガントキマイラ

 ・アゼルライムス帝国:ドラゴングルセイド

 【提供】ギルド公報


「さすがは元魔王……。政府指定危険魔獣の奥さんを眷属にするとは……」


 ていうか夫の危険魔獣に魔王軍運ぶの手伝わせてるから、こりゃドラグルさん、奥さんの尻に敷かれてるね! きっと!


「まあでも、あいつらが魔王城に籠ってくれたらルルも無事だろうし、こりゃ戦争終結も目前――って、あれ? あの船……聖堂騎士団の船じゃね?」


 そろそろ背泳ぎから平泳ぎに変えようかと思ったところで眼前に公国の戦艦が見えてきました。

 たしか俺が盾のおっさんを撃破(追突とも言う)してから慌てて逃げ帰ったんじゃなかったっけ……。

 でもなんか様子がおかしいです。

 盾のおっさんの姿は見えないけど、聖堂騎士団たちから変なオーラが出ているというか……。


『グルルゥ…………』

『ひひひひ……。ひひひひひぃぃぃぃ!』


「こわっ! 何アレ! ゾンビ兵みたいになってる!」


 光の加護を受けた聖堂騎士団らしからぬことになってて、つい驚きの声を上げちゃいました……。

 なにあれ。闇落ちルート……?


『コノ世界はジェイド様のモノ……。我らはジェイド様ノ血を受けシ新たな生命ナリ……』

『ジェイド様、万歳ぃぃぃ!! 絶対神、ジェイド・ユーフェリウス様万歳ィィィィ!!!』


「…………」


 なんか、ヤバい宗教に汚染されてるみたいです……。

 ジェイド教? なに絶対神って……。

 あいつらの神は精霊王じゃないんかい。


『クンクン……。おい、メスの匂いがするぞ。探せ……! 殺せ、犯せ、喰らえ……!』

『人間など、この世には必要ナイ……! これからの時代は新生物キメラが支配するゥゥゥ……!』


 俺の匂いを嗅ぎつけた聖堂騎士団(?)は戦艦ごと俺に向かって来ます。

 ……うん。なんか向かって来るっていうか、迫ってくるっていうか……。

 船から飛び降りて海の上を走ってる奴もいれば、背中から翼が生えて空を飛んでくるのもいるし……。

 そうかと思えば四人くらいが急に合体して、頭四つの手足が八本の化物になってその場をクルクル回ってる奴もいる……。


「どうしちゃったの聖堂騎士団!? めちゃ怖いんだけど!?」


 あれ夢に見るやつやろ!

 戦えるか! あんなキモい奴らと! ふざけんな!


『ギシャシャシャ!』

『女アァァァァァ! 喰わせろ! シャブらせろォォォォ!』


「だあああ! もう! キモい!!」


 焦った俺はつい黒剣を抜きます。

 そしてめいっぱい魔力を込めて、海に向かって、一閃。


 ―――ゴゴゴゴゴゴゴ。


「…………あ、やべ」


 海底から地鳴りが聞こえてきます。

 そして次の瞬間――。


 ――海が、二つに割れました。


『アガアアアアアアァァァァ!!』

『ギヤアアアアアァァァァァ!!!』


 大きく割れた海の底に引きずり込まれていく戦艦。

 飛び降りた聖堂騎士団らは翼を広げ空へと避難します。

 でも、今度は海底火山が噴火。

 割れ目から灼熱の炎が舞い上がり奴らを丸焦げにします。


「…………よし。逃げよう。俺は何もしていない。地殻変動が起きたとしても、それは俺のせいじゃない……」


 念仏のようにそう唱えた俺は、そそくさとその場を離れます。

 あいつらきっと耐久力とか高そうだから、丸焦げになってもすぐに再生するだろう。たぶん。


「……新生物キメラ化か。ジェイドの野郎、ここにきて何か・・しやがったな……」


 あの様子だともしかしたら、他の兵士達も皆、新生物キメラ化をしてるかもしれないです。

 それに『絶対神』っていうのも気になるし……。

 うーん、とりあえずユウリに魔法便送っておこうかな。

 『聖堂騎士団、ゾンビになってるよ! ジェイドの野郎、またなんか企んでるっぽいよ!』とか送っておけば、ユウリなら対抗策とか考えてくれるだろ。きっと。


 それにさすがの俺も、ちょっとだけ嫌な予感がしてきました。

 だってほら、鳥肌立ってるし。さっきも、くしゃみしたし。

 ユウリが言っていたとおり、調子に乗ってるとボコボコにされるパターンも何度も経験してますし。

 二度あることは三度ある。でも四度目はさすがに防がないとね。

 だってそうしないと馬鹿だと思われるから――。


「……もう誰にも馬鹿とは言わせないもん! ちゃんと相談するもん! みんなに!」



 海から飛び上がった俺は、超特急で仲間の待つ魔王城へと向かいました。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=51024636&si
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ