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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第一部 カズハ・アックスプラントの三度目の冒険
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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず攻略することでした。

 次の日の早朝。

 デモンズブリッジを渡った俺達はついに魔族の領土デモンズ・テリトリアに侵入した。

 今まで遭遇したモンスターもかなりの強さだったが、ここはもう奴らの本拠地だ。

 敵のあまりの硬さにタオの攻撃も効かなくなってきたし、役割分担を決めることにしました。 

 俺が前衛で敵を一手に引き受け、タオは幼女を守る係です。


「へくしっ!」

『ギャホオォォゥ!!』


 くしゃみと同時に大型鳥類モンスターを斬り裂く。

 昨夜はすっごく冷え込んで、毛布一枚でも足りませんでした……。 


「……どうしてそんな器用なことができるのですか」


「魔王城を目前にしても、まだこの余裕アルか……。まったく、カズハは底が見えないアルね……」


 幼女を背負ったタオがすぐ先の丘を見ながら溜息を吐いた。

 この薄暗い森の先に見える大きな城。

 あれが魔王の城――グランザイム城だ。


「あ、カズハ! 後ろからもモンスターが来ます!」


 幼女の叫びで後ろを振り向くと、巨大ムカデみたいなモンスターが迫ってきていました。

 

「何アルかあれはっ! き、気持ち悪いアルぅ!!」


 タオが慌てて俺の近くまで走り寄ってきました。

 それもそのはず。

 だってムカデの顔は人間の顔だし。

 何本もある足は人間の足みたいなんだもん。


「あー、あれはここで死んだ冒険者を喰って進化したモンスターだな。こういうのいっぱい出てくるんだよね、ここ」


「悠長なことを言っていないで、早く倒すアルよ!!」 


「はいはい」


 俺は火魔法を詠唱し、人差し指で標的に狙いを定めた。

 指を中心に魔法陣が出現し、指先に小さな火が灯る。


「《ファイアーボール》」


 ドゴン、という音と共に巨大な火の玉がモンスターを目掛けて発射された。


『ギギャアアアアアアアアアァァァ!!』


 瞬時に燃えさかり、断末魔の叫びを上げ消滅したモンスター。

 

「……」

「……」


 あれ? どうして黙っちゃったの二人とも。

 せっかく倒してやったのに……。


「な、何ですか今の魔法は……!」


「何って……。火魔法の初級魔法じゃんか。精霊はそんなことも知らんのか」


「初級魔法……? 今、大砲みたいな音がして巨大な火の玉が飛んでいったアルよ……!」


 あー、そういうことか。

 仕方ない。説明してやるか。


「あのな、二人とも。俺がめっちゃ強いことはもう分かってるだろ。つまり、その『強さ』は魔力にも比例しているわけじゃん? 俺が詠唱すれば初級魔法だって上級魔法レベルの強さになるに決まってるじゃん」


「そ、そんな当たり前みたいに言われても……」


「カズハはもう完全に化物レベルってことアルね……」


「誰が化物だ」


 こつんとタオの頭を小突いてやりました。

 いや、でも今更気付くとか遅すぎるだろ。

 ルルを捕えた時だってそうじゃん。

 普通の陰魔法の『緊縛』で精霊を捕まえるなんて無理だからね。

 俺の魔力だから成功したわけだし。


『グルルル……』

『キッキッ! キキキッ!!』


 三人で話していたら、また前方からモンスターがわらわらと登場。

 あー、もう面倒臭い。

 一気に倒してここを突っ切っちまうか。


「タオ。ルルをしっかりと頼むぞ」


「り、了解アル!」


 勇者の剣と魔剣を同時に構え、俺は地面を蹴った。

 まず一振り。一撃で殲滅。

 二振り。もう一匹を殲滅。


『ガオアアアア!!』


 二体を踏みつぶし登場したのは、顔が二つもある巨大モンスターだ。

 その巨漢以上に大きな棍棒を担いでいる。

 俺は一旦横に飛び、木々を蹴りつつ周囲を飛び回る。


『ガオ……?』


 俺の動きについて来れるはずもないモンスター。

 上空から急襲しつつ片手剣スキルを発動する。


「《スライドカッター》」


 垂直に落下した剣閃は奴の肩を大きく斬り裂き。

 直後、水平に軌道を変えそのまま両足を切断した。


『ガ……グガガ……!』


 まだ息のあるモンスターにとどめを刺し、更に先に待つ集団に突進する。


「タオ! また置いていかれてしまいますよ!」


「わ、分かっているアル……! でもカズハが速すぎて……!」


 幼女を背に一生懸命に付いてくるタオ。

 おんぶされてるのに文句を言うんじゃねぇよルル……。


 ていうか、もう魔王城に到着するんだけど本当に大丈夫なのだろうか。

 勢いで『タオに魔剣を盗んでもらおう!』とか決めちゃったんだけど、魔王とタオとではあまりにもレベル差があり過ぎる。

 高レベルの勇者御一行様でさえ、魔王と対峙するとなると無事では済まないわけだし。

 いくら俺がいるからって、死の危険に二人を晒すわけにもいかんし……。


 ……うん。

 なんか、今更感が半端ねぇ……。





「ここが……魔王城……」


 ようやく魔王城に到着した俺達は大きな門の前で一休み。

 あー、意外に疲れたなぁ。

 早く帰って温泉にでも入りたい。


「ゴクリ……。か、覚悟を決めて出発したアルのに……足が震えちゃっているアル……」


 幼女を地面に降ろしたタオは顔が引き攣っています。

 うん。やっぱ無理そうだね。

 ここまで来れただけでも合格としようか。


「ルル。タオ。ここから先は俺一人で向かうから、どこか物陰に隠れていてくれ」


 屈伸運動をしつつ、俺は屁タレている二人にそう告げた。

 あの森よりは魔王城の周囲のほうが遥かにモンスターが少ない。というかほとんど出現しない。

 まあなんていうか、ラスボス戦突入前のセーブポイントみたいな場所かな。

 セーブはできないけど……。


「一人で向かうって……魔剣はどうするアルか?」


「うん。分かんない」


「分かんない!?」


 俺の返答に驚き、声を上げたタオ。

 いや……だって分からないものは分からないんだもん。

 そのうち何か思い付くかもしれないし……。


「はぁ……。相変わらずいい加減ですね、カズハは……」


 幼女にまで深く溜息を吐かれました。

 何か段々、こうやって溜息を吐かれるのが気持ち良くなってきた気が……。

 いやいやいや、違うぞ。断じて違う。

 俺はそんな変態的趣向は持っていない。


「タオ。カズハがこう言っているのですから、私達はここで隠れていましょう」


「そうアルね。ここまで来るのにかなり体力を消耗したアルし……。一緒に付いていっても足手まといにしかならなそうアルし……」


「よし、決まりな。良い子に待っているんだぞ。お土産は期待するなよ」


 そう二人に言い残した俺は、単身魔王城へと侵入を開始する。





『ボワアアァァァ!!』

『グギャアアアァァァ!!』

『ゲヘエエェェェ!!』


 三体同時に襲い掛かってきた凶悪モンスターを瞬時に斬り裂く。

 中には今の俺の力でも一撃必殺とはいかない者も当然いるわけだが……。


『ギエエエエェェ!!!』


 鎧で身を包んだモンスターを鎧ごとぶった斬る。

 普通の剣だったら当然弾かれるし、付与魔法で強化しても刃こぼれもするし両断は無理だろう。

 しかし俺が持っているのは世界最強と言われる二本の剣だ。

 剣に秘めた力を十二分に発揮し、さらに俺個人の強さも上乗せされている。おもに筋力と魔力ね。

 こうなってくると鎧の意味がありません。

 勇者の剣も魔剣も刃こぼれしないし、まさしく俺のためにあるような剣ですなぁ。


「ええと、確かこの回廊を真っ直ぐに進んで……右に周って、ワープゾーンに入ってから、南に進んで……」


 まるで迷路のようになっている魔王城内部。

 しかし俺はすでに三度目なので、魔王のいる王座までの最短ルートを記憶しています。

 そして魔王城に侵入して数十分後――。


「よーし、着いた。さあ、どうすっかなぁ」


 俺の目の前には鈍い光を放つ黒銀の大扉があります。

 この先に魔王がいて、この扉を開いたらお決まりの台詞が始まるんですよね。

 『よくぞここまで辿り着いたな……!』みたいなアレね。

 強大な魔力を誇る魔王は、近接戦闘よりも魔法重視で遠距離攻撃を仕掛けてくるんだよね。

 だから魔剣を盗むにしても間合いを詰めないと駄目だし、それをタオに任せるっていうのは無茶な話だったね。

 ……うん。

 ホント、今更感が半端ないです……。


 あ、そうそう。良い機会だからついでに『魔法』について説明しちゃおうかな。

 本来魔法って、魔族にしか使えない物だったんだって。

 それを人間族のご先祖様が魔族を捕えて研究を重ねて……。

 ついに発見したのが『魔法遺伝子』だそうです。

 そしてその魔法遺伝子を当時の王族に移植したらしいです。

 まあ魔法が使えるようになるのって夢だからね。 

 そういう古代技術があるだけでも凄いと思うんだけど……。

 で、それから数百年経った今では魔法学校で学べば誰でも魔法が使えるようになりました。

 めでたし、めでたし。


 ていうかさ、そう考えたら人間も人間だよね。

 魔族を捕まえて研究してたってことは、かなりの数を研究のために殺しているんだろうし。

 これって人種差別にならないのかな。

 別に俺は博愛主義者じゃないけど、なんかこう、もやっとするんだよね。

 まあ、そんな話はどうでも良いんだけど……。


ギギギィ――。


 とりあえず大扉を開きました。

 そこに現れたのは、世界の敵。諸悪の根源である魔王――。 


『……待っていたぞ! この憎き人間の勇者共め……!』


「……」


 ……あれ?

 台詞がいつもと違う……?

 憎んでいるのはむしろ人間族のほうだと思うんだけど……。


『……? 人間の勇者が、一人……? これは一体どういうことだ……』


「……」


 徐々に魔障の霧が晴れ、姿を露わにする魔王。

 ……うん。

 あれ? 疲れてるのかな……。

 俺の目がなんかおかしい。


 目をこしこしして、もう一度魔王を見てみます。


「……」


 ……うん。変わんない。

 どうしよう。何が起きているのかさっぱり分かりません。

 それもそのはず。

 何故なら俺の目の前で偉そうに足を組んでいる魔王は――。


 ――やたらと胸を強調した服を着ているボインのねーちゃんだったからです。




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