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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第四部 カズハ・アックスプラントの世界戦争
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042 お金に困らない生活って最高だよね。

 フカフカのベッド。

 使い慣れたマクラ。

 やっぱ自宅はええなぁ……。


「では、私は庭木のお手入れとタオさんのお仕事のお手伝いに戻りますね」


「うん。ありがと、ミミリ。……そういえばタオの奴、俺が城を抜け出す前に話があるって言ってたっけ。親父さんがどうのこうのって……」


 マクラを抱きつつ部屋を出ようとするミミリに質問する。


「はい。タオのお父様の知人の職人さんが、魔王城に大浴場を作って下さるという話でして」


「マジで! それめっちゃうれしい!」


 ついついテンションが上がって叫んでしまいました。

 やっぱ城には大きなお風呂が必要だからね!


「今朝そのことが決まりまして、これから職人さんたちと打ち合わせがあるようです。なので今しばらくはこれまで通り、最果ての街の温泉宿をお借りするしかないですね」


「そっかぁ。あの職人さんたちならパパッと作ってくれそうだし、楽しみだなぁ。ミミリもあとで一緒に温泉宿に行くか? 俺、これから寝るから夜にでも」


「はい。ぜひご一緒させて下さい。今日も暑いですからね。タオさんもお誘いして、三人でお邪魔させてもらいましょう」


 そう答えたミミリは深く頭を下げて部屋を後にした。

 俺はそれを見送り、再びベッドにごろんする。


「何かまだ変な感じがするなぁ。過去の世界で何週間も過ごしたけど、こっちの世界は俺が城を抜け出してから数時間くらいしか経過していないんだもんなぁ」


 ということは、ユウリ達が各国に渡ってから今日で五日目ってことか。

 ゼギウス爺さんの話だと、ゲヒルロハネスのほうは何とか大丈夫そうだけど……。

 ラクシャディアとユーフラテスは駄目だろうなぁ。

 あとはアルゼイン達が向かったエルフィンランドがどう転ぶか――。


「……あ……眠くなってきた」


 ウトウトとし始めた俺は静かに目を閉じた。

 まあ、どうにかなるだろ。

 いつもの通り、適当に頑張れば。





「カズハー。起きるアルよー」


「ん……。あ、おはよう。お母さん」


「誰がお母さんアルか!」


 いきなり怒鳴られオフトゥンを剥ぎ取られました……。

 もう完全にお母さんじゃん、タオ……。


「もう夕方アルよ。ご飯作ったから早く食べるアル。夜には温泉宿に行くアルよね?」


「あ、うん。ミミリも仕事終わりそうかな」


「庭木の手入れはもう終わってたアルね。彼女、すごく動いてくれるから助かるアルよ。他の皆も見習って欲しいアル」


 ため息交じりにそう答えたタオ。

 確かに俺の国の仲間達は仕事をサボる奴らばかりで困る。

 まったく、今までどういう教育を受けてきたのか。


「ほら、さっさと起きて。そのパジャマも脱ぐアル。……うわ、汗だくじゃないアルか。すぐに洗濯するアル」


「あ、ちょ! くすぐったい! やめろって! 自分で脱ぐからー!」


 タオにパジャマを剥ぎ取られ、強制的に下着姿にされました……。


「あの黒い服も洗っておいたから、とりあえずこれを着るアル」


「これは……何でしょうか」


 タオに渡された一枚の和服。

 いや、これは和服じゃなくて、チャイナ服……?


「下着も脱ぐアルよ。一日外に出て、よくそのままの下着で寝れるアルね。信じられないアル」


「だからー! 脱がすなー!」


 強制的に下着まで剥ぎ取られました……。

 お母さんには敵いません……。


「……あ、まだ新しい下着が渇いていないアルね。まあ、いいアル。そのままその服を着るアルよ」


「ノー下着か! 俺ノー下着で飯を食うのか!」


「別に気にしないでいいアルよ。職人さん達も街に帰ったアルし、ゼギウスさんは工房に籠ってずっと鍛冶をしているから、リビングルームには女しかいないアル。なんか『すごい武器が出来上がる』とかなんとか言ってたアルけど」


 すごい武器……?

 あー、きっとあれのことだ。

 ラスボス魔王が使ってた馬鹿でかい剣。

 そろそろ仕上がるって言ってたからな。


「ま、それならいいか。……うんしょ、うんしょ。あれ? なんかちょと……ブカブカ?」


「それは私が太っているという意味アルか!」


「言ってない、言ってない! ていうかお前のお古かよこれ! どんだけ金が無いんだよこの国は! …………あ」


 『金』という言葉で思い出した。

 俺、12億G持って帰ってきたんだった。

 過去の世界から。


「タオさん。貴女はお金って好きですか?」


「……いきなり何を言うアルか」


 怪訝な表情のタオの目の前にウインドウを開いて見せる。

 そして所持金の欄を見て、驚愕の表情に変わるタオ。


「いち、じゅう、ひゃく……せん、まん、じゅうまん、ひゃくまん……せんまん、いちおく……じゅう……おく……?」


「うん。12億8000万G。過去の世界から盗んできた。ごめん、言うの忘れてた」


 軽く説明し、俺は仕方なくちょっと緩めのチャイナ服を着た。

 ……なんか股がスースーする。


「は……はは……。これは……夢、アルか?」


「おーい。大丈夫かー。目が『G』になってるぞー」


 お金に目が眩んでいるタオさんをそのままにし、俺はリビングへと向かう。

 ちょっとショックを与えすぎちゃったみたい。

 そっとしておこう。


 長い廊下を進み、リビングルームへの扉を開く。

 まだまだ閑散としている魔王城だが、これだけ広いのだから金さえあれば色々と施設を作れるだろう。

 貧乏生活とはもうおさらばだ。

 あとはエリーヌの呪いを解いて、世界戦争を回避できれば夢の隠居生活が待っている……!


「あ、おはようございます、カズハ様。ふふ、お似合いですよ。そのチャイナ服」


「おはよう、ミミリ。でもさぁ、なんか落ち着かなくて」


 ちょうど食事の用意をしていたミミリが俺に気付き声を掛けてくる。

 俺はそのまま上座に座り、置いてあった水を一気に飲み干した。


「髪を結わきましょうか。カズハ様、随分とお髪が長くなりましたから」


 俺の背後に立ち、自然な手つきで俺の髪を結わき始めたミミリ。

 彼女の優しい手触りが何とも心地良い。


「私の髪留めで申し訳ないのですけれど。……はい、出来ましたよ」


「うん。何か楽になった感じがする。ありがと、ミミリ」


 どういう風に結わいてくれたのか見えないけど、たぶんお団子頭みたいにしてくれたんだろう。

 そろそろ髪を切らないと鬱陶しいかもしれないな。


「じゃあ、いっただっきまーす」


「ふふ、お召し上がれ」


 用意された夕食を食べつつ、俺は辺りにキョロキョロと視線を向ける。


「メビウスは? もう飯食い終わったのか?」


「メビウスさんはゼギウスさんとご一緒ですね。二人ともまだ食事はとられないみたいです」


 ということは工房にいるのか。

 まあ歳取ると腹減らないっていうからな。

 爺さん婆さんはマイペースで好きに過ごしてもらえばいいや。


「ミミリも食べようぜ。タオは何かショックな出来事があったみたいで、まだ戻って来ないだろうから」


「?」


 首を傾げたミミリだったが、特に何も聞いてこなかった。

 そろそろ彼女も慣れてきたんだろうな。

 俺達の雰囲気というか、ユルさみたいなものに。


 軽く食事を終え、食後のティータイムに入ります。

 今日は一日暑かったから、アイスティーを用意してくれたミミリ。

 もうメイドとして完璧に仕事をこなしてくれてます。

 うさ耳メイド最高。


「あー、美味しかったー。じゃあ、そろそろ行くか。温泉宿に」


「はい。お皿を下げたら私もすぐにお供しますので、カズハ様は自室でご準備なさっていて下さい」


「うん。タオも現実世界に呼び戻さないといけないからな。まだフリーズしてるのかな、あいつ……」


 後片付けはミミリに任せ、俺は再び自室へと戻る。

 今夜は温泉宿で風呂に入って、そのまま宿に泊まらせてもらおう。


 ちょっとした旅館気分も楽しめるし!


















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