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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第三部 カズハ・アックスプラントの誤算
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035 新たな仲間

「捕らえろ! 絶対に逃がすなぁ!!」


 後方からワラワラと蟻の軍団のように這い出てくる警備兵達。

 目的を達成した俺達は一目散に屋敷から逃げている最中です。


「う……うう……! 本当に……本当に、私……!」


 俺の首にしがみつきながら涙を流すミミリ。

 もう俺は『泣くな』とは言わない。


「カズハ様ぁ! もう解決されたのですね! というか一言、私めにも声を掛けてくださっても良いのではないかと……!」


 警備兵らよりもちょっとだけ前方からグラハムが俺達を追ってくる。


「あ、ごめん。お前のこと、すっかり忘れてた」


「やっぱり!? でもそんなカズハ様も素敵でございまするうううぅおりゃああああ!!」


 振り向きざまに竜槍を叩きつけるグラハム。


「うぎゃああああ!」

「うわあああああ!」


 大きく穴の開いた箇所に次々と落ちていく警備兵達。


「かっくいー。グーラハムー」


「褒められたっ! カズハ様に! 褒められたっ!!」


 もう、もはやグラハムのキャラが分かんない。

 なんか鼻の下を伸ばしながら腰に手を当ててスキップとかしてるし。

 キモいを通り越して、ツラい――。


「どういたしましょうカズハ様! このまま街の中央に戻りますと、無関係な市民を巻き添えにする可能性が御座いますぞ!」


 ようやく俺に追いついたグラハム。

 確かにこいつの言うとおりだ。

 うーん。

 どうしよ。


「じゃあ一旦二手に分かれよう。俺はこのままミミリを抱えて街の西門に向かう。お前はこのまま宿泊街に向かってリリィを迎えにいってくれ」


「ということは、この街を出てすぐに首都に向かうということですな! 承知いたしましたぁ!」


 俺の言わんとしていることをすぐに理解したグラハム。

 本当は今日一日くらいはゆっくり休みたかったところだけど。

 バニーちゃんと出会っちゃったもんだから、これも運命だと諦めよう。


「二手に分かれたぞ! どちらも逃がすな!」


「うっさいなぁ、もう。《緊縛》、《緊縛》、《緊縛》、《緊縛》」


「うぎゃあああ!」

「ええええええ!?」

「いだだだだだ!!」

「アッーーーーー!!!」


 ウインドウから陰魔法を選択し、『緊縛』を連打する。

 次々と全身を拘束されていく警備兵達。


「で、《大鎖錠》と」


 同じ陰魔法のウインドウ内にある『鎖錠』を長押しし、隠しウインドウを出現させる。

 そして『大鎖錠』を選択し発動。

 一本の長い鎖が警備兵らを拘束している魔法の首輪や腕輪と連結していく。


「うーん。じゃあ、《蜘糸》とか使ってみっかぁ」


 同じく陰魔法の『蜘糸』をノーチャージで発動。

 直後、上空に異空間が出現。

 そこから這うように出てきたのは――。


「ひ、ひいいいぃぃ! 大蜘蛛の化物だあああぁぁ!!」


 陰魔法により異界から出現した大蜘蛛が、まるで蜘蛛の糸を手繰るように鎖錠を引き寄せていく。

 当然、それらに繫がれている数名の警備兵らも一緒に――。

 

 必死に抵抗する警備兵。 

 彼らを救出しようと躍起になる後続の集団。


「カズハ様……。格好いいです……ぽっ」


 俺の首に手を回したまま、ミミリがそう呟いた。

 あれ、これってアレ?

 お持ち帰りオッケーなパターン?

 どうしよう。

 バニーちゃん、落としちゃったっぽい。


 でも、俺って今、女だよね。

 ミミリはそういうの気にしない系なのかな。

 そうなるとアレか。

 アレがあーなって、これがアーなっちゃうってことか。

 うん。

 どうしよう。


 ワクワクが止まらない――。





 西門を抜け、無事に港町シグマリオンを脱出した俺とミミリ。

 たぶんもうすぐグラハムがリリィを連れて――。


「カズハ様ああああ! お待たせ致しましたあああああああ!」


 大きく手を振ってこちらに駆け寄ってくるグラハム。

 しかし、俺は青ざめる。

 もちろんグラハムを見て青ざめたわけではない。

 その横にいるリリィという名の女。

 ……いや、リリィだったなにか・・・――。


「カ~~~ズ~~~ハ~~~~~!!!」


 それは奇しくも俺の親友とも言うべき魔道師で。

 3度にわたる異世界での生活で、常に俺の傍にいてくれた大事な仲間――。

 ――リリィ・ゼアルロッド。

 ……だった、なにか。


「貴女はいったい、なにをしてんのよこの馬鹿女王がああああああああ!!!」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」


 もはや般若以上の存在に成り果てたリリィがものすごい形相で俺に近づいてくる。

 もう怖くて怖くて半分ちびっちゃった俺はミミリをその場に下ろし、とにかく土下座して謝りまくった。

 だってそうしないと、頭から食われちゃいそうなくらい牙を剥き出しにしていたから――。


「どうしていつもいつも問題を起こすのよ! この子は誰!? どうして港町に着いた早々、街中の警備兵に追われてるの!? 貴女馬鹿なの!? 死ぬの!?」


「あ、あの……私は……」


「貴女に聞いてないの! この馬鹿に聞いているの!!!」


「す、すいません……」


 リリィに怒鳴られ、うさ耳が垂れてしまったミミリ。

 とんだとばっちりを喰らって、可哀相だと思う。

 ホントごめんね。


「おい、リリィ。そんなにカズハ様を怒鳴らなくても――」


「貴方も同罪でしょうが! どうしてカズハを止めなかったのよ! がるるるるぅ!!」


「……ごめんなさい」


 今度はグラハムに噛みついたリリィ。

 どうしてこいつはこんなに怒りっぽいのか。

 あれか。

 DVってやつか。


「答えなさいカズハ! このままだと本当にユーフラテスと戦争になるわよ! それが分からないとは言わせないわ!」


 俺は足を解き、立ち上がろうとする。

 が、足が痺れて上手く立てないので、正座のままリリィを見上げた。


「紹介しよう。こちら、ラピッド族のミミリさん。お前も知ってるだろ。宿の受付のねーちゃんだから」


「そんなことはどうでもいいわ! 質問に答えなさい!」


 これは本気で怒っている顔だ。

 もう冗談は通用しない。


「彼女は奴隷だったんだ」


「だから! 今はそんなこと……え?」


 少しだけ表情を変えたリリィ。

 俺はゆっくりと立ち上がり、膝についた埃を払う。


「奴隷商人ガレイド・ブラスト。奴がこの港町にいる。でもこの国は奴隷制度が禁止されている。ユーフラテス公国のエルザイム主教によって」


「まさか……。カズハはエルザイム主教が・・・・・・・・奴隷商人と・・・・・繋がっている・・・・・・と……?」


 リリィの言葉に大きく肩を揺らしたのはミミリだ。

 やはりビンゴだ。

 ミミリはそのことを知っていたのだ。


「話してくれるか、ミミリ」


 俺の言葉に動揺の色を隠せない様子のミミリ。

 奴隷契約を破棄してもらったまではいいが、主教の秘密を漏らすということは、自身の命を賭けることにも等しいのだろう。

 今日出会ったばかりの俺を信じるのか。

 それとも、自由になった身で新たな人生を迎えるのか――。


 俺はどちらでも構わない。

 許せないと思ったから助けただけだから。


 グラハムとリリィの視線がミミリに注がれる。

 俺は手を頭の後ろで組み、夜空を見上げた。


「……カズハ様」


「うん? なに?」


 ミミリの言葉に振り返ることなくそう答える。

 そして、静寂――。


「あー、星が綺麗だなぁ。ていうかこの世界にも星なんてあるんだなぁ」


 誰に言うでもなく、そう呟く。

 あんまり夜空とか眺めたことがないからちょっと新鮮。


「不思議な方なのですね、戦乙女カズハ・アックスプラント様は……」


 ふっと表情を崩したミミリ。

 そしてすぐさま意を決した表情に変化する。


「もう二度は言いません。私はカズハ様を『信じる』と決めたんです。今まで一度だって、私達『奴隷』に救いの手を差し伸べようとした人はいませんでした」


 ぽつりぽつりと話し始めたミミリ。

 そして彼女の話を真剣に聞いているグラハムとリリィ。

 何だかんだ言って、リリィだって奴隷制度とか許せない性格だからな。

 そこに主教が一枚噛んでたりしたら、それこそ般若となって喚き散らすだろうし。


 ミミリの話を要約するとこうだ。

 エルザイム主教と奴隷商人ガレイドは闇ブローカーを通じて取引をしていたということ。

 毎年数十人規模の奴隷をガレイドから賄賂として受け取り、奴の奴隷商売を黙認していたこと。

 奴隷契約の主をエルザイム主教とすることで、その奴隷があたかも敬虔なメリサ教の信者であるかのように見せかけていたことなどだ。


 まさか主教が奴隷契約の魔術書を所持しているなど、誰も思わないわな。

 まあキナ臭いおっさんだったから、こういうことをしていても俺は驚かないけど。


「闇ブローカーって……この前襲いかかってきた奴らのこと……?」


「あの手配書にも載っている瑠燕リュウヤンですな! あやつめ……! 奴隷商人とも繋がっていたのか……!」


 次々と浮かび上がる人物。

 そして、俺はもう1つの疑問を持っている。


「たぶんあのラクシャディアにいる宰相のおっさんも一枚噛んでんじゃないかな」


「なんですとぉ!」「なんですって!?」


 ……2人して俺の目の前で叫んだから、俺の顔に思いっきり唾が……。

 ちょっとだけ口に入っちゃったかもしんない。


「だってよ、考えてもみろよ。なんでゲヒルロハネスの港町で闇ブローカーとラクシャディア兵が仲良く俺達を待ち伏せしてんだよ。ありえねぇだろ、普通」


「……確かにそうね。あのときは慌てていたから、そんなこと考えもしなかったけど」


「け、けしからん! 真にけしからん! ミミリ殿のようなきゃわゆいバニーちゃんを奴隷にしてあんなことやこんなことをしておったとは……! あの宰相のじじいめ……!!」


 何故か悔しそうな顔をしながら歯軋りをしているグラハム。

 女性陣2名からは非難の眼差しが注がれている。


「まあ、これで色々とキナ臭い連中がひとつに繋がったわけだけど、どうする? リリィ?」


「どうするって……何が?」


「だってもう俺、騒ぎを起こしちゃったし。さっきお前めっちゃ怒ってたし」


「う……。そ、それは……そうだけど……。どうする、とか言われても」


 俺の質問に困惑するリリィ。

 じゃあやっぱ、俺が最初から考えていた案でいいってことじゃん。


「俺は主教のじいさんから《気の魔術禁書》をかっぱらう。ついでにぶっ飛ばすかもしんない。異論ある奴はいるか」


「だから! ぶっ飛ばすのはやめなさいよ! 戦争になるって言ってんでしょうが!」


 あ、やばい。

 またリリィに火がつきそう。


「……でも、彼女の話が本当なら、私も主教を許せない」


「リリィさん……」


「勘違いしないで。あくまで『許せない』ってだけよ。感情的になって戦争を起こしちゃったら取り返しがつかなくなるわ。だから――」


 一旦ここで区切ったリリィ。

 でも、なんとなく彼女が何を言うのか想像できる。


「――だから、こっそりとぶっ飛ばす。絶対にばれない方法で」


「結局ぶっ飛ばすのか! そんなことが出来るのかリリィ!」


 グラハムの言葉にニヤリと笑ったリリィ。


「出来るわ。ぶっ飛ばした後に、私が魔法で記憶を消去すればいい。私を誰だと思っているのかしら?」


「「大魔道師リリィ・ゼアルロッドたん!!」」


 俺とグラハムが同時に叫ぶ。

 その様子を見て目を丸くしているミミリ。


「……ぷ、ぷぷ……! ゼアル……ロッドたん……!」


 が、すぐに我慢できなくなったようだ。

 おなかを抱えて笑い出したミミリ。


「……はぁ。まあいいわ。事情はよく分かった。これからは仲間ってことでいいのよね、ミミリちゃん」


 笑い転げるミミリの前に手を差し伸べたリリィ。

 それを見て目を見開いたミミリ。


「は、はい……! よろしくお願い致します……!」


 その手をぎゅっと掴んだミミリ。


「よーし! 話がまとまったところで、さっそく向かうかぁ!」


 俺は遥か西の方角を指差す。

 星明りに照らされた先に、微かに見える都市――。



「――首都メリサムに!!」

















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