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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第三部 カズハ・アックスプラントの誤算
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013 魔剣×魔剣

「《焔鋏》!」

「《朧鎌》!」


 俺を挟み込む様に左右から《陽魔法》が飛んで来る。

 右から飛んできた炎を纏った大鋏を避け、左から飛んできた目視しづらい大鎌を避ける。


「ちっ、ちょこまかと……! 《迅雷》!」


 舞台の上から瑠燕が陽魔法を唱える。

 神速で俺目掛けて飛んで来る雷を纏ったナイフ。

 紙一重で避ける俺。


(くそ、こいつらみんな陽魔法が得意属性かよ……!)


 次々と放たれる陽魔法。

 あまり時間を掛け過ぎると増援が来ちまうだろうし……。

 まずはあの檻を破壊しなくては……。


「おらあああ!」


 ガチィン! という大きな音が場内に木霊する。

 剛炎剣の渾身の一撃。

 しかしビクともしない檻。


「ふはは! その檻はゼノライト鉱石で作られた世界で最も頑丈な檻なのだ! 破壊する事など不可能ッ!」


 そう叫んだ瑠燕は手下2名と共に同時攻撃を繰り出す。

 特徴的な動き。

 あれだ。タオと似た感じの東洋風の戦闘スタイルだ。


「今だ! 《遁甲》!」


 瑠燕の叫びと同時に舞台下に待機していた3名の手下共が同時に陽魔法を発動する。

 異空間から現れた、俺を取り囲む巨大な門の数々。

 闘技大会の時にエアリーが放った消滅系の陽魔法だ。


「やっかいな魔法ばかり……!」


 巨大な門が俺を押しつぶす直前に上空へと離脱。

 そのまま剛炎剣を構え火炎放射を発動。


「ぎゃあああ!」

「ひいいいぃぃ!」


 炎に焼かれ慌てふためく黒服達。


「怯むな! 相手はたった一人だ!」


 瑠燕の号令によりすぐさま冷静さを取り戻す黒服達。

 流石は《和漢ホウハン》を支配している闇ブローカー達だな。

 一筋縄では行かないか……。

 ならば方法は一つだけ――。


 俺は後方へと剛炎剣の切っ先を向け火炎放射を発動。

 空中で急加速した俺の向かう先は――。


「ひっ!!」


「あ、ごめん。ちょこっと借りるよ」


 舞台袖に逃げようとしていた女の黒服。

 彼女が運んでいた台座から二本の最狂の剣を抜き取る。


「バカめ! 常人が魔剣を装備することなど出来るわけがなかろう! しかも二本だと? 魔力に侵されて死ぬだけだ!」


 勝利を確信したかのようにあざ笑う瑠燕。

 手下の黒服達にも安堵の表情が窺える。


「う……」


 確かに片方の魔剣からは急激に魔力を吸い取られて行く。

 あれか。こっちがセレン専用の魔剣か。

 本来ならばセレン以外が装備することの出来ない『呪われた魔剣』。

 アルゼインに託した方の魔剣は、既に呪いが解除されているから普通に装備できるんだが……。

 ていうか元々俺の剣だし。


「でもまあ、少しの時間くらいなら……」


 俺の魔力は最高値まであるのだし、ある程度吸われた所で枯渇する事は無い。

 レベル99の経験値99999999を舐めんじゃねぇ。


「《ツーエッジソード》」


 二刀流スキルにより攻撃力を2倍に上昇させる。

 多分、これで行ける。


「《ダブルエッジ》!!」


 地面を蹴り、そのままの速度で二本の魔剣を檻に向け同時に振り下ろす。

 バギンッ! という音と共に崩れ去る檻。


「カズハ……」

「相変わらず無茶苦茶だねぇ、あんた……」


 セレンとアルゼインが溜息を吐きながら同時にそう呟く。

 何だよその、化物を見る様な目は……。

 お前らも十分化物じみてるんだから、人の事言えないんだからな!


「ゼノライト鉱石の檻を破壊しただと……! それにあの二刀流捌き……まさか!」


「お頭! あの女……見たことある顔だと思ったら……! 《戦乙女》ですぜ!!」


 会場にどよめきが走る。

 やばい。

 バレちゃったっぽい。


「戦乙女カズハ・アックスプラント……! 何故一国の女王がこんな場所に……!」


 あかん。

 これマジで戦争になっちゃうかも。

 ……いや、違うか。

 こいつらは闇ブローカーだ。

 ラクシャディア共和国の宰相も、こいつらには手を焼いていた筈。

 ならばちょっくらここで借りを返しておくのも良いのかもしれない。

 デボルグには悪いが、どちらにせよ問題を起こしてしまったからどうしようも無いんだし。


「動けるかー。セレン、アルゼイン」


 そのまま彼女達に繋がれた鎖を断ち切る俺。


「無論だ」

「当たり前だろう? いい様にされてウズウズしてた所だよ」


 彼女達の言葉に笑顔で返す俺。

 そしてそれぞれに魔剣を手渡し、黒服達に振り返る。


「ひっ!」


 俺の表情を見た黒服の一人が悲鳴を上げる。

 無理も無い。

 何故なら俺は、笑っていたからだ。

 どんな人間だろうと心底震えが止まらないくらいの悪い笑顔で――。


 そして俺はおもむろに口を開く。



「さあ、お仕置きの時間だ――」





「あれ? 帰って来たアルよ……って、セレン! アルゼイン!」


 宿に戻るとタオが驚いた表情で駆け寄って来る。


「……どういう事ですかカズハ? それにあちらの方が騒がしいのですが……まさか……」


 後ろから顔を出したルルの指差す方角。

 小高い丘に立てられた屋敷からは火の手が上がっている。


「うん」


 俺はニコリと笑顔でピースする。

 それと同時にタオとルルに思いっきり頭を叩かれる。


「アホアルかああああああああああ!」「馬鹿ですか貴女は!」


 …………うん。

 痛い……。


「あの屋敷は『瑠一家』の屋敷アルよ! 《和漢ホウハン》を支配している闇ブローカーのドンアルよ! どうしてその屋敷が燃えているアルかあああああ!」


「うん」


「ラクシャディア共和国も手が出せない、闇の世界の超大物アルよ!? だからこそここ、《和漢ホウハン》がずっと無法地帯になっていたアルよ!!」


「うん」


「うん、じゃ無いアルよおおおおお! 頭おかしいアルか! ……まさか瑠燕リュウヤンには手を出してはいないアルよね……!」


「血祭りにあげてきた」


 俺の言葉に頭を抱えて蹲るタオ。

 ルルはもう完全に呆れ顔になっている。


「……しかし、セレン達が戻って来たという事は……」


「あ……。そういう事アルか……」


 セレンとアルゼインのボロボロの姿を見て納得する二人。

 ゆっくりと休ませてやりたいが、今はここから逃げる事が先決だ。


「悪ぃな二人とも。とりあえずは《和漢ホウハン》から離れよう」


 俺の提案に無言で頷くセレンとアルゼイン。

 余程疲れが溜まっているのだろう。

 もしかしたら随分と長い間、眠る事も許されなかったのかも知れない。


「でも、取引はどうなったアルか? 魔術禁書は?」


 逃げ支度を始めながらもタオが聞いて来る。


「あー、まあ説明すると長くなるから後で話すけどよ。《氷の魔術禁書》は渡さなくて済ん……だ……」


「? どうしたのですか?」


 俺の表情の変化に気付くルル。


「……無い」


「無い? 何が無いと言うのだ?」


 セレンが後に続く。

 ……無い。

 俺のアイテム袋にしまってあった、《氷の魔術禁書》が――。


ピー、ピー。


「おや? この音は……」


 アルゼインが何かに気付く。

 これは、《魔法便》の音?

 間を置かずに俺の手元に現れる一通の光の封書。

 まさか――。


「あ、開けるアルよカズハ!」


「あ、ああ……」


 タオに促され開封する俺。

 そこにはこう記載されていた。



====================

悪ぃなカズハ

《氷の魔術禁書》、確かに受け取ったぜ


次の指令だ

《闇の魔術禁書》を用意しろ

仲間との交換場所は《ゲヒルロハネス連邦国》の魔法都市アークランドだ

そこでお前の旧友2名が待っている


騙して悪かったな


デボルグ・ハザード

====================



「・・・」


 俺は絶句する。


「デボルグって……。闘技大会でカズハと戦ったっていう、勇者候補の一人アルか……?」


「勇者候補が今回の誘拐事件の首謀者……? 何故そんな事を……」


 タオとルルが書面を覗き込みながらもそう呟く。

 どういう事だ?

 俺を騙していた?

 そんな素振りは全く感じなかった。

 あれが演技?

 とてもそうは思えない。


「一体何なんだよ……。俺があそこで大暴れするのも、計算の内だったって事か? その隙に俺から《氷の魔術禁書》を奪った? 何でそんなに回りくどい真似を……」


 俺から禁書を奪うチャンスは幾らでもあった筈だ。

 ここまで大掛かりな仕掛けは必要ない。

 確かデボルグは別件でこの街に来ていたのでは無かったか。

 あの時、屋敷の地下で誰かに指示されたのか?

 数名の黒服らと会話していた様に記憶しているんだが――。


「……」


「カズハ! 考え込むのは後アルよ! とにかく逃げるアル! そのドレス姿も目立つからさっさと着替えるアルよ!」


「あ、ちょ! 無理に脱がすんじゃねぇよ! めっちゃきつく縛ってあるんだから!」


「あ! 何アルかこれ! パッド? どうりでやたらと胸が膨らんでいると思ったアル! 発情期アルか?」


「お前と一緒にすんなよ! あ、ちょ、やめろ! だからキツイんだって! 無理にパッドとか取ろうとする――ちょ、くすぐったい! やめて! 助けてセレン! アルゼイン!」


 俺の叫びに溜息を吐く他三名。

 そしてあろう事か俺とタオを無視し先に行ってしまった。

 ちょっと!

 助けろよマジで!


「ほれほれ~! 私のテクはどうアルか~!」


「お前! 遊んでんだろ! さっさと逃げないとヤバイって今自分で言って――そこ駄目!! やめろアホ!! ぐ、ちょ、マジで……! 殴るぞお前!」


 クネクネと指を動かすタオ。

 脱がすならさっさと脱がして!

 背中の紐とか手届かないんだから!

 じらさないで!


「最近、ホント女らしくなって……! 恋する乙女は違うアルねぇ……!」


 ルル達を追いながらも徐々に脱がされて行く俺。

 変な走り方にはなっているがそれも仕方が無い。

 ていうか俺の服、銭湯の脱衣所の籠に置いたままなんですけど……。

 このドレス脱いだら、何を着たら良いの……?


「あ、ちょっと服取りに行ってもいいですか」


「駄目に決まっているアルよ! このまま街の外まで逃げるアル!」


「え?」


 ていう事は下着姿のまま街を出ろって事?

 ある意味そっちの方が目立ってしまう様な気が……。

 ていうか目立つだろ!

 なんで半裸で逃げなきゃいけないんだよ!

 おかしいだろ!


「お願い! 何か服ちょうだい! 恥ずかしい!」


「我侭言ってないでさっさと脱ぐアル! 走るアル!」


「えー」


 俺の提案はチャイナ娘に却下されました。

 いいや。

 なんか布とか巻いておけば大丈夫だろ。

 この国、暑いから風邪引かないだろうし。


 

 ――そうして俺達は《和漢ホウハン》を脱出する事に。


















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