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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第三部 カズハ・アックスプラントの誤算
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011 再会

《ラクシャディア共和国/和漢ホウハン


 あれから丸半日。

 延々と続く荒原を走り続けた俺達。

 というか俺。


「マジ無理……。もう足がパンパンだよ! 温泉入りたいー! フットマッサージとかしたいー!」


 宿のベッドでじたばたする俺。

 ていうかフルマラソンかよ!

 なんか乗り物とか無いのかよ! この世界は!


「でも本当に良いのですか? 宿代が無料なんて……」


「あー、うん。大丈夫アルよ。ここの女将さんは昔からの知り合いアルから」


「とりあえずお腹空いたー! あいつら助けんのその後でもいいだろー! もう足が痛いー!」


 さっきから一人騒いでいる俺。

 でも完全にスルーされている……。

 ひどくね?

 お前ら担いで半日も走ったのに……。

 ていうか何度も言うけど、俺……王様ね。

 うん。


「もう時間も遅いアルし、夕飯は軽くでいいアルよね? ルルちゃん?」


「はい。私は構いません」


「がっつり喰いたいー! 美味しい物食べたいー! 俺腹ペコー!」


「……」「……」


 ……凄く、凄く冷たい目で睨まれました。

 少しくらい我侭言ったっていいだろ!

 俺マジ疲れたんだから!


「……まったく。じゃあ、カズハの分は別に作るアルから、ルルちゃんと一緒に風呂でも入って来るといいアルよ」


「お! 流石はタオ料理長! んじゃ早速――」


「私は大丈夫です。タオのお手伝いをしますから、カズハは一人で入って来てください」


「…………うん」


 やんわりと断られる俺。

 そんなに俺と二人は嫌か!

 いいもん!

 俺、一人で入って来るもん!

 ぷんぷん、だ!!


 ――そして一人寂しく俺は風呂に入る事に。





和漢ホウハン/大浴場》


「いやマジ天国……」


 誰もいない大浴場。

 これぞ貸切状態。


「嗚呼……。疲れが取れますなぁ……」


 満天の星空を眺めながらの露天風呂。

 そして風呂上りにはタオの料理が待っている。

 ついでに足でもマッサージして貰おうかな。

 ルルに。

 …………無理だね。


「あいつら無事かなぁ……。ちゃんと飯とか喰ってんのかなぁ……」


 湯船に浮かびながらも仲間の事を考える。

 レイさん達を全滅に追い込み。

 そして今も捕虜として捕らえている人物――。

 世界一強い筈の傭兵団の主要メンバーを全員捕らえるなんて事が、本当に可能なのだろうか?

 何かの束縛系の魔法で拘束でもしているのか?

 それとも――。


「俺でも全員いっぺんに捕まえるとかは無理なんじゃないかな……」


 となると複数での犯行か?

 それとも俺以上に強い奴がこの『3周目の異世界』に存在するのか――。

 うーん。

 イメージ湧かないな、それ……。


 精霊王は復活した訳では無い。

 ルルは自信を持ってそう答えている。

 となると心当たりがあるやつ等は――。


むにゅ――。


「ひっ!?」


 いきなり背後から胸を掴まれ悲鳴を上げる俺。

 誰だ――?


「よう。相変わらずやらけーな。他の部分は硬いくせに」


「な、ななな、なななな……!!」


 背後から聞こえた声に驚愕する俺。

 この声は――。


「デボ――」

「おっと。声は上げないでくれるか、カズハ」


 そのまま口を手で押さえられる。

 でももう片方の手はそのままの形に。


「(おい! デボルグ! 何でお前がこんな所にいるんだよ!)」


 口を押さえられながらも声の主――デボルグ・ハザードにそう問い詰める俺。

 ていうかどこ触ってんだよ!

 ここ風呂場!

 お前は相変わらずの変質者か!


「(まあまあ、そうカリカリなさんなって。せっかくの綺麗な顔が台無しだぜ)」


「(うるせぇ! 手ぇ離せよ! くすぐってぇんだよ!)」


「(ちぇ、つまんねぇ奴……)」


 大人しく俺を解放するデボルグ。

 というかここにこいつがいるという事は――。


「(ああ、ユウリ達はいねぇぞ。俺は別件で個別に動いているからな)」


「(別件?)」


 俺の心を読んだのか。

 というか少しニヤニヤしながらユウリの名を出したのが気になる……。

 なんだろう、このソワソワした感じ。

 凄く嫌だ……。


「(場所を変えようぜ。流石にここじゃまずい)」


「(なら《気魔法》を使って風呂場に瞬間移動してくんじゃねぇよ! 出てくるまで外で待ってろよ!)」


「(はあ? お前は馬鹿か? そしたらお前の裸が見れないし触れねぇじゃねえか)」


「馬鹿はお前だあああああああああああああああ!!」


 つい顔を真っ赤にして大声を出してしまう俺。

 何事かと駆けつけて来る足音が聞こえて来る。


「ちっ、阿呆め」


「ちょ、おい!」


 そのまままた俺に抱きついたデボルグは詠唱を始める。

 まさか――。


「――――」


 一瞬の眩暈。

 そして目を開いた瞬間――。


「あぶねぇあぶねぇ……。もう少しで見付かっちまう所だったぜ……」


「へくしっ! ……って外じゃねぇかよ! お前、俺ごと瞬間移動しやがったな! ……へくしっ!」


 露天風呂から少し離れた、武器倉庫の様な場所に瞬間移動した俺とデボルグ。

 窓の隙間からは温泉宿の湯気が見える。


「ほらよ」


 ぽいっと布の様なものを手渡してくるデボルグ。

 恐らくはその辺に干してあった物だろう。

 ジト目で睨みつけた俺はそれを受け取り身体の水分を拭い取る。

 風邪引いたら恨むぞお前……。


「……」


「? どうした? 変な顔して?」


「てかお前か! 誘拐犯は!」


「はあ? 誘拐犯? なんじゃそら」


「しらばっくれんじゃねぇよ! 『お前』じゃないなら『お前等』だ! 何を企んでいる? 仲間を返しやがれこの変態!」


 俺が考えていた可能性の一つ。

 ユウリ率いる傭兵団が誘拐犯であるという可能性。

 こいつ等だったら実力は申し分ない筈。

 しかし――。


「……なるほど。世界最強の傭兵団である《インフィニティコリドル》のメンバーが誘拐、か……。くくく、何だそれ……! クソ面白い事になってるじゃねぇかよ……!」


 腹を抱えて笑うデボルグ。

 こいつ等じゃ無い――?

 それは本当の事なのか?


「……お前等じゃ無いっていう証拠はあんのかよ」


「証拠? はっ、そんなモンねぇよ。第一、俺らがお前等《インフィニティコリドル》を誘拐して何の得があるんだ? 身代金か? それだったらもっと金を持っていそうな奴を誘拐するぜ」


「それは――」


 確かにそうなのだが、これはただの誘拐では無い。

 世界を滅ぼすとまで言われている《魔術禁書》と仲間の交換なのだ。

 デボルグは嘘を言っている様には見えない――。

 という事は《魔術禁書》の事も、何も知らない――?


「くく、こりゃとんでもない情報を手に入れちまったなぁ……! 最近音沙汰が無いとは思っていたが、まさか『誘拐』とは……! くく、マジで笑えるぜ……!」


「……それぐらいにしておけよ」


 先程から笑い転げているデボルグに睨みを利かす俺。

 一瞬のうちに空気が変わる。


「……へぇ。仲間の事になると、そこまで残虐な『闘気』を纏えるのか……。闘技大会の比じゃねぇな、カズハ」


 少しも臆さないデボルグ。

 俺はふぅ、と大きく息を吐き殺気を鎮める。

 ちょっとマジになりすぎたか……。


「……良く分かった。お前等じゃ無いのなら、それでいい。で、どうしたら・・・・・黙っていてくれる?」


「ほう?」


 下から出た俺を興味深そうに見つめるデボルグ。

 頭の先から足の先まで。

 なんか知らんが鳥肌が立ってきたし……。


「……まあ、今回はやめておこうか」


「?」


「いや、こっちの話だ。ならばカズハに頼みがある。さっきも言っただろう? 俺は『別件』で動いているって」


 何か今、凄いことを言われそうな気がしたが、俺の気のせいだろう。

 全身にこれでもかと鳥肌が立ってるし……。

 早く服を着たい……。


「俺にも時間が無いんだ。今夜中しか手伝えないが、それでも良いか?」


「ああ。ちょうど『相棒』がいないと駄目だったからな。助かるぜ」


 ……『相棒』?

 一体何をするつもりなんだ……?


 そう――。

 この時の俺は、想像もしていなかったんだ――。


 

 ――まさか、『あんな事』をさせられるなんて。


















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