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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第三部 カズハ・アックスプラントの誤算
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007 作戦開始

 宰相官邸を出た俺達は、その足で《月の秒針》へと向かう。

 《隠密》の効果は60秒。

 なので何度も何度も重ね掛けをしながらルルとタオを担いだまま全力疾走する俺。


「(タオ。お前ちょっと太ったか?)」


「(『重い』って言いたいアルか! それ凄く失礼アルよ!)」


 右脇に抱えたタオにチョップを喰らう。

 やめて。痛い。


「(馬鹿な事をやっていないで、ちゃんと前を向いてくださいカズハ)」


 左脇に抱えたルルの指差す先には数名のアムゼリア兵が見える。

 そのうちの一人の兵士の目が赤く光っている。

 やべ……!


「いたぞ! 前方約100ZLゼガルラウト! 木魔法隊、構え!」


 《凝視》を使い俺達の位置を定めた兵士は数名の魔道士に指示を出す。

 詠唱を始める魔道士達。


「「《ウッド・バインド》!!」」


 俺達の周囲の地面から無数の蔦が出現。

 あれか。

 エアリーが使っていた『束縛系』の魔法か!


「悪ぃタオ! 剛炎剣を!」


「へ? あー、そういう事アルね!」


 タオは俺の背に背負われた剛炎剣の先端を周囲の蔦へと向け――。


「ええと、スイッチオン、アル!」


ゴオオオオ!!


 放たれた火炎放射により燃え上がる蔦。

 いきなり役にたったよ!

 ゼギウスじいさん!


「くっ……! 火魔法か! ならば次の――」


「させるかよ! 『常世の闇に集いし陰法師の御所へと誘わん!』 《奈落》!」


 俺はそのまま《陰魔法》を詠唱。

 兵士達の足元に突如開いた異界の穴。


「うわああああああああ!」「落ちる! ひいいいいいいいい!」


 次々と落とし穴に落ちていくアムゼリア兵。


「なんちゅう魔法アルかそれ……。初めて見たアルよ……」


「えげつないですね……。まるで悪魔ですねカズハ」


「お前ら言いたい放題だな!」


 唾を飛ばしながらも反論する俺。

 大丈夫。

 数時間したら落とし穴からは解放されるし。

 別に殺した訳じゃ無い。


 そのまま大通りを抜け街の西に位置する《月の秒針》へとひた走る。

 




「あー、疲れた……」


 《月の秒針》の手前にある建物の陰で一休みする俺達。


「ていうか本気アルか……? 下手したら戦争になるアルよ? ラクシャディア共和国は表の顔は信仰心の高い人民が暮らす平和な国という事になっているアルけど、裏の顔は――」


「知ってるよ。《アムゼリア教》の事もな」


 この異世界で最も信仰されている《アムゼリア教》。

 しかしその裏では司教らの権力争いが絶えないと聞く。

 個々がそれぞれに武力を持ち、互いに互いをけん制し合っているのだとか。

 そしてあのハゲ宰相。

 あいつも元は《アムゼリア教》の司教出身だという事も。


「……ならばどうしてこんな喧嘩を売るような真似をするのですか」


「んな事言ったってよ……。あのハゲ宰相、気に入らなかったんだもん」


「・・・」「・・・」


 絶句するルルとタオ。

 そんな目で見るな。俺を。


「タオ。お前の親戚とか、まだ《和漢ホウハン》に住んでいたりするのか?」


「へ? もう住んでいないアルよ。皆アゼルライムス帝国に住んでいるアル」


「友達は?」


「友達なんている訳無いアルよ。だって盗賊一家アルよ? 毎日が強盗、裏切り、人身売買の日々で――」


「それ以上は怖いからいいや」


 ならばタオの身元を調べられて、あのハゲ宰相に人質に取られなくても済むな。

 アゼルライムス帝国まで諜報員を出張させる可能性もあるが、そこまでは考えなくても恐らくは大丈夫だろう。

 元々盗賊一家だというし、身元を隠しながら生活をしているのだろうし。


「……もしかして、心配してくれているアルか?」


「え? ああ。だって俺の勝手な行動でお前らに迷惑を掛けたら申し訳無いし……」


「もう迷惑を掛けられたどころでは済まないのですけれどね」


 幼女が鋭く突っ込む。

 ホントごめんっ。


「……ちょっとだけ見直したアル。おっぱい、触るアルか?」


「触るかっ!! お前アホだろ!!」


 ぺロっと舌を出すタオ。

 こういうやり取りにも随分と慣れた。


「あの時計台の最上階に《氷の魔術禁書》が……」


 幼女の言葉に俺とタオは《月の秒針》を見上げる。

 幾何学模様が何重にも描かれた神秘的な風貌の時計台。

 塔のてっぺんにある三日月模様の入った不思議な形の時計の秒針が、静かに時を刻んでいる。


「でも確か、《古代図書館》の何処かに魔術禁書が保管されているって聞いた事があったアルけど……」


「あれは偽の情報だよ。俺も以前、騙されたし」


「……以前・・? いつの事ですか? それは?」


 しまった。

 口が滑った。


「まあ、今度教えてやるよ。今度、な」


「?」


 ルルの頭を優しく撫でた俺は、当然の事ながらその手を払われる。

 それを見て苦笑するタオ。


「さあて! いっちょ気合入れて《氷の魔術禁書》をかっぱらって来るかぁ!」


「あ、ちょ! 一人で行くアルか!」


 立ち上がった俺を制止するタオ。


「当たり前だろ。お前ら守りながらだと突破し難くなるじゃんか。それに重いし」


「重っ……! 別に抱えて行ってくれとは頼んでいないアルよ!」


「あそう」


 またもやチョップを喰らう俺。

 呆れ顔で俺を見上げるルル。


「タオはルルを頼む。アムゼリア兵に見付からない様に何処かに隠れていてくれ。そうだな……。南にある《古代博物館》辺りがいいな。そこで落ち合って、すぐに南門から出て《和漢ホウハン》に向かおう」


 二人に指示を出す俺。

 流石に緊急事態だと感じたのだろう。

 素直に首を縦に振るルルとタオ。


「……気をつけて下さい。カズハ」


「ああ、分かってるよ」


 もう一度ルルの頭を撫でようとしたが、鋭い眼光を向けられたのでやめにしました。


「おっと。話してたら兵がウジャウジャと……」


 《月の秒針》の入り口を囲む兵士の数が徐々に増えていく。

 まあ、これを待っていたんだけどね。


「相変わらず無茶をするアルね……。でも……助かったアルよ」


 俺の意図を理解したのか。

 心配そうな視線を向けたタオは、ルルと手を繋ぎその場を後にした。


「さて、と」


 入り口の兵の数はざっと見積もっても……50人くらいか。

 俺の強さは全世界に広まっちまってるから、もっと増える可能性の方が高いな。

 あのハゲ宰相はそこん所、痛いほど分かっているだろうし。


 剛炎剣は使うのはやめておこう。

 まだ慣れていないし、誤って殺しちまう可能性の方が高いし。

 出来れば死者は出したくない。

 後から『ごめんなちゃい』する時に、死人が出ていない方が交渉が上手く行くだろうから。


(今頃鼻くそほじってるゼギウスのじじいに、全部押し付けよう……)


 そう心に決め、深呼吸。

 

 武器は使わない――。

 相手は殺さない――。

 最速で最上階にある《氷の魔術禁書》を奪還し、タオ達に合流し街を出る――。


 なんかまた、いい感じに『縛りプレイ』みたいになって来たぞ……!


 

 そんな事を考えていたら、思いっきり鳥肌が立ってきました。

 うん。

 

 やっぱ俺、Mなのかも――。






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《アックスプラント王国/王の間》


「ぶえっくしょい! ……うーむ。風邪引いたかのぅ……」


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