取り敢えず建国した俺は暇を潰すため敢えて訪問する事にした。
その後揉みくちゃにされながらも優勝賞金の1000万Gをしっかりと受け取り。
その足で今度は堂々と正面から《アックスプラント王国》の女王として《アゼルライムス》へと出向き、エリーヌに謁見した俺。
既に俺が《エーテルクラン》での闘技大会で優勝を飾った噂は《アゼルライムス》にも広がっており、かの国はお祭り騒ぎ。
それも仕方の無いことなのかも知れない。
国の危機を救った英雄が優勝を飾り、たった一人で祖国を訪問して来たのだから。
「はぁ……」
「お疲れ様ですわ、カズハ様」
エリーヌの寝室でようやく一息吐けた俺にいつものレモネードを手渡してくれる。
彼女特製の、俺の大好きな飲み物。
これを飲めばいつも心が安らぐのだ。
「……それにしても凄い盛り上がりっぷりだよな相変わらず……。俺が《勇者》だった過去2回はこんなに歓迎なんてされなかった気がするんだが……」
ふぅふぅしながらレモネードに口を付ける。
この甘さ最高。
「ふふ、仕方ありませんわ。カズハ様も分っておられるのでしょう? 本当は……」
「ん……。まあ、ね」
やはりエリーヌは俺の考えの一足先を行っている気がする。
たぶん俺の心も読んだに違いない。
出来る女、エリーヌ。
ボイン輝く俺の女、エリーヌ。
「ムラムラしてきた」
「まぁ……」
カップを置きそのままエリーヌに覆いかぶさる俺。
一応帰りの船は明日の予定だから、今夜は寝かさないんだからね!
「今日は如何なさいますか?」
「スペシャルコースでお願いします」
「ふふ……。カズハ様ったら……」
布団の中でちちくり合う俺たち。
リア充最高!
「私もいずれ、正式に《アックスプラント王国》へと謁見へ向かいますわ。グラハムやリリィとも久しく会ってはおりませんし、カズハ様のお仲間の方にももう一度ご挨拶したいですし……」
「なんて言うの? 『元妻のエリーヌです!』って言うの?」
「まさか。……もしかしてそう伝えて欲しいのでしょうか? 良いのですかカズハ様は……?」
「いくない。それだけは、色々と問題あるからいくない!」
「きゃっ!」
攻める俺。
受けるエリーヌ。
人間って素晴らしいね!
「もう……。まるで子供ですね。カズハ様は……。こんなに可愛らしいお顔をしていらっしゃるし」
ぺロリと頬を舐められビクッとする俺。
やばい。
エリーヌさんのスイッチが入っちゃった……。
こうなったエリーヌは誰にも止められない。
俺、受けの体勢に入ります。
「優しくして下さいエリーヌさん……」
「はい。勿論ですわ。カズハ様がMなのは良く理解しておりますから……」
俺の耳元でそっと囁き、そのまま甘噛みするエリーヌ。
ちょっと喘いじゃった俺。
声は女そのものだから何か変な感じ。
そして俺達は――。
◆◇◆◇
次の日の朝。
エリーヌとお別れの挨拶を済ませた俺は護衛の兵士を断り《アゼルライムス》をひとり北上。
ゼメル王妃も見送ってはくれたが、あの偏屈親父ことアゼルライムス王は見送りには出て来なかった。
「やっぱ後ろめたいんだろうなぁ……。素直じゃないからな、あの頑固親父……」
昨日の祝杯の最中もキョドってたし。
男尊女卑の考えを覆すって結構酷なことなのかも知れないよな……。
あたま固くなった頑固親父だったら尚更だもんな。
「今度エリーヌが訪問してくれるときは、親父さんも誘ってみるように言ってみるか……。来るかは分らんけど」
王の話し相手はゼギウスじいさんとグラハムにでもしてもらえば良い。
あの2人ならば王の機嫌を損ねることは無いだろうし。
「はぁ……。それにしても昨日も凄かったなぁ……。エリーヌってやっぱエロいなぁ……」
あんな所をあんな事しちゃうなんて……。
嗚呼……。夢の様なお時間でした……。
・・・
そのまま《エーテルクラン》の街を素通りし北上を続ける俺。
と、街を過ぎた辺りで4つの人影が目に入る。
「あ! やっと見つけましたよぅ! カズハ様ぁ!」
手を大きく振っているのはエルフ犬ことエアリー。
そして彼女の横に立っているのは――。
「何だよお前ら4人揃って……。ピクニックにでも向かうのか?」
「行くわきゃねぇだろうが。アホかクソ女王」
「誰がクソ女王だ! 誰が!」
地面に唾を吐きながらバツの悪そうな表情のデボルグ。
「あんたねぇ……。カズトが女王だって知ったときはビビッておしっこちびりそうになっていた癖に」
「んだと!?」
「まあまあ、2人とも」
切れるデボルグといがみ合うルーメリアを何とか宥めようとするユウリ。
見事にバラバラな4人組の気が……。
「実はですねカズハ様! 私達4人で『傭兵団』を結成することになったのですよぅ! その名も《エアリー親衛隊》っていうのです!」
「勝手に決めんなこのエロエルフ!」
「だ、誰がエロエロエアリーですか!」
「……誰も言ってないと思う」
デボルグとエアリーの漫才に一応突っ込む俺。
ていうか『傭兵団』?
マジかよ……。
せっかく俺の傭兵団に誘おうと思ってたのに……。
「……という訳さ。優勝は逃したけど、僕らの『名』もだいぶ売れたし賞金だって結構貰ったしね。打倒《インフィニティコリドル》って感じかな」
「……なるほど。お前が3人を誘ったという訳か。……何を企んでいやがるユウリ?」
鋭い眼光をユウリに向ける俺。
一応意味無いかも知れないけど、新しい黒の眼帯は付けたまま。
「おや、気になるかい? 理由は簡単さ」
そういったユウリはそっと俺の耳元で囁く。
「(『君の心』を僕だけのものにする為に決まっているだろう? 憧れの『戦乙女』、女王カズハ様)」
「うお! 息吹きかけんじゃねえ! てめぇ!」
心臓の音が跳ね上がり赤面する俺。
セレンの《闇魔法》以上にやヴぁいじゃねぇかよお前の囁き声は!
嗚呼……。良い匂いだった………………はっ!
「じーーーーーー」
「……なんでしょうエアリーさん」
まだ後ろで罵り合っているデボルグとルーメリアをよそに、ジト目で睨んでくるエアリー。
意味分らん。
「なんか……ご主人様を取られた子犬の気分ですぅ……」
そして蹲りのの字を書き始める。
意味分らん。
「はは、ごめんエアリー。後でモンブランプリンを奢ってあげるから」
「元気満タンですぅ!」
「おい……。あんまり甘やかすなよ……。まったく……」
ユウリの『本当の企み』はなんだか分らないが、悪い奴では無さそうだし大丈夫かな……。
ていうかエアリーも10位以内に入賞してるんだから賞金結構もらってるだろ!
プリンくらい自分で買えよ!
「まあ、いつでも遊びに来いよ。物凄く辺境にある小さな『国』だけどよ」
「うん。きっといつか挨拶に伺うよ。僕らの『傭兵団』が世界に名を轟かせたら、必ず」
お互いに握手を交わす俺達。
「わ、私も!」
そこにエアリーが加わる。
「あいつらは……なんか大変そうだし、そっとしておくか」
まだ言い争っているデボルグとルーメリアをスルーし――。
――俺は彼らと別れ、港町《オーシャンウィバー》へと向かう事に。