トビラ
俺はもう一度立ち上がった。
○○の言葉に支えられ、再び大地に立った。
俺の姿は、もはや人間とは言えない物であった。
俺は光に包まれたあの瞬間、確かに感じた。
光の鎧が、俺の体を纏ったのを。
不思議と、鎧が身を包んでいくあの感覚は、はじめての事ではないように感じた。
記憶のリセット。
○○はそう言っていたけど、俺は一体何者なんだろうか。
「神のヨロイ…まさかまだ存在していたとは。キサマがあの破壊の帝王だったのか!」
「すまないね、俺はどうやら記憶喪失みたいで。でも戦いかたくらいは体が覚えてるみたいなんだ。」
次の瞬間俺はその場から一瞬であの怪物の前へと移動し、巨大な角を模した用な装甲の付いた右手から光の刃を出現させ、怪物に切りかかった。
ビシュンッ!!!
「ぐわぁぁぁぁぁぁがぁぁぁあ!!!」
怪物の右腕が血しぶきを上げて切り落とされた。
「く、くそ!王の魂、は、目覚めたようだ、な…」
「お前は何者なんだ?質問に答えたら楽に殺してやるよ」
右腕が在った部位を抑え膝をついている怪物に俺は問い掛けた。
体の底から、力が湧いてくるのを実感できる。
俺は直ぐに悟った。俺はコイツに勝てる、と。
そのせいか、先程までは恐ろしかったこの怪物が
哀れなほどに弱い存在に見える。
自然と俺の口調は攻撃的になっていく。
「ふ…ははははは!どうやら君は再び破壊の帝王になろうとしているようだ。教えてやるさ、私は人類とは異なる種族[界主]の一人だ。君たち人類が支配者として生きるこの世界に、新たな支配者として君臨するために生まれた種族さ。百万年前に我ら種族は人類に敗退し、冥界をさ迷うことになったのだ。だが、世界は人類を支配者とは認めなかったようだな。」
「百万年前?支配者?お前たちはどこから生まれたんだ?」
俺は怪物の吐いた台詞を頭の中で整理するので精一杯だ。
「ふん、では君は、人類がどこからやって来たのか、分かるかい?」
「…なに?」
「ヨロイを纏ったという事はいずれ全てを思い出すだろう。君が過去に何をしたのか。せいぜい気を付けることだな。君は、神に抗った。その運命は険しいものとなるだろう。扉のムコウで君は再び神に抗う定め。」
「扉…?」
疑問に思うことだらけだったが、考えようとした瞬間に怪物は俺に向かって特攻してきた。
無意識に俺は右腕の光の刃を怪物に降り下ろしてしまった。
ブシャァァァァァァァァ!!!
「うぐ、ぶわぁ!!」
真っ二つに切られた怪物の体からは、大量の血が飛び散った。その血の色は、真っ黒であった。
「破壊の…帝王…カイザー、闇を…受け入れよ…」
そう言い残すと、怪物は粒子かしたようにその場から消えていった。
幻なんかではない。その証拠に、怪物の真っ黒な血は、地面に染み込んでいるのだから。