コトバ
ブシャァァァァァァ
辺りに飛び散る流血。緑に生い茂る草が真っ赤に染まる。
身体中に走る激痛。叫ぶことも出来ずに俺は地面に倒れ込んだ。
ぐはっ、あぁ、
「哀れなものよ。かつては鬼神のごとき力を振るった瞬殺無音部隊の魂も今となってはこの脆さ。脆い。実に脆い。そしてなんと儚いものか。人であるがゆえにこのような末路しか与えられぬのだ。」
俺を切った怪物が俺に向けて言葉をはく。
相変わらず何をいってるのか理解ができない。
こいつは何なんだ?
謎な要素しか見当たらない。だけども、そんな事も考えられなくなってきた。俺の身体中に走る激痛も、ついにはなにも感じなくなってきた。まぶたが急に重くなり、目を開けてるのも辛い。
「破邪の英雄の魂よ、奈落へと堕ちよ。そして消え行くがいい。我らの統べる世界をあの世で見物するがいい。かつて我らがそうであったように。」
理解できない言葉だが、これだけは分かる。俺はこいつが憎い。憎くてたまらない。だけど、もぉ、こいつの姿を見ることさえ、出来なそうだ。
菊治、信太、竜二、はるおばさん、みんな…
ごめん。俺は…
視界がゆっくりと真っ暗になっていった。
……………………………………………
…が。
……つ、が。
れ……つ、が
れつがっ!!
はっ!?
誰かが俺の名前を呼んでいる。
何度も何度も呼んでいる。
その声に引き寄せられるように俺の視界は晴れる。
そこは、暗闇のなかだった。
夢に出てきたあの空間によく似ている。
むしろ、あの空間と同じとこなのかもしれない。
「ここは…?俺はどうなったんだ?そうか…俺、死んだのか…。てことはここは、天国?それとも地獄か?」
「烈我!!」
「お前は、○○!?」
暗闇の向こうから、夢の中で出会ったあの懐かしく、優しく、暖かい存在の○○が俺の前に現れた。
俺の名前を呼んでいてくれたのも彼女だ。
「○○…、俺、よくわからない内に死んじまったみたいなんだ。なにもできないまま。俺…どうなっちまったんだよ…○○のことも、名前も呼べないまま、守ってやれないまま。皆にも恩返しさえ出来ないまま。○○…俺は…俺は…」
「大丈夫だよ。烈我は死んでなんかいない。だって、烈我には私がついてるんだもん。言ったでしょ?あなたは私が守るって。今はこんな形でしかあなたと繋がっていられないけど、私の魂は、私の想いは、いつもあなたを守る。あなたを支えていたい。あなたの力になりたい。だから、もぉ一度立ち上がって!この暗闇から抜け出して、いつか光の向こうであなたに会いたい。」
○○の優しい言葉が、俺の不安と怒りを全て打ち消した。そして○○はまた俺を抱き締めてくれた。
「○○、俺にはなにがなんだかまったく分からないんだ。あの怪物の事も。この状況も。だけど、○○だけは分かるんだ。○○が俺にとってどれだけ大切な存在なのか。でもどうして俺は思い出せないんだ?」
「貴方は私達の世界を守るために全てを捨てて力を使った。そして記憶をリセットされてしまったの。次の世界を渡り歩くために。私たちの事も覚えていないのはそのため。だけど、今のあなたが全てを取り戻すには自分の力で立ち上がるしかない。悲しいけど、私にはこうやってあなたの魂に触れることしか出来ない。でも忘れないで。私の想いは、必ずあなたを守るから。あなたの力になるから!」
「記憶のリセット…。自分の力で立ち上がるしかない、か。よくわからないけど、○○が居てくれる温もりがすごく伝わってくるよ。全てを取り戻して、必ず○○に会いに行くから、待っててくれ!」
○○は笑顔で俺の手を握った。
その瞬間、俺の体は暖かい光に包まれていった。
もう一度、立ち上がる…!
「優しすぎるよ、烈我。私、待ってるから!」
暗闇から一筋の光が指した。
○○の言葉は、やっぱり暖かいな。
俺は、光に包まれて、立ち上がった。
「な、なんだと!?この光は!?」
「まてよ、そこのエイリアン野郎!」
「キサマ!?ま、まさか、その姿!?取り戻したと言うのか!?あ、ありえん!」
「俺は、取り戻すために、約束を守るために立ち上がっただけだ!」
○○の言葉が、俺を再び大地に立たせた。