A「お前は一体……!?」B「ただの暗殺者(仮)だ」A「そうだったのか……」
私の名は清瀬愛良
MMORPGに閉じ込められているうちの一人だ
私は今、街の酒場で仲間たちと先ほど起こったことについて話している
「あいつは何者だったんだ?」
「わからねえな……
短剣を使っていた以外何もわからねえな」
「二人とも、何かほかにわかりそうなことはないか?」
「あいつは……
多分女性だな。
声が女性だったしな」
「ちらっと見えたんだが、
口元がニヤリとしていたな」
「俺が思うに、まだ初心者だと思う」
「あんな強さでか?」
「連携など気にせず、一人で真正面から攻撃したこと、
短剣の扱い方が悪かった。
可能性としてはなくはないだろう?」
「いや、少しだけ止まっている時があったはずだ。
その時にどうすればいいのか考えた結果
初心者のふりをしようと演じたんじゃないか?」
「それだと俺が言ったニヤリとしたのはどうなる?
殺した後にニヤリと笑うって事は殺しなれているやつなんじゃ……」
「頭がまわり、いい人の面をかぶっているリアルで暗殺者……か?」
二人の意見はいい所をついているものだと思われる
しかしそれでは分からないところがある
『強さ』だ
装備品が強かった
これだけで説明できるかどうかも分からない
β版を引き継いでいれば素材を引き継ぐことができるらしいが
強いものを作ろうとしたら生産職じゃないと作れない
しかし、助けに来た暗殺者(仮)は前衛職の可能性が高い
レベルが高ければ後衛職でも助けるかもしれないが
可能性は低い
レベルは私より先に行くことはないはずだ
デスゲーム開始直後から森の中でレベル上げを淡々としていたのだから
後衛職のほうでは短剣を装備して前衛に出ようとは思わないからだ
となると
まったく意味が分からない
頭がまわって、人を助けるいい人ぶった暗殺者疑惑がかかっていて、かなり強い
考えても分からなくなるだけだ
「なぁ、オメガ」
「なんだ?」
「あいつを俺らのギルドに入れてみないか?」
「俺としては無理だと思う。
熊を倒した後にすぐにどこかに行っただろ?
あまり人といたくないんだろう。
それに名前も何も知らないからな」
「それもそうだな……
今度出会ったときダメもとで頼んでみようぜ!」
「できるかどうかは知らんぞ……?」
「だからダメもとなんだよw」
まぁ、確かに私としてもギルドに引き入れたいが……
なんにもわからないからな……手の打ちようもない
「縁があったらまた会いましょう、か……」
私の声は酒場の声でかき消されていった