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EMESS

掲載日:2012/04/09

こんにちは。聖霊奏者エアトスです。

『エメス』とはユダヤ教に登場する皆さんお馴染みのゴーレムの事です。

実はゴーレムにはエメスという印がされ、一文字変えるだけで死んでしまう。

今回はロボットを造った人とロボットに焦点を当てたストーリーです。

「神様になりたい」

幼い頃に夢見た幻想が叶う時が来た。


今、手術台の上には出来上がったばかりのロボットが横たえられていた。

ベースは『ギルティクラウン』の楪いのり。

ギルティクラウンは僕が一番好きなアニメーション。

そのアニメに出て来る幻想的な美少女『楪いのり』のファンでもある。

だから僕は一番に彼女を造った。

制作費:ワンコイン。

理由は、近くの工場から余った鉄屑を集めたからだ。

肌は特殊なシートでできていて、触ると人間のように柔らかい。

このシートにだけワンコインがかかった。

とは言え、こんなに安くできるなんて思いもよらなかった。

「あとは起動させるだけだな。」

僕はロボットの背中に繋がれた制御回線を切った。




しかし、結果は残酷だった。

別に壊れた訳でも動かなかった訳でもない。

ロボットは目を擦りながらトロンとした目で僕を見た。

声もきちんと機械音声ではない。

彼女の声優に一番近い声をした姉の協力で声は全てインプットされている。

が........

「うにゅぅ~...?」

こんな喋り方はないだろ!?

原作の彼女はクールで無口。

カッコイイイメージがあるはずなのに...。

ロボットは指をくわえた。

「おにゃかしゅいたの....」

夢が...崩壊した。

ロボットは手術台から降りた。が、すぐ転んだ。

「いたぁぃ...!!!」

ロボットは泣き出してしまった。



こんないのりは、いのりじゃない。


「う...」

ロボットは必死になって立ち上がろうとしたが転んでまた泣き出した。

どうやら立てないらしい。

僕は右手を差し出した。

「ほら。手を取って。」

ロボットは僕の手をしっかり握った。

その力も弱々しい。

必死になって立とうと膝をプルプル震わせる。

「頑張れ...」

気がつくと僕はロボットを応援していた。



「頑張る...頑張るよ!」

彼女は泣きながら膝を震わせて...立った。

「立った...おめでとう!!!」

僕は無意識に彼女を抱きしめていた。



「僕の名前は赤銅準。パパって読んでくれ。」

本当はアニメらしく呼び捨てで読んで欲しかったが、この調子では無理だろう。

彼女は首を縦に振った。

「パパ...おにゃかしゅいたの...」

ロボットは腹ぺこらしい。

「ほら。美味しいご飯だよ。」

僕は彼女にオイルを出した。

彼女は口につけたが吐き出した。

「まじゅい!!!」

彼女は泣き出した。

「困ったな...」

彼女の燃料メーターを見るとかなり低くなっていた。

このままでは確実に燃料切れで死んでしまう。

それだけは避けないと。


と、彼女は突然テーブルに乗っていた僕のごコシヒカリに手を出した。

「ちょっと!それは違」

彼女は目を輝かせた。

「おいちい!!」

「え...?メーターが回復していく...」

彼女がおいしそうにご飯を食べ切る頃には、メーターは満タンになっていた。

満タンになると、彼女は幸せそうに眠り始めた。


こんないのりも...悪くないかも。



「うにゅぅ...」

彼女は10分して目を覚ました。

「そうだ、君に名前をあげよう。」

「にゃまえ?」

彼女は首をゆっくり傾けた。

「君の名前は『ゆず』だ。」

僕は彼女の頭を撫でた。

「ゆず...ゆず!」

彼女は笑った。

「ゆず、パパの事...好き!」

ゆずは僕の唇にキスをした。

幸せそうに笑う彼女が愛おしい...。




その後、僕は彼女にいろんな事を教えた。

「ほらほら、よそ見しない。」

「はーい♪」

まずは料理を教えた。

吸収力のいい彼女は料理の基礎をしっかり覚えて見事にこなす。

「洗濯物は洗剤を余り使わない。」

「なんで?」

「環境に悪いからだよ。」

「環境さんも幸せになって欲しいからいっぱい使わにゃいよ!」

ゆずは笑顔で返事をした。




「掃除はきっちりやろうな。

掃除機はボタンを押して動かすだけの単純作業だよ。」

「うん♪」



色々教えた後はやっぱり疲れる。

言葉をたくさん教えた後、僕とゆずはクタクタになって眠った...。




ある日...彼女がケガをした。

大泣きする彼女の膝を見ると、シートが破けていた。

「よし、パパが治してあげるよ。」

僕は新しいシートに張替えた。

「いたくない...!!!」

ゆずは泣き止んだ。

シートの張替えだけで簡単な傷ならすぐ治る。



またある日、ゆずは答えづらい質問をしてきた。

「ねぇ、パパ?

人間さんってなんで長生きしにゃいの?」

「...」

「パパのお話では、ゆずは長生きできるっていうんだけどねぇ?」

「人間さんは、短い時間を有意義に過ごせるんだよ。」

「にゃんで?」

「人間さんは本当の幸せを見つけるという目標を持って生きる。

生きている間にそれを見つけられたらそれは有意義なんだよ。」

「ふ~ん。」

ゆずは味噌汁をすすった。




そんな幸せな生活も...長くは続かなかった。

ゆずは政府によって強奪された。

ゆずは泣き叫んで暴れた。

でも手足を縛られて身動きも取れず、連れ去られた。

「これは報酬だ。

あのロボットは量産して兵器に使う。

解体して製法を見せてもらう。」

設計図を念のため燃やしたせいでもう次は造れない。




いや、造る気になれない。

なぜなら、僕はロボットとしてでなく一人の女の子として見ているからだ。


僕は悔やんだ。

彼女を救えなかったことに....。

が、テレビをつけると大変な事になっていた。

『ロボット脱走。

破壊命令下る。』



「ゆず...ゆず!!!」

僕は車に乗ると急いで街に出た。




「パパ...会いたいよ...」

ゆずは泣きながら右手を押さえた。

彼女の右手は既に壊れ、中身が剥き出しになっていた。

「パパのあったかい腕で抱っこされたいよ...」

ゆずは人通りの少ない道を見つけ、走った。

燃料メーターが低下していく。

ちぎれた腕から燃料が垂れ流しになる....。



彼女は準に逢いたくて、自分の腕を引きちぎってまで脱走したのだ...。




走った。

見つかる!

怖い人間さんが黒い塊をぶつけてくる。

体に穴が空き、燃料が流れる。

怖い...怖いよ...パパ。





ついに僕はゆずを見つけた。

しかし、その頃には彼女の体はボロボロになっていた。

両腕は無く、足も中身が剥き出しになり、お腹は壊れて燃料が流れていた。


「ゆず!!!!」

僕は全力疾走してゆずに向かって走った。

「パパ...!!」

ゆずは最後の力を振り絞って走った。

パーツが次々と落ちていく....

そして、ついに体がバラバラになった。

倒れるゆずの首を僕はキャッチした。

「パパ...」

涙を流しながらゆずが笑う。

燃料切れを起こした彼女はもう三分しか起動できない。


「抱っこ...して?」

僕は彼女の首を抱っこした。

「ゆず...しっかりしろ!」

「パパ...ゆず、幸せだよ?」

「死ぬな...死ぬな!!!」

「パパのご飯...美味しかったよ?

いっぱい...遊んだよ?

だからゆずは幸せ...」

彼女の目がだんだん虚ろになっていく...

「もうゆず、眠たいよ...」

彼女はゆっくりと目を閉じた。

その刹那、彼女の唇が僅かに動いた。

それを口に出す。

「あ...り...が...と...う...」

僕は泣いた。

何もできなかった自分を悔やんだ。


僕は彼女の頭からメインブレインとなるチップを取り出し、ポケットにしまうと残骸を拾い上げた。


「政府の命令だ。

そのロボットを」

「うるせぇんだよ!!!!」

僕は全力で男の顔を殴った。

「誰のせいで!!!

僕の...大切な人が死んだと思ってんだよ!!!!」

「人?笑わせる。

所詮はただの鉄ではないか?」

「それは違うね。」

僕は涙を流しながら叫んだ。

「彼女は...感情を持ったロボットだった。

純真で...無邪気で...人一倍美しい心を持ったな!!!」

僕は男の胸倉を掴んだ。

「ゆずは...感情もねぇお前らのせいで死んだんだ!!!

ああ?

お前らは...!!!」

僕はもう一発殴った。

「人間失格だ!!!!!!!!!!!」

僕は直後、警察に捕まった。

しかし、チップは隠し通した。





夏.......

僕はご飯と味噌汁、そして彼女の大好きだった卵焼きを盆に載せて庭に向かった。

庭には少し前、とある木を植えた。

その木の下に彼女は埋めてある。

木の前で僕はそのご飯を食べた。

「お前も食いたかったろ...」

卵焼きを食べながら言った。

「これがゆずにできる罪滅ぼしだ...。」

僕はその木の写真を撮った。





今年も木は素敵な匂いを漂わせる実をならすだろう。

ゆずという名の果実を......

お疲れ様です。

聖霊奏者エアトスです。

最初はのんびりとした日常生活を軸にした話にしようと思ったのですが...悲劇のストーリーとなってしまいました。



次回作は製作確定です。

次回こそは悲劇のストーリーにならないようにします。

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