表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/15

第六話 旅立ち

 次回からいよいよ本格的に旅が始まります!



第六話 旅立ち


 細く、闇のはびこる通路を颯太とイコは走っていた。硬質的な足音が耳に響く。二人は険しい顔のまま、脇目もふらない。


「あの扉の向こうよ」


「オッケー!」


 イコが遠く前方に見える扉を指差した。来る者を拒むような重厚な扉だ。

 颯太とイコは速度をさらに上げて扉に迫った。近づけば近づくほど扉は威圧感を増していく。しかし、颯太たちはそんなことお構いなしに扉の前に立った。颯太は扉を開けようと手を伸ばす。

 扉が大きく揺さぶられた。だが、頑強な扉は開こうとはしない。


「開かない、鍵がかかってる!」


「いま開けるわ」


 イコは扉につけられていた端末に触れた。ものの十秒とかからずに、電子音が鳴り扉の鍵が解除される。

 鍵が解除されるやいなや、颯太は扉をスライドさせた。金属が軋む耳障りな音を出して扉が開く。


「すげえ……」


 颯太は扉の向こうの圧倒的な光景に目を奪われた。人を吸い込むような暗闇が、地下とは思えぬ広大な空間に広がっていた。そのところどころに小さな明かりが点り、トンネルの中のような黴臭い空気を醸し出している。

 そんな空間の奥に、弱々しく光を反射する一隻の宇宙船のようなものがあった。流線型の船体は鉛色に光り、船首に向かってすぼまるような紡錘形。窓に当たるガラスのような部分には、この船が経てきた年数に比例する厚い埃が積もっていた。

 その古ぼけた船の側面には何故かアルファベットで「クアーズ」と刻まれていた。


「あの船よ」


「あれか? なんか……ぼろくない?」


「大丈夫。クアーズはまだまだしっかり飛べる」


 イコは不安そうな顔をした颯太を置いて、一足先に船へと向かう。闇を通り抜けた彼女は、そのところどころ錆び付いた船体に手を置いた。窓に明かりが点り、船が眠りから覚める。

 音もなく船のドアが開かれた。イコは船に乗り込み、ドアから身を乗り出す。


「早く来て!」


 イコは目一杯手招きをして、颯太を急かした。颯太はメルの身体をおんぶし直すと、その足をしっかり掴む。颯太が駆け出した。風と闇を切り、船に向かって矢のように走る。その強靭な脚力によってまたたく間に到着した颯太は、船の中に滑り込んだ。

 船の中は白を基調としていて、広々としていた。正面に大きな窓と操縦桿や機械類があり、その後ろには座席が四つある。颯太は近くにあった座席にメルを座らせると、自身もその隣に座った。イコは颯太とメルが席に着いたのを確認すると、ドアを閉めて操縦席に座る。


「早速出発するわ。急がないと追っ手が来る」


 イコは操縦桿を握った。二股に別れたゴム質の操縦桿が淡く光る。計器が動き出し、船内がにわかに慌ただしくなる。

 船が振動を始めた。心地好い振動が疲れた身体に眠気を誘う。だが、その振動は突然止まった。


「くっ、エンジンの調子が悪いわ」


「おいおい、大丈夫なのかよ?」


「すぐに良くなるはず。心配しないで」


 イコは目を閉じて機械を操作することに集中を高める。エンジンが再びかかった。しかし、またすぐに止まってしまう。イコは怪訝な顔をすると、機械類をあれこれと弄り始める。調子の悪い場所を探したり、ついには揺らしたり。だがなかなかエンジンは動かない。


「そろそろやばいんじゃないか」


「わかってる。だけどエンジンが……」


 焦り始める二人。その額にツウッと冷や汗が滴る。空気が張り詰め、機械を操作する音だけが聞こえる。

 いよいよ壊れてしまっているのかと、颯太が心配し始める頃、ついにまたエンジンが動き出した。今度こそエンジンは止まることなく順調に出力を上げていく。


「ふう、これで安心」


 イコと颯太は緊張の糸が解けた。イコは船が転移するように設定すると、座席にもたれかかる。颯太も体重を座席に預けてウトウトとした。

 格納庫に耳を破壊しそうなほどの爆音が轟いた。颯太とイコは起き上がり、窓に張り付く。二人の目に吹き飛ばされ、ダンボールのように引き裂かれた扉の残骸が飛び込んできた。二人は裂けてしまいそうなほど目を開き、扉のあった位置を見た。さきほどモニターで見た女が獰猛な光を湛えた目でこちらを見ていた。


「私の計算ではあと二十秒は時間があったはず。どうして!」


「ちくしょう、もう少しだったのに!」


 恐怖と絶望に颯太とイコの心は塗り潰された。身に染み渡る圧倒的な負の感覚に二人はただ叫ぶことしかできない。

 一方、女は船の姿を視界に捉えると右手を高く上げた。エネルギーが渦巻き、邪悪な力の結晶を形作る。それは手の平にすっぽりと収まる程度の大きさでしかなかった。だが、紫色のそれは見た目に反して強力無比な存在だった。


「ふふ……」


 女の顔に凄惨な笑みが宿った。女は愉悦に顔を歪めたまま、手の平のエネルギー弾を船に向かって放とうとした。腰を引き、手を後ろに下げる。


「お、終わりだぁ!」


「助けてぇ!」


 船の中の二人は無駄だとわかっていても背を屈めて、その時を待った。

 しかし、破滅は訪れることはなかった。二人は恐る恐る窓の外を覗く。


「ドラゴンだ!」


「メルの部下の人ね。まだ生き残っていたんだわ」


 なんと、どこからか現れたドラゴンが女を押し潰していた。颯太とイコは歓声を上げる。だが、ドラゴンは颯太たちに早く逃げろと言わんばかりにしきりに咆哮を上げていた。その様子を見たイコはすぐに逃げる準備を再開した。


「よし、何とか間に合った。クアーズ、次元ワープ!」


 イコはそう高らかに宣言した。それと同時に、船が七色の光に包まれる。慌てた女はドラゴンを投げ飛ばしてすぐにエネルギー弾を乱射するが、時すでに遅し。颯太たち三人を乗せた船は次元の狭間へと旅立っていった。


 こうして颯太たちの長い長い世界を巡る旅が始まったのだった。



 うーん、ここまでの文章を読んで見るとどうにもファンタジーらしくないなあ……。ジャンルを近い内に変更するかもです。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ