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第十三話 大混乱

 良いタイトルが思いつかない……。



第十三話 大混乱


 冒険者ギルドは混乱状態に陥っていた。受付嬢は固まり、冒険者たちは大騒ぎをしている。困った颯太は受付嬢の肩を揺すり、無理矢理再起動させた。


「ふえ……すいません! あまりにもレベルが高かったので……。えーと、次はそちらの方、測定をお願いします」


「私ですの?」


「はい、メルさん」


 受付嬢は混沌とした状況をみて見ぬ振りをして、メルの測定を強行した。にわかに場が静まり、水晶球に注目が集まる。


 水晶は赤に染まった。受付嬢はまたもや壊れた人形のように動かなくなる。


「レベル二百から二百五十……」


 ギルドの中に呆れたような乾いた笑いが響いた。もはや笑うしかないらしい。精神的に追い詰められた受付嬢はもう自棄だ、と言わんばかりにドンと水晶球を差し出した。


「さあ、測るのですよ! 何が出ても驚きませんから!」


「私はそこまでレベルはないわよ……」


 イコは口調が若干おかしくなった受付嬢に引きながらも水晶球に触れた。受付嬢や冒険者たちは固唾を呑んでそれを見守る。


 水晶球は緑に落ち着いた。受付嬢が落胆したようなため息をつく。


「レベル五十代ですね。うーん、これでも普段ならびっくりしてひっくり返るところですけど……」


 受付嬢は微妙な目つきで颯太とメルをちらちらとみた。イコはどこか不満なのか頬を膨らませた。


「別に私はレベルが高い必要はないけど……そういう態度をされると悲しくなるわ」


「ごっごめんなさい! つい本音が……じゃなかった。とりあえず登録は完了しましたので、次はギルドのシステムの説明です!」


 イコに恨みがましげな目で睨まれた受付嬢は、慌てて話題を切り替えた。書類を取り出し、ギルドの説明を開始する。


「まず、冒険者の基本は依頼の受注です。あちらを見て下さい。あの掲示板に依頼書が貼ってあります」


 受付嬢の指差した方向にはコルクボードのような物があった。そこに様々な紙が貼られている。コルクボードが掲示板で、紙が依頼書だろう。


「あの依頼書の中に気に入った物がありましたら、それを受付まで持って来て下さい。これで依頼の受注は完了です。ただし、ギルドにはランクというものがありまして……これを見て下さい」


 受付嬢は書類の中から一枚の紙を取り出した。紙の真ん中に絵と文字が書かれていて、その横にアルファベットのような記号が書かれている。


「この横に書かれているのがランクです。FからSまでありまして、依頼だけでなく冒険者にもあります。あなたがたの場合、登録したばかりですからFランクですね。……ここまででわからないことはありますか?」


 受付嬢は説明を中断した。そして颯太たちの顔を見回す。すると、イコが口を開いた。


「私たちは文字が読めないわ。だから掲示板を見ても何が書いてあるのかわからない」


「それでしたら、絵を見て下さい。また、条件を言って下さればこちらで条件にあった依頼を捜すこともできます」


「そうなの。なら安心」


 イコは納得したのか後ろに一歩下がった。受付嬢は微笑むと、説明を再開する。


「説明を続けますね。ランクが二つ高い依頼までなら依頼を受けることができます。あなた方の場合、Dランクまでですね。ランクは今の自分達よりランクの高い依頼を受けることで上げることができます。一つ上なら五回、二つ上なら三回でランクアップできます。……一応、これで主な説明は終わりました。あと細かいことはその都度聞いて下さい。ではカードを発行しますので少し待っててくださいね」


 受付嬢はまた奥に引っ込んだ。そしてすぐに戻ってくる。その手には銀色のカードが三枚握られていた。


「これがあなた方の冒険者としての身分を証明するギルドカードです。なくすと大変なのでなくさないでくださいね」


 受付嬢は颯太たちにカードを手渡した。カードには颯太たちの名前やランクが書き込まれていた。颯太たちはそのカードを手に取ってじっくりと丁寧に眺める。


「俺が冒険者か……。なんだか感慨深いな」


「冒険者に狙われたことはありますが……まさか私がなるとは思いもよらなかったですわね」


「金属? かなりの加工精度。興味深いわ」


 憧れの職業について興奮する颯太に、不思議な気分のメル。さらに純粋にカード自体に興味が沸いたイコ。颯太たちが三者三様の反応を示していると、受付嬢が最後を締める挨拶をした。


「最後に私から一言。カードを発行されたのであなた方はもう立派な冒険者です。それではどうぞ存分に頑張って下さい」


「はいっ!」


 颯太たち三人の声が見事に揃った。受付嬢は深く頭を下げる。颯太たちもそれに応えるように頭を下げ、今日のところはそのままギルドから出て行こうとした。


 だが、そうは問屋が卸さなかった。最後尾を歩いていた颯太の肩が誰かによってつかまれる。


「ぼうやっ! お姉さんたちのパーティーに入らない?」


「いいや、兄ちゃんは俺達と一緒に男のロマンを追うんだよな!」


 颯太の肩を二人の冒険者が捕まえていた。片方は色っぽいお姉さん、もう片方はゴツいオッサンだ。早くも颯太を自分達の仲間に勧誘しようというのだ。


「何よ、ダグラ! この子は先に私たちが目をつけたのよ!」


「シェイこそ何を言うか! 俺達の方が先だ!」


 二人は互いに言い争いを始めた。それはやがて後ろにいた彼らの仲間にまで飛び火する。一触即発。危険な香りが漂った。


「ふん、それならこの子自身に決めてもらいましょう。ねえぼうや、あなた仲間になるならこんなむさ苦しいオッサンたちより美人な私たちの方がいいわよね」


 シェイが勝負をかけた。颯太に甘い声をささやき、しな垂れかかる。これでもかと言わんばかりの膨らみが押し付けられ、颯太の目元が緩んだ。彼は蕩けそうな顔をしてシェイを見つめる。


 対するダグラはその様子に歯ぎしりしかできない。男がそんなことしても気分が悪いだけだ。こうして颯太がシェイのパーティーに入るのは確実かと思われたその時。無機質な声が颯太の前から聞こえてきた。


「颯太? ふざけてないで行くわよ」


「は、はい!」


「よろしい。ごめんなさいね皆さん、私たちはこの三人で一つのパーティーなの。だから勧誘は受け付けられないわ」


 颯太をシェイから引き離したイコはそう告げると、颯太を引っ張る。颯太は未だに名残惜しかったが、イコとメルの二人に引っ張られてしぶしぶ歩きだしたのであった……。



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