憧れの先輩への嫉妬心を克服できた日
ふと気付けば、今働いている会社に障害者雇用枠で転職してから2年近く経つ。
正直に言うと、入社して半年ぐらい経った頃は指導係の先輩(活動報告ではヴィーラと呼んでいましたが、本作ではYと呼ぶ事にします)に対して嫉妬心が芽生えていた。
Yはハリーポッターの映画からそのまま飛び出してきたような美貌の持ち主で人望が厚くて聡明で僕と年が近く、最初はYに純粋に憧れていて、恋人には悪いが恋愛感情を抱いた事もあった。
だが、社員の中で僕だけが障害者という事実も相まって徐々に「美人すぎてズルい」「完璧すぎて、僕が冴えない奴に見えてくる」と劣等感を感じ始め、僕自身の長所を見失ってしまったのだ。
仕事でミスをしてYに叱られた時に反抗期の中高生みたいな態度を取ってしまった事も一度あり、その後パートの主婦に「Yさんは隼人君を心配して言ってくれてるのであって、否定してる訳じゃないんだよ。」と優しく諭されたが、僕の心の中はYに対しての壁ができたままだった。
このまま永久に壁が立ち塞がっているかと思ったのだが、内心傷ついているだろうにYは変わらず親切に相手してくれた。
その優しさに触れてだんだん心苦しくなり、ある日冷静になって思い返した時に『入社した時から一番お世話になってる人はY』という事実を思い出したのだ。
子供じみた態度を取ってしまった事を恥じて反省し、他人と自分を比較するのはこれで終わりにしようと決意したのであった。
そして、昨年の11月17日。
タオルハンガーにかけてある生地をYが何かの拍子で全部床に落としてばらまいてしまい、落ちた生地を拾うのを咄嗟に手伝った時に「いつも優秀なYも僕みたいにドジを踏む時があるんだな。やっぱり僕達と同じ人間だ。」と再認識し、遂に心の壁がガラスのように音を立てて割れたのだ!
そのハプニングがなかったら、心の壁が完全に壊れる事はなかっただろう。
また、その頃は父から「ちょっとやそっとじゃ怖がらなくて、地頭が良い」「人の幸せを素直に喜べる」と長所を指摘してもらえて、恋人は僕が勇気を出して一般就労した事を尊敬していて、それもあってとても暖かい気持ちになった。
大切な人からの言葉は、冷えた心を温めてくれるものである。
心の壁が完全に壊れてからはそれまで愛想良くできなかった分を取り戻すべく素直な返答を心がけて、頼れる所はYに頼るようにし、やっと仲良くできるようになったとお互いに喜んだ。
けど、世の中何が起こるか分からないもので、今年の1月下旬にYが家庭の都合で自主退職したのだ。
Yは高級クッキーを僕達に1袋ずつ配り、それから女神のように優しく微笑んで「隼人君、今まで本当にありがとう。これからも頑張ってね。」と僕を労ってくれた。
その言葉には、僕の葛藤と成長を全て肯定するような温かさが宿っている。
他人と自分を比べずに自分自身の足で立ち、支えてくれる周りの人達を大切にしていこう。
貰った高級クッキーを大切に食べながら、僕は深く心に誓ったのだった。




