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みちのくダンジョン・ハイスクール・ボーイ~ランキングより好きに生きていいですか?何か問題でも~  作者: 白神ブナ
第4章 マタギの里

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第97話 ファーマーズ・マジシャン・ボーイ


 ―ダンジョン第5層界の最上の館。


俺が小屋に戻ってくると、トレスチャンが丁寧にお辞儀をして迎えてくれた。


「お帰りなさいませ、旦那様」


「おう、トレスチャン。留守番ご苦労さま」


「旦那様、大怪我されてます?」


「いや、別に怪我はないけど。どうして?」


「Tシャツが血だらけでございます。

それから…犬が旦那様に取りついております」


「ああ、これか。忘れてた、これはクマの血だ。

それから、この犬は俺の相方だから気にするな」


背中に乗っているアンツァは、これでも毛皮に擬態しているつもりなんだ。


「洗濯いたしましょう。Tシャツも犬もお脱ぎください」


「うーーん、そうしたいところだが、

宿屋のご主人が俺の帰りを待っているんだ。

早く戻らならないと、その人に心配かけちまうからな。

今はそこで、いろいろお世話になっていてね」


「左様でしたか。

では、その方にお礼の品をご用意しましょうか」


「さすがトレスチャン。何かいいものがあるかな」


「そうですねぇ。今朝からサツマイモを掘っていました。

ここの採れたて野菜はどうでしょうか。

それと、ナスを早く収穫しないと実が割れてしまいます」


「OK! じゃあ、この袋にサツマイモを適当に入れておいてくれ。

俺はナスを切ってくるよ」


「旦那様の帰りを待っている人がいるなら、

急いでチビトレスチャンたちに手伝わせましょう」


「そんなの俺一人で、秒で終わらせるよ」


畑に行って程よい大きさになったナスに狙いを定めて、指バッチンしていく。

パチ、パチ、パチ、パチ。

俺は畑でナスを高速で収穫した。


ワン! ウゥ…

(忍、そんな技まで身に着けていたのか……)


「旦那様、高速すぎてわたくしお方が間に合いません。

こちらはまだサツマイモを袋に入れている途中です」


「ありがと。あとは俺がやるか」


バッバッバッバッ……


サツマイモも秒でアイテムバックに入れて作業を終わらせた。


「では、引き続き留守を頼むよトレスチャン。

あーっと、それからいいかな? 

自動販売機にお茶の補充もしておいてくれ」


「それは、先日狩野さまが終えられています」


「そうか。あいつ、そんなことまでしてくれていたんだ。

それなのに、あの子を押し付けてきて悪いことしたな。

あとで電話して謝っておこう。

じゃ、トレスチャン、売り上げの管理を頼むよ」


「かしこまりました、旦那様。

いってらっしゃいませ」


俺は、野菜が入ったアイテムバックをボックスに移して、小屋の中に入った。

アンツァは毛皮に擬態したつもりで、俺の背中につかまっている。

そして、ロフトに置いてある転移石を手に取った。





松崎旅館の客室に戻ると、窓から差し込む日差しは西に傾いていた。

地下足袋を丁寧に脱いで、横に置いてため息を一つ。


「アンツァ、大丈夫か?」


ワン!

(今、敷物に擬態しているから話しかけないでくれ)


今さら何をしているんだか。

お前の存在はみんな知っているんだから、擬態する必要ないし、

そもそも、敷物になってないじゃないか。

だが、それを言ったら傷つくかと思い、優しくねぎらいの言葉をかけた。


「そうか、ご苦労さん。アンツァのおかげで助かったよ」


よこらしょっと。

俺は疲れた体に鞭打って、立ち上がった。

あれ? 俺、今「よっこらっしょ」って言った?

あああー、おっさん言葉が染みついてしまったなぁ。

学校生活が懐かしい。


もうそろそろ部屋から出ないと、宿のご主人が心配しているだろな。


客室のドアを開けて廊下に出た。

廊下で忙しく座布団運びをしていたおかみさんと目が合った。


「忍くん? 忍くん、帰って来たの?

 あんた! あんた! 忍君が帰って来たよ」


「ああ、ただいま帰りました。遅くなってすみません」


「転移石とやらでダンジョンに行って、

友達を助けたのかい? もう大丈夫なの?」


「ええ、まぁ。なんとか……」


「さい! Tシャツが血だらけだ。怪我したのか?」


「ああ、これ。大丈夫です。クマの血ですから」


「またクマと戦ったの?」


宿のご主人が駆けつけて来て、俺の姿を見て驚いた。


「そんなに血だらけになって。

さ、さ、さ、さ、さ! 病院さ行くか」


「いや、クマの血ですから」


「またクマと戦ったのか?」


おかみさんと同じことを言う。

戦ってないです。羽交い絞めにしただけです。

と、言おうとしてそのシーンがよみがえってきた。

母クマが撃たれた瞬間の記憶は、心地いいものではない。


「すみません。クマを救えませんでした」


「クマに襲われたんじゃないのか?」


「すみません……」


悲しくなってうつむいた俺に、ご主人は言った。


「何があったかわからないが、

クマを救おうとしてくれたんだな。

君の心はもうマタギだよ」


クゥーン。

(んだ、んだ)


涙と汗をTシャツで拭おうとして、俺はおかみさんに止められた。


「ダメ、ダメ、汚れたTシャツで顔なんか拭ったら。

それ洗ってあげるから、お風呂に入っておいで」


「ありがとうございます! 

おっと、お風呂に行く前に、これ。

ダンジョンの畑から持ってきました。

よかったら食べてください」


アイテムボックスから、ダンジョンから収穫してきたサツマイモとナスを山のように出してみせた。


ドサドサ ドサドサ……


「え? いいんだが? こんなにたくさん。

忍君はダンジョンで畑をやっているのか?」


その通り。

俺はダンジョンのファーマーだ。





お風呂から上がると、ご主人がやってきて、


「忍君、風呂に入っている間に電話があったよ。

草薙さん……、君のおじいちゃんから。

携帯に電話しても出ないし、

もしかしたら松崎旅館に行っているかと聞かれたけど…」


「あ、爺ちゃん。そうだった、忘れてた。

爺ちゃんが警察を呼んでくれたのに、

俺は何も言わないで、ここに帰ってきちゃった」


「忍君、もしかして田沢湖高原に行っていたのか? 

ダンジョンって田沢湖高原にあるのか?」


「すみません。俺、空間を移動できるんですよ。

気持ち悪いでしょ」


「へぇ、そうなんだ。

ダンジョン探索者って…マジシャンみたいだな」


「あんた、マジシャンだなんて失礼よ」


「だって、イリュージョンってこんな感じだろうから、つい」


おかみさんが、ご主人をたしなめる。


「いや、似たようなもんです。気にしてませんから」


「とりあえず、

今夜はここに泊まるってことでいいんだよね、忍君」


「いいんですか?」


「もちろん、今夜は祝杯だ。忍君はコーラでだけど」


「わかりました。練習ですね」


「お、言葉を覚えたな。ハハハ。

明日の朝、俺が田沢湖まで送ってあげよう。

ってか、マジシャンで空間移動できるなら、運転手は必要ないか」


「必要です。

マジックよりも、ご主人の運転する車に乗りたいです。」


「忍くん…。君みたいな孫が欲しかったなや」


明日は、松崎旅館のご主人の車で帰ることに決まった。

今日で、阿仁での修行はひとまず終わった。

クエストクリアで、30ptゲットできたし、マタギと一緒に巻き狩りをした経験は大きい。


だが、あの狙撃犯は何者なのか、謎はまだ解決していない。

とりあえず、普通に学校に行きたいよ。



「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ってくださったら


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面白かったら星5つ、

つまらなかったら星1つ、

正直に感じた気持ちでちろん結構です!


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