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みちのくダンジョン・ハイスクール・ボーイ~ランキングより好きに生きていいですか?何か問題でも~  作者: 白神ブナ
第4章 マタギの里

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第93話 親子グマー2

(遠くへはいっていない。まだその辺にいる)


その辺にいるということは、うちのペンション周辺を生活圏にしているということだ。

下手すると、クマと人間がばったり出会ってしまうかもしれない。

そうなると、俺一人の問題じゃなくなる。

事件になる前に、他に協力者を頼んでおいたほうがいい。

ここは、爺ちゃんに連絡して助けを呼ぶか。


「ごめん、狩野。ちょっと、爺ちゃんに電話するから配信切ってくれ」


「え? 配信切るの? ……せっかくハチ王子呼べたのに。」


狩野が何か言っていたが、俺はよく聞きもせずに爺ちゃんへ電話した。


「爺ちゃん、今ダンジョンの入り口にいる。

そう、あの洞窟だよ。

実はね、ここにクマがいたんだ。親子クマだよ。

今は洞窟から出て外に出かけてる。

母グマと子グマ二頭がエサを求めて動いていると思うんだ。

そう、全部で三頭」


アンツァが口をはさんでくる。


(マタギを呼んだほうがいいぞ。

忍とおらが追いかけて行っても、町に逃げるだけだ。

誰かブッパをやってくれる人はいないのか。

玉川マタギはいないのか)


「そう、警察に知らせて。

玉川マタギっているの? 猟友会でもいいんだけど。

観光客と鉢合わせしちゃったら、事件じゃん。

それは防がないと…うん、うん。

そう。じゃ、よろしく」


電話を切ってから、俺は洞窟の穴の淵から、そーっと外の様子を覗いてみた。


穴の淵から顔を出したら、目の前にクマの顔があった。

目と目があった瞬間、クマの左手がおれの顔めがけて振りかかる。

反射的にその腕をつかんで、思いっきりひねりをかけた。


グァオーーーーーー!!!!


腕をひねられたクマは反動で目の前にあおむけに倒れてきた。

すかさず、俺は肘をクマのみぞおちあたりに落とす。


ズン。


続けてクマが反撃ができないように、クマに馬乗りになり両手を踏みつけ、めちゃくちゃにクマの鼻をボコった。


ワン! ワン! ワン! ワン!

(クマは里に来るな。山の奥で暮らしてろ!)


「「痛っ! 痛い! 子供だけ……子供だけは助けて。

子供を助けてくれるなら、わたしの命なんてどうなってもいい」」


ワンワン! ワン! ワン!

(なぜ里に下りて来るんだ。ここは人間の領域だぞ)


「「山の上の方には、強いオスがいっぱい。

そこにいたら、子供が食われてしまう」」


「子供が食われるって? どういうことだ?」


アンツァがわかりやすく解説してくれた。


(オスは子供のクマを食うことがあるんだ。

自分の種を残すために子供を食べるのさ。

子供がいなくなるとメスはまた発情するからね。

だけど何故、強いオスの数が増えたのかはわからない)


「この山で異常なことが起きているのか」


俺が母グマの話を聞いてやっているうちに、一瞬の隙を見て母グマは逃げ出した。


「しまった!」


「「ママー。ママー」」


二頭の子グマたちが、母親の後を追って走り出す。


まずい、そっちに逃げたらホテルやペンションがあるエリアだ。

俺は、母グマを追った。

母グマを追う俺、その後ろにアンツァが続いた。

アンツァの後ろには、必死に母親を追いかける子グマたち。


「狩野、子グマを頼む」


「よしきた! って、子グマを追いかけてどうすりゃいいんだ?」


母グマは砂利道を通らずに、笹薮の斜面の中に入って更に先へ先へと逃げ続けた。


ガサガサ、ガサガサ……


この斜面の先は道路だ。

車が走って来て衝突でもしたら大変だ。


母グマは道路に出ると、突っ切って渡った。

横を確認すると、車が向こうから走ってくる。


「ええい、渡っちゃえ!」


よい子のみんなはマネしないで欲しい。

俺も母グマに続いて、道路を突っ切る。

車が急ブレーキをかけて、止まった。


プーーーーー!!!


クラクションを鳴らし、運転手が窓を開けて叫ぶ。


「バカヤロウ! 死にたいのか! てめぇー!」


俺は、振り向いて運転手に逆ギレした。


「そっちこそ死にたくねぇなら、窓、開けるな!」


「はぁ?!」


そこへ子グマが二頭、道路を渡り始めた。


トコトコ、トコトコ……


「おい、クマだぞ。クマ!」


運転手は、開けた窓からスマホで子グマを撮影しはじめた。

それに気が付いた母グマが、怒って猛スピードで引き返してきた。


マズい!!

母グマは、子供が襲われると思い込んで、守るために戻って来たのだ。


「早く! 窓を閉めろ!!」

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ってくださったら


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