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第9話 出演交渉されましても

 今日は爺ちゃんの軽トラに乗って、親戚の農家まで野菜を取りに行く。


「忍、友達出来て、えがったなぁ」


「最近できた友達じゃないよ。あいつとは入学からずっと友達だから」


「今まで、家に誰も遊びに来ねぇがらよ、

爺ちゃんは忍が一人でダンジョン遊びしてるものだと思ってらった。

爺ちゃんはダンジョンの事をよくわからねぇども、

忍はダンジョンが楽しいが?」


「楽しいよ。去年、教えてもらったトウモロコシがダンジョンで立派に育ってる」


「ほ、畑仕事もやるなが」


「今度持ってくるよ」


「それは楽しみだ。出来が良かったらお客さんにも出そう」


軽トラが親戚の農家に着くと、おじさんに挨拶をして野菜を荷台に運び入れる。


「坊主、一度にそんなに持って大丈夫か? 重いだろ」


この作業も筋トレの一貫のつもりで、俺がいっぺんに何ケースも持ち上げる。

それを見ておじさんは驚いていた。


「平気です」


「たまげだ。なんという力持ちだ」


その時、携帯がブルっと鳴った。

狩野からだった。


「はーい、俺です。どうした狩野」


「今さ、桜庭から電話があってさ」


「なんで桜庭がお前の携帯番号を知ってるんだよ」


「それは、僕、一年前に名刺配っていた時期があって、

女の子には誰にでも名刺渡していたから・・・・、

って話はどうでもよくてだな」


「あったなそういう時期」


「その名刺を見て、桜庭が電話してきたんだよ」


「よかったじゃん。営業の努力が実ったわけだ」


「言いたいのはそこじゃなくて、

最上の電話番号を教えてっていうんだよ」


「ダメ、ダメ、個人情報だ。絶対に教えないで」


「もちろん、そう言って断った。だけど、おまえの家に行くっていうんだよ」


「ペンション白鷺って教えたのか?」


「教えなくても知ってた」


「はぁ?」


クラスでは、寮に入らず自宅から通う生徒は目立つから、たいてい噂にのぼる。

特に俺の場合は、ペンションを経営しているので話題になっているのだと狩野は言った。


「今、家にいないから来られても困るんだけど」


「え? そうなの? 僕、道案内しろと言われて、

もう一緒に向かっているんだけど」


「待て、待て。桜庭が急にそんなに積極的に行動するとは思えない。

何か訳があるんだろ」


「大当たり! 

今、桜庭兄妹と一緒にそっちに向かってる」


桜庭兄妹?! あのハヤブサが俺に何の用だろう。

ペンションで決闘を申し込まれても困るのだが。

でも、妹が一緒ならそれはないか。


「忍、戻るべ」


爺ちゃんが軽トラのエンジンをかけて言った。


軽トラの中で、爺ちゃんは上機嫌に話しかけてくる。


「さっきの電話、友達だが?」


「うん、家に来るって。もう向かっているって」


「ほ、んだなが。へば、急いで戻らねば。確か狩野君だっけが」


「うん、あともう二人増えた」


「ほ、三人で来るなが。えがったな、忍」


「いいんだか悪いんだか、まだわからないよ」


「何言ってる。悪い訳ねべ。

友達に会ったら、ちゃんとお礼を言うんだぞ。

今日は来てくれてどうもありがとうってな」



自宅のペンションに着くと、三人はもうロビーに入ってくつろいでいた。

婆ちゃんが中へと案内してくれて、アイスコーヒーまで出してあった。


「やあ、お邪魔してるよ最上君」


ハヤブサが片手をあげて、挨拶してきた。


「ごめんね最上君・・・」


何故か謝る桜庭と・・・ヘラヘラ笑っている狩野


「急に何の用でしょう」


「商談だよ、商談。

それにしても、このペンションはいいねぇ。

アットホームな雰囲気で、とても落ち着く」


「商談? 何か売りつけに来たんですか?」


玄関に『押し売りお断り』と貼り紙をしておけばよかった。


「売りつけたりしないよ。

あえて言えば、そうだな・・・・買いに来た」


「あいにく今夜は満室でして」


「宿泊しに来たんじゃない」


「ああ・・・今取って来た野菜なら、トマトとなすと枝豆と・・・・」


「そうじゃない」


「本日の特売品は、キュウリ3本で百円です」


「買った!・・・いや、そうじゃないってば」


「遊ぶのをやめて、さっさと本題に入ってくれませんか」


「遊んでいるのは君のほうだ」


バレたか。

人気のイケメン配信者か何か知らないが、このハヤブサって男は言い方が気取っていてどうも苦手だ。

シスコンのくせに。


「お兄ちゃん、最上君に乱暴な言い方はやめて」


「あぁ、お兄ちゃんが悪かった。

あずさの王子様に乱暴な言い方して、悪気はないんだよ」


狩野はそれを聞いて突っ込んできた。


「誰が王子様なん?」


「こいつだ!」


「お兄ちゃん!」


「あ、ごめ・・・最上君だ」


俺は飲んでいたアイスコーヒーを、グラスの底に残った分までストローで吸い上げた。


ズズズズーーーーー


そのとき、頭の中でピコーンとミッションの通知音が鳴った。

右手をスッと振ってステイタス画面を確認する。


『スペシャルミッション:ダンジョン配信に参加』


困ったな。

俺は配信していないのに・・・でも参加か。

参加なら誰かの配信に混ざればいいのか。

誰か、配信者、配信者っと・・・・・


「最上、どうした? 何かあったのか?」


「あ、狩野。

ミッション通知で配信に参加って来たんだが、

配信者って誰か知らないか? 

あれそういえば、お前確か配信してるって言ってなかった?」


「最上、落ち着いて聞け。

僕は嬉しいけど、この顔ぶれで思いつく順番が違うと思う」


「配信者といったら、わたしを置いて誰がいるのかね」


ハヤブサが立ち上がった。


「ミッションが来たなら話は早い。

実は、君をわたしの配信にゲスト出演してもらいたいと言いに来たのだ」


「俺を? ハヤブサさんの配信に? 

ご冗談を。ダメですよ、そんな。

俺はハヤブサさんの足を引っ張る自信があります」


「最上君、断ってるのに自慢してて変よ?」


「いいなぁ、ハヤブサ・チャンネルにゲスト出演なんて」


狩野はうらやましがっているが、そんな急に言われても困る。


「いやマジで配信は勘弁してください。

俺って、カメラに映るの苦手だし、顔バレ嫌だから」


「だけど、今、ミッションが来たんじゃないのかね。

わたしのチャンネルを利用すれば、ミッションクリアできるぞ」


確かに。

ミッションクリア→報酬ゲット→ポイントがつく→ポイ活でウハウハ。

でも、顔が映るのが嫌だ。

頭の中で、ポイ活か顔バレかで悩んでいると、察したのかハヤブサが提案してきた。


「君には顔をAI認識できるアバターを使おう。

それから、本名じゃないハンドルネームで呼び合う」


「うーーーん、どうしようかなぁ」


「不安なら、君の友達の狩野君も一緒に出演していいから」


「え! 僕も出ていいんですか?」


「最上君がいいと言えばね」


「最上、出ようよ、出ようよ。

なあ、ハヤブサ・チャンネルに僕も出たいよ。

一緒に出よう」


「あら、男子ばかりでずるいじゃないの。

お兄ちゃん、わたしも出たいわ。

ねえお兄ちゃん、いいでしょう?」


俺はまだ答えを出していないのに、どうして外野が盛り上がっているのだ。


「最上、僕と一緒に出てくれ」


「お兄ちゃん、わたしも出して~」


「最上君、この騒ぎをなんとか止めてくれ。

君がイエスといえば丸く収まる。

た、助けてくれ! 

わたしを助けると思ってイエスと言ってくれ」


「・・・・・・イエス」


「やったー! ありがとう最上!」


「よかった、助かった。あずさも出ようね」


「嬉しい! やったー!」


俺のたった一言で喜びの最高到達点に達した三人は、互いに手を取り合い輪になって踊り始めた。

この賑やかな歓声に驚いて、爺ちゃんと婆ちゃんがロビーに顔を出す。


「あら、あら、楽しそうだごど。

忍、友達がこんなに楽しそうにしてくれて、

本当にえがったな~」


「うん、たぶん・・・えがった」



「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ってくださったら


下にある☆☆☆☆☆から、

ぜひ、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、

つまらなかったら星1つ、

正直に感じた気持ちでちろん結構です!


ブックマークもいただけるとさらに泣いて喜びます。


何卒よろしくお願いいたします。


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