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みちのくダンジョン・ハイスクール・ボーイ~ランキングより好きに生きていいですか?何か問題でも~  作者: 白神ブナ
第4章 マタギの里

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第89話 ショウブー2

本日、二頭目のクマとのご対面だった。

さっき無線で、もう一頭いるって、こいつの事だったんだ。


ウォーー!


クマは左手を挙げて、鋭い爪で襲い掛かかってくる。

その瞬間、マタギのおじさんたちが言っていたことを思い出した。


『クマは左手で顔を襲ってくるから、右の頬の肉をごっそり剝がされるおな……』


俺は、無我夢中でクマの左手をつかんでそのまま上へ捩じり上げた。

鋭い爪はかわせたが、牙をむいて大きく開いた口が目の前にあった。

こわっ!


「いい歯並びです。虫歯もありませんね」


恐かったが、歯科医になった気分でとりあえず挨拶をした。

もちろん、そんな冗談は、当然通じる相手ではない。

今にも俺を食おうと大きな口を開けて襲い掛かる。

クマは空いている方の左手で俺を押し倒した。


ノマド・キャンパーのビリーさん、ごめんなさい。

クマみたいだなんて思ってしまって。

本物のクマはもっとデカくて、重くて、そして臭い。


くっそ、ついに俺もこれまでか…


今、本物のクマに押し倒されて、俺は死を覚悟した。


ふと横を見ると、このクマに襲われたのか、倒れている人らしきものが見えた。

その人の上には、枯れ葉がかけられている。

もしかして、これ、死体?

クマが自分の所有物として枯れ葉をかけて隠しておいて、あとで食うつもりなんだ。


俺も、こいつに食われるの? それは嫌だ。

もう破れかぶれだ。

生き残るために出来ることはなんでもやる。

そうだ、スキルでなんとかならないか?

必死でスキルを唱えてみる。

これで脱出できるかどうかはわからないが、今出来ることはそれしかない。


「環境応答、発動!」


ズン!


体が地面に沈んで溶け込むような感覚がした。

クマは一瞬、動きを止めて地面を覗き込んでから、あたりをキョロキョロと見回して俺を探している。

クマを押さえている俺の両腕が透明になっている。

どうやら、俺の体は地面と同化して、見えなくなったようだ。


その時、クマを背後から襲いかかる影が見えた。


ウゥ……ワン!ワン! ワン!ワン!


アンツァだ。


クマは突然の犬に驚いて、俺の体から離れた。

その一瞬の隙に、俺はクマの下から逃げ出し、急いで近くの木に登った。

アンツァが、クマの首筋に噛みつく。


グオーーー


ワン!ワン! ワン!ワン!

(忍、大丈夫か? 木に擬態してるのか? 完璧じゃん)


へ? 俺は、地面から今度は木になったらしい。


首筋を噛まれたクマは怒って、二本足で立ち上がった。

この高さだと木に登った俺とクマの顔が同じ高さになっちまう。

そう気づいた瞬間、俺はクマの頭に飛び乗った。

両足でクマの首に巻き付いて固定させ、それから両手で思いっきりクマの首をねじった。


グエーーーーー!


ワン!ワン! ワン!ワン!

(忍、今度はクマと一体化してるのか? 見分けがつかねぇし、すげぇ、)


「俺が見えてないのか、アンツァ」


「「ううう……何かがおかしい、何かが首にまとわりついている…」」


クマの言っている言葉がわかった。

クマにも俺の姿は見えていない。

だが、太い首をひと思いにねじるには無理があった。


何故かバグベアとの闘いと同じ感覚がよみがえった。

クマの動脈が激しく波打っている鼓動が伝わってくる。

脈動、これだ。

こいつも生きているんだ。


クマは両腕で俺を払い落とそうとブンブン振り回し、そのまま地面に四つ足に戻った。

クマのあごの下にぶら下がる形で、俺は必死にしがみついていた。


「「人間の匂いがする。お前、忍びの者か」」


「忍びの者じゃない。しのぶだ」


「「マタギじゃないのか」」


「ちがう」


「「俺を殺すつもりで来たのか」」


「わからない」


「「ひと思いにできねぇのなら、余計なことはするな。

下手なやつにやられて、死ぬまで苦しみ続けるのはお断りだ」」


「どういう意味だ」


「「俺の母親も、兄弟も、人間の鉄砲に撃たれて苦しみながら死んだ」」


クマは、哀願するような瞳をしてつぶやいた。


「………それは、辛かっただろう」


「「同情はいらない。わかってる、俺はタガが外れている。

人間にタガを外されたんだ」」


クマの口はそう言いながら、首にぶら下がる俺を食おうと左右に揺れる。


「人間が憎いか?」


「「いや、全然」」


「じゃあ、なぜ人を襲うんだ」


「「生きるために食った。人間だって生きるために食うだろ?」」


「俺は……生きるために食っている自覚がない」


「「じゃあ、俺より邪悪だな」」


「そうかもしれない。」


「「それなら、お前は俺の餌になれ。その邪悪な魂を一発で奪ってやろう」」


グアーーーーー!!


クマの牙が俺の目の前だ。


「俺、美味しくないから。汗だらけで臭いから」


「「ってか、見えねぇ! 姿が見えない奴に向かって口を開ける気にもならん。

おうおう、本物のマタギはどこだ」」


「そうだ。俺を食ったら、腕のいいマタギには会えなくなるぞ」


「「魂を山に返してくれるマタギを知っているのか」」


ワン!ワン!ワン!ワン!

(おらがマタギだ。おらとショウブしろ)


「「お前たち、一体何者なんだ?」」


クマが一瞬ひるんだ隙に、俺は首の攻撃から鼻への攻撃に変更した。

つまり、俺は鼻に嚙みついた。


ガブッ


鼻を攻撃されたクマは、よほど痛かったのか俺を振るい落とし、四つ足で逃げ出した。


それをアンツァは吠えて、吠えて、追い込んでいく。

追い込んでいく方向は、猿橋さんのところだ。

さすが、アンツァは元伝説のマタギ。

アンツァの行動は勢子そのものだった。

猿橋さんがいるはずの場所。

つまり、一頭目のクマの場所まで吠えながら追い詰めて行った。


ワン!ワン!ワン! ワン!ワン!ワン!


アンツァの鳴き声に、マタギ全員が、気が付いた。

猿橋さんは、後ろにいるはずの俺がいなくなったことで、全てを理解したかもしれない。


アンツァがクマを追いかけて行った先で、銃声が山の中に響いた。


パーン! 


「ショウブ! ショウブ!」


猿橋さんが叫ぶ声が聞こえる。


本日二度目のショウブ。

マタギ仲間がそれを聞いて一斉に同じ言葉を繰り返し、仕留めたクマのもとへ急斜面を駆け下りて行く声が聞こえてきた。


「ショウブだ! ショウブ! ショウブ!」


俺はよろけながら沢を渡って、猿橋さんたちがいる場所まで急いだ。


「環境応答、解除」


俺は林の中を歩き、やっと猿橋さんたちがいる場所に戻った。

現場にたどり着いたときには、クマは一発で即死しうつ伏せで倒れていた。


クマが望んだとおりの死に方だった。

苦しむことなく、息絶えてクマは喜んでいるだろうか。


マタギのおじさんたちは、倒れたクマを見ながら驚いていた。


「なんと、これはデカいなや! どうやって運んだらいいのか」


「このクマ、鼻から血出している。噛まれた跡があるぞ」


猿橋さんが俺に気が付いて声をかけてくれた。


「忍くん、無事だったか」


「坊主、傷だらけじゃねえか。何があった」


「このクマと一戦交えてました」


「冗談だべ」


「このクマの寝床に、遺体がありました。

警察に連絡して回収してあげてください」


「何、人食いクマと戦ってたのか」


「みたいですね」


「忍くん、これからこのクマを解体するけど、大丈夫か?」


「俺には気を使わなくて大丈夫なんで、しきたり通りにやってください。

しきたり通りに、どうか…どうか…………」


そこから先が言葉にできない。




「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ってくださったら


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つまらなかったら星1つ、

正直に感じた気持ちでちろん結構です!


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