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みちのくダンジョン・ハイスクール・ボーイ~ランキングより好きに生きていいですか?何か問題でも~  作者: 白神ブナ
第4章 マタギの里

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第88話 ショウブ

「今、一発撃ったぞ」


「仕留めたんですか?」


「しっ!まだ、声を出すな。手負いかもしれない。

手負いクマだとしたら、こっちに来ると危ない」


こっちに来るって、なんで?


猿橋さんは、ライフルに弾を充填。


カチャカチャ


緊張感が走る。

声を出して山を登って来たせいの息切れなのか、緊張しているせいで息切れしているのか。


はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…


沢の清らかなせせらぎの音、

はぁはぁと弾む息づかい。

猿橋さんは、じっと沢から動かずにライフル銃を構えて立っていた。


ふと、横を見ると藪の中に黒い切り株を見つけた。

今なら、ちょっと休憩して座れる。

失礼して、休ませていただきますよ。

俺は、切り株に腰かけた。


突然、黒い切り株は立ち上がって俺に向かって襲い掛かって来た。

やべっ! 切り株じゃねえよ! 手負いのクマか?


気が付いた時には俺はクマに押し倒されていた。

なんで手負いのクマがここに来るんだよ!


無我夢中で俺は右足でクマの体を持ち上げ、そのまま巴投げの体勢に。


「とおりゃーーーーー!」


巴投げされたクマを狙って、猿橋さんのライフル銃が火を噴いた。


パーーーーーン!!!!


猟銃の乾いた音が、山中に響きこだました。


「ばがけ!(バカヤロウ)」


猿橋さんが、何よりも先に俺を大声で叱った。

突然の出来事に、無我夢中で巴投げをした俺だが、ショックで寝転がったまま動けない。


それから、猿橋さんは仲間たちにクマを仕留めたことを知らせるため、無線でマタギ言葉を叫んだ。


「ショウブ! ショウブ!」


これでクマとの勝負はついたかと思った。

だが、無線の高橋さんからは「もう一匹クマがいる」という情報が聞こえてきた。


「……、了解だ。忍くん、ケガはないか? 

腰抜かしている場合じゃない。もう一回声を出していくぞ」


「あ、あの、このクマはどうすれば……」


「とりあえず、後で引挙げるためにロープで縛っておこう」


猿橋さんは手慣れた様子で、クマの首から脇にかけてロープを回して縛り付けた。


「ごめんなさい。俺、勝手なことしちゃって」


「いいから、ロープの反対側持って。手伝うんだ」


「すみません……」


「手負いのクマは、死に物狂いで襲ってくるからな。

やたらに近づくんじゃない」


猿橋さんの銃で急所を射抜かれたクマは、ロープで縛あげられて大の字になっている。


「君に言いたいことは山ほどあるが、今は説教している暇はない。

勢子せこの声出し、いいか? 行くぞ!」


えええ! まだ続くのか。もう声が枯れているんですけど。





「この先は、どこまでも笹薮だからな」


「はぁーはっ! はぁーはっ! 喉からじゃなく腹から声を出す!」


「はぁーはぁーはぁーはっ!」


笹薮が密集して思うように登れない。


よいしょ、よいしょ。よーいしょっと。


俺は、かなり疲れてきた。

さっきの巴投げで、体力はそうとう消耗していた。

かれこれ二時間は、こうやって声を出しながら、山の中を歩いている。

これが勢子せこの仕事か。

想像していたよりも、かなりキツい。


猿橋さんは無線でシカリの高橋さんに連絡した。


「また新しい足跡を発見。

沢から上がって来たところから右の方に向かってる。

はぁ、はぁ、はぁ、……沢の縁をずっと登りながら向かっているぞ」


笹薮の斜面を大声出しながら進む。

息を切らし、笹をかき分け、もう限界だ。

これだけ追い続けても、上の方からの銃声は聞こえてこない。


「はぁ、はぁ、……それにしてもおかしいな」


猿橋さんも俺も、肩で息をしながら立ち止まった。


「これだけ追い上げているのに、銃声が鳴らない。

クマはブッパの方に行かずにズレたのかもしれない」


猿橋さんも疲れ果てて、沢の横の斜面に寄りかかりながら言った。

ずっと沢を渡って追い上げてきたから、体じゅうびしょ濡れだ。

それでも、もう一度、気を取り直して勢子せことしての役割を続けようとした時だった。

高橋さんから無線が入った。


「クマはズレた。さっきの一頭で良しとしよう」


「了解。さっきのクマのところへ戻ります。

クマはロープで縛っていますから」


猿橋さんと一緒に来たルートを通って、さっきのクマの地点まで引き返すことになった。

もう、声は出さなくてもいいのか。

それでも、笹薮の斜面を再び登ったり降りたりするのはキツかった。

猿橋さんの背中が徐々に遠くなっていく。

いつの間にか、俺は猿橋さんからだいぶ離されて、遅れて置いて行かれてしまった。


足がもたついてうまく進めない


ズルッ


右足が滑って、俺の体は斜面を転がり沢まで転落した。


バッシャーン。


落ち着け俺。

大丈夫、怪我はしていないようだ。


沢から落ちてきた斜面を見上げる。

猿橋さんはこの事故に気づいていないかもしれない。

俺が落ちた音も、沢の水音に消されているからだ。

アンツァ、頼む、この異変に気付いてくれ。


必死に起き上がって斜面を登ろうとしたとき、


うっそーーーーーー!


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


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