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みちのくダンジョン・ハイスクール・ボーイ~ランキングより好きに生きていいですか?何か問題でも~  作者: 白神ブナ
第4章 マタギの里

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第83話 肉を食べるということ

 その日の夕食は、うさぎ鍋だった。


「うさぎって、あのピョンピョン跳ねるうさぎですか?」


初めてのジビエ料理に戸惑う俺に、爺ちゃんは説明した。


「爺ちゃんの子供のころは、ウサギは冬のごちそうで、重要なタンパク源だったで」


宿のご主人がそれに付け足して説明。


「戦後の貧しい時代、雪深い山里で、手に入る肉といったら自分たちで狩った獲物だけ。

そのなかでもウサギは簡単に捕獲出来て、大量に手に入ったものです」


爺ちゃんは、昔は正月にうさぎ食べていたという。


「懐かしなや。忍、食ってみろ。牛とか豚よりも、しったけ(すごく)うまいぞ」


恐る恐る、お椀に取り分けられたうさぎの肉を口に運ぶ。


「めっちゃ、うまいじゃん」


「んだべ」


普段は、スーパーでパックにきれいに包装された肉しか食べたことがない。

そのスーパーで売っている肉でさえ、パック詰めになる前は生きている牛や豚だったわけで、誰かが殺さないと精肉にはならない。


何も意識せず、誰かが殺してくれた動物の肉を美味しい美味しいと言って食べている。

俺もそうだ。特に、和牛の焼肉は大好きだ。

動物の命を絶つシーンを見てしまったら、肉なんか食えなくなるだろ。

って、そう言う人もいるよな。

でも実際、パック詰めされた肉の向こうに、殺してくれた誰かがいるんだよなぁ。

マタギが獲ってくれたうさぎ肉を、俺はありがたくいただいた。


そこへ、宿のご主人からの紹介で、この道五十五年、ベテランのマタギ高橋さんが俺たちのテーブルに着いた。


「草彅さん、お久しぶりだなや。

今日はお孫さんと一緒に来て、マタギについて教えて欲しいっていうので、来たんだども」


「おお、ゲンさん。お久しぶり。これだ、これが俺の孫の忍だ」


「はじめまして、最上忍です」


「最上? 草彅でないんだ」


「最上は娘の嫁ぎ先の苗字でよ。娘の子ども。外孫だ」


「ああ、なるほど。はじめまして、高橋源太郎です。

お爺ちゃんとは昔からの友達です」


「まず、練習すべた。なあゲンさん」


爺ちゃん、練習って? 今からマタギの練習始めるのか?


「爺ちゃん、もう夜なのに、今から何の練習するの?」


「ハハハハハ、練習っていうのはな、飲み会のメンバーが揃う前に、

先にお酒を飲んでおくことを練習っていうんだ」


「そういう練習かぁ。なんだ、びっくりした」


「忍くんは、未成年だからコーラで練習しような」


そのあとも、爺ちゃんの友達が数人やって来て、本格的な飲み会になった。

もう、だれがマタギで、だれが同級生なのか、ごちゃごちゃで俺にはさっぱりわからない。

っていうか、爺ちゃんは今夜ここに泊まるつもりなんだな。


「クマなの、昔と違って普通に家の横で見るで」


「んだ、道路渡るクマの親子は、しょっちゅう見るなや」


「俺が、リンゴの木の世話をしていて、横を見たら、

クマが二本足で立ってりんご食ってらっけで」


「いるいる! 普通に里に下りて来てるなぁ」


「このあいだは、車で走っていたらバス停にクマいたっけ」


「クマがバス待ってらった?」


「まさか」


笑いながらクマの話で盛り上がっている。


俺のペンションの近くでも、見ることはあるが、ツキノワグマは基本的に臆病だから俺が通ると山の中にさっさと逃げていく。

でも、おじさんたちの話に出て来るクマは、人間をあまり怖がっていない感じがした。


「クマって、怖くないんですか?」


俺は素朴な疑問をぶつけてみた。


「怖いよ、こえー、こえ。クマが怖くなくなったら、マタギとして終わりよ」


「俺みたいな、一般人がクマに出くわしたらどうすればいいんですか?」


「何もしないことだな。刺激すると襲ってくるからな」


「襲うって、どんな風にですか?」


「まず、顔を狙ってくる。

クマは左手で顔を殴りにくるんだけども、あの鋭い爪だ。

顔の右側の肉をごっそり持っていかれるど」


「自分の目玉とか入れ歯を持って逃げてきた人もいたっけな」


ぐぇ、ホラーじゃん。


「ツキノワグマは臆病だから、自分だって人間に会いたくねえのよ。

だから鈴とかラジオをの音で、ここに人間がいますよとアピールすれば、普通は出てこない」


「普通はな。でも最近は、人間慣れしているクマもいて、

それだけじゃ逃げない奴もいるけどな」


どうするんですか、怖いじゃないか。

爺ちゃんたちが、面白おかしく話して笑うものだから、俺も空気を読んで笑っておいた。


「ハハハ」


アンツァが薄目を開けて呟いた。


(何がハッハッハだ。山の厳しさに弱音を吐くなよ)


アンツァ、お前も行くんだよ。


(任せとけって。山に猫はいないから大丈夫だ)




そのあとも、爺ちゃんたちの話は盛り上がって終わらなかった。

酒盛りはまだまだ続くので、俺は先に部屋に戻ることにした。



その日の夜は、アンツァを連れて同じ部屋で寝た。


ところが、夜中に爺ちゃんが部屋に戻って来て、隣の布団で寝始めると、

そのイビキが物凄くて、俺は眠れない。

しょうがないから、部屋を出て、廊下で寝ることにした。


(おらも、廊下で寝る)


アンツァにとっても、あの爆撃音は耐えがたいらしい。


俺はあくびを漏らし、廊下の床にアンツァと一緒に寝っ転がった。

廊下の窓、山の上に月が現れる。

この月を、クマも見ているのかなぁ。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


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