第73話 ハチ王子パトカーに乗る
朝早く、うちのペンション白鷺に、田沢湖交番からのパトカーが来た。
玉川温泉に現れたという魔物を討伐するために、俺を拾ってから現場に向かうためだ。
警察車両に乗るなんて寒風山の事件以来だなぁ。
ちょっと、ワクワクしながらエントランスに出て、二人の警察官を出迎えた。
「ハチ王子こと最上忍さんのお宅ですか?」
「はい、そうです」
「最上忍さんは、いらっしゃいますか?」
「はい、俺ですが」
「えっと……、あの、お父さんとか、お兄さんとかいませんか?」
「父は東京です。兄はもともといませんが」
「他にご家族の方は?」
「爺ちゃんと婆ちゃんです」
「……、あの、もう一度確認します。
ダンジョン探索者レベル999のハチ王子さんというのは…」
「だから、俺です」
二人の警察官はお互いに顏を見ながら、小声で何か話してもめはじめた。
「おい、探索者って大人じゃないのかよ」
「聞いてないよ。こんな少年一人で大丈夫なのか」
何だよ、知事から学校に依頼があったというから、俺は行く気で待っていたんだぞ。
警察と知事の間で情報共有されていないのか。
「俺、一人じゃまずいんですか?」
「ええ、あの、君みたいな少年一人で山の中に入るのは、あまりに危険すぎるのでね」
「ああ、なるほどそうですね。じゃあ。やめましょうか」
「いや、そうじゃなくて、君はライフル銃とか持っていないよね」
「そうですね。未成年ですから武器は持てないですよ。
でも大丈夫、魔物はほとんど素手で倒すんで」
「素手で? ハハハ、冗談でしょ。
他に一緒に行く仲間は、いないんですか?」
「犬を連れて行こうかと思っているんですけど、いいっすか?」
「あのね、遠足に行くんじゃないんだよ」
「はい、わかっています。魔物の討伐ですよね」
「犬は猟犬ですか?」
「さあ、わかりません。秋田犬って猟犬になるんですか?」
「秋田犬なら、昔は猟犬だったみたいです。
ってか、それも知らないで連れて行く気だったんですか」
「犬が連れて行けって言うので」
「ううう……君と話していると頭が痛くなるな」
「よく言われます」
爺ちゃんと婆ちゃんが、リビングから出て来て、警察官に挨拶をした。
「あやぁー、どうも、お世話になります。
うちの忍をよろしくお願いします」
「そんなにお願いされてもねえ。
お孫さんは本当にダンジョン探索者レベル999なんですか?」
「さあ、レベルのことはわかりません。
ですが、わたしが毎日トラップを仕掛けて鍛え上げているので、
うちの孫は最強のダンジョン探索者ですよ」
「はぁ」
「どうか、よろしくお願いいたします」
爺ちゃんと婆ちゃんは深々と頭をさげた。
「忍、これ、おにぎり持っていきな。
中身は忍の大好きなぼだっこ(塩サケ)と筋子だ。
警察の方々の分も握っておきました。
よかったら皆さんで、お昼に召し上がってください」
「ああ、どうもすみません」
「じゃ、忍、がんばってこいな」
「うん、行ってきます。
さぁ、おまわりさん、行きましょう」
俺と秋田犬のアンツァは、パトカーの後ろに乗った。
*
パトカーに乗っている間、どの場所でどんな事故があったのか、警察官が説明してくれた。
玉川温泉周辺の林の中で、山菜取りに入った人たちが、唸り声を聞いたりリュックを持っていかれたり、という被害届が出ているとのこと。
クマかと思っていたが、目に見えない者が動いているようだったと。
腕を切りつけられたとか、殴られて出血したとか、怪我人が出ているが、今のところ、幸いなことに犠牲者はいないそうだ。
ただ、そのエリアはクマ目撃情報もあるため、目に見えない魔物とクマの両方に注意しないと危険であると。
「玉川温泉は温泉からの有毒ガスが発生しているところが、たくさんあるからね。
そこも気を付ける点です」
「有毒ガス?」
「いまのところ、バス停付近に集中しているから、そこを避けてください」
「はーい」
「それから、ここ最近はツキノワグマによる被害が多いです。
特に、玉川地区には積極的に人を襲う個体も存在しているため、
玉川地区の国有林は入林禁止になっています」
「積極的に人を襲うって何ですか?」
「鈴やラジオ等という一般的な対策では、
鉢合わせを防止することができないということです。
繰り返し事故が発生する危険性がとても高いんです」
「ヤバくないですか。それ聞いていませんよ」
「だから、君で大丈夫なのかと、わたしたちは心配しているんです」
アンツァは知っているかな。
知っているわけないよな、犬だし。
何に頼ろうとしていたんだ俺は。
ワン、ワン
(知ってるよ。んだから、おらを連れて行けって言っているんだよ)
アンツァ、知っていたのか。
ワン、ワン
(山のことと、クマ関することはおらが教えるから安心しな)
アンツァ、お前って俺の友達の狩野ってやつになんとなく似ているな。
警察官が、後部座席の俺とアンツァを見て言った。
「犬が何かブツブツ言っているようですが、大丈夫ですか?」
クゥーン…
(大丈夫です。お任せください。そう言え)
「大丈夫です。お任せください」
クゥーン…
(おらが言ったことは、忍がしゃべったことにするんだ。
これから、いろんなアドバイスや指示を出すからな。全部、忍が言ったことにするんだぞ)
「これから、いろんなアドバイスや指示を出すからな。全部、俺が言ったことにするんだ」
ワン!
(バカ! そこは言わなくていい)
「バカ! そこは言わなくていい」
警察官は、機嫌を損ねて、後部座席を睨んできた。
「大人に向かって、バカと言わない方がいいぞ」
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