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みちのくダンジョン・ハイスクール・ボーイ~ランキングより好きに生きていいですか?何か問題でも~  作者: 白神ブナ
第3章 レベル999(スリーナイン)、知らんけど

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第63話 作戦会議

「父さん、これが金塊です」


 アイテムボックスから金塊を取り出して、ダン技研会議室の机に置いた。

会議室には、父さんと技研の職員、そして俺とハヤブサが机についていた。


「最上室長、申し訳ございません。

わたしが一緒にいながら最上君を危険な目にあわせてしまいました」


ハヤブサが、父さんに頭を下げて謝罪した。


「とんでもない。

ハヤブサ君のおかげで今回の事件は解決できたんだ。

わたしから礼を言うよ。ありがとう。

では、これは密輸の証拠品として押収しておく」


「俺がこんなものをダンジョンで見つけたばっかりに、

とんでもない事になってごめんなさい」


「拾ったと嘘をついたのは良くないが、

忍が発見しなかったらもっと大変なことになっていた。

あまり気にするな」


それにしても、エバンスはどうして金塊を密輸しようとしていたのか。

俺にはよくわからない。

密輸して一体どんな得があるのだろう。


「どうして、金塊は密輸の対象になるの?」


「金塊が悪いわけではない。

金塊でも税関を通して輸入すれば問題ない。

ただ、たいていが税関を通さず密輸されるのは何故だと思う?」


「何かメリットがあるからだよね」


「そうだ。それは、消費税分が儲けになるからだよ」


あ、夏休みの課題でおれが適当に手を抜いた税に関することだ。

あの時、もっと勉強しておけばよかった。


「たとえば、海外から2000万円分の金塊を、

代金通り2000万円を支払って購入しました。

これを日本国内に持ってくると消費税200万円がかかるよね。

だが、税関を通さずに、海上取引したり、密輸すれば

200万円の税金を支払わなくて済む。

そうして手に入れた金塊を、国内の貴金属店に売る時は

消費税分を上乗せして売ることができる。

2200万円で売るんだよ。

つまり、200万円の儲け。


たかが消費税分じゃないんだよ。

たとえば、金塊が140キログラム、

時価約18億円が密輸されたら?

そう、1億8千万円の儲けともいうが、

それは1億8千万円の脱税になるんだ」


父さんの説明を聞いても、桁が大きすぎて意味がわからない。


「ま、そういうことだ。

これからいまだかつてない大作戦にとりかかる」


「大作戦って?」


「今まで、ダンジョン内で密輸品がみつかった事例がない。

ダンジョンにある座礁船は、

日本に向かう予定だったことは調べがついているんだ。

日本の関税局が、

ダンジョン内の密輸船の金塊を押収することになった。

これから裁判所から令状を取り付ける」


押収するとしても、物はダンジョンの中、しかも座礁した小型貨物船。

どうやって押収するというのか。


「押収には海上保安庁と防衛省と連携をとって行う。

ダンジョン内部に入り、海上で座礁船内に乗り込むには、

探索者資格のある潜水士を10名。

また、ダンジョン内の陸上で運搬作業するために、

探索者資格のある自衛隊員10名。

そして、ハヤブサ君と忍はダンジョンの地理案内をして欲しい」


押収の作戦を父さんが、俺とハヤブサにするのは理由がある。

誰よりも、ダンジョン第5層界を知っているのは俺たちだからだ。


「エバンスは、発狂するほど怒るでしょうね」


ハヤブサが腕を組みながらそう言った。


「なぜエバンスをすぐ逮捕しないの?」


俺の素朴な疑問にハヤブサは答えた。


「消費税法違反として、取り締まりを受けるくらいかな。

消費税をエバンスが払えば、金塊はエバンスに戻される」


「え、なんだ、それで終わり?」


父さんは、そこが問題だと言って付け加えた。


「脱税者が外国人で、場所がダンジョンでと

複雑に問題が絡み合っている。

すぐに手は出せないが・・・

今後は、増え続ける密輸に関して

刑事裁判によって没収の適用を検討中だ」


「没収されたらどうなるの?」


「没収の判決を受けた場合、没収されたものは国庫に帰属する。

そうなれば、エバンスが泣いても叫んでも手元には戻らない」


だが、金塊を没収するには、いろんな手続きがあって時間がかかりそうだ。

その間にエバンスは消費税を払って取り戻そうとするだろう。


 難しい問題は父さんに任せておこう。

俺は、何としてでもダンジョン北部の開発を止めたい。

資金源を断つ以外の方法はないか。

それも、いますぐ行動出来て、効果があるやつ。


「エバンスを法的にどうするかは、最上室長にお任せします。

原点に戻りましょう。

そもそも、エバンスによるダンジョン北部開発が、

最上君行方不明事件の発端です。

わたしに、提案させてください」


ハヤブサは、父さんから俺の方に向き直して、話を続けた。


「ダンジョン第5層界を多くの人に知ってもらおう。

ちょうど住民も増えてきたことだし、

あそこに家を持っているのは最上君だけじゃない」


「忍、家って何のことだね」


「ああ、俺が自分で建てた小屋がダンジョンにあるんだ。

知らなかった? 爺ちゃんから話を聞いているかと思っていた」


「わたしは聞いていないぞ」


ハヤブサが間に入って、父さんの関心を別のほうへとずらす。


「実は、いいものがあるんです。

最上君が、ダンジョン第5層界でドラゴンに乗って

上空から中継した動画が残っているんです。

配信するつもりじゃなくて、間違って配信したのですが、

あの配信はもの凄い反響があったんです。

その後、間違って配信したものだから非公開にしました。

ところが、リスナーさんたちからもう一度見たいと

要望が今も止まらないんですよ。

最上君、あの動画を公開してもいいかい?」


「もう、身バレしちゃってるし、公開してもいいです」


本当は俺も見たかったんだよな。


あの動画は非公開になったので、俺も見たことがなかった。

どんなコメントが寄せられているのかも知らない。

コメントはハヤブサしか読んでいないのだ。


「開発を止める方法をいろいろ考えました。

クラウドファンディングや、チャリティーコンサートで

資金を集めてから開発反対運動をしようかとも思いました。


けれども、ダンジョン探索者がやることは配信でしょ。

幸いあの第5層界は、ハブ空港のような存在で、

いろんな国からの探索者がいる。

第5層界で各探索者が配信したら、

おもしろいことが起こりますよ」


「ダンジョン第5層界が世界中に配信されるというのか」


「そうです。第5層界の素晴らしいところを、全世界に配信するんです」


「それじゃ、もう俺の秘密のダンジョンじゃなくなるんだね」


「もうなくなっているよ」


ハヤブサにそう言われて、

俺はエバンスに言われた言葉を思い出した。


『最上忍くん、

君の理想通りにダンジョンを快適化しようなんてのは、傲慢というんだよ』


その通りだった。


「第5層界にいる探索者が配信で、

『自然を破壊する開発はやめよう』と、生の声を伝えるんだ。

特に、ランク1位レベル999(スリーナイン)の最上君が声をあげれば一番効果がある」


「すみません。俺、配信器材持ってないんで」


「君が配信する必要はない。

今まで通り、それぞれの配信者のチャンネルに

ゲスト出演すればいい。

その方が、世界中に拡散しやすい」


あ、そうか。

俺の配信なんて誰も見ないか。


「北部に集まっているという高齢の探索者たちだって、

ギター弾いたり歌をうたったりできる人、

大工仕事が得意な人、畑仕事が得意な人

いろんな得意を配信すればいいんだ。

配信器材がなければ、誰かに配信してもらう。

それぞれ、自分の得意なことを披露しながら、

第5層界を紹介するだけだ。

それだけで世論を動かすことが出来る」


なんだか面白そうだな。


「ハヤブサ君、忍をよろしくお願いします。

エバンスから忍を守ってほしい。

これは室長の命令じゃない、単なる親バカの頼みだ」


「お互い力を尽くしましょう」


俺は、二人を見て感心していた。

頭がいい人ってかっこいいなぁ。

俺もこんな大人になりたい。


「最上君、言っとくけど、他人事じゃないからな。

君が主役なんだぞ。しっかりしてくれ」


あれ、読まれてます?



「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ってくださったら


下にある☆☆☆☆☆から、

ぜひ、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、

つまらなかったら星1つ、

正直に感じた気持ちでちろん結構です!


ブックマークもいただけるとさらに泣いて喜びます。


何卒よろしくお願いいたします。


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