第62話 容疑者の身柄を確保
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「おい、立て」
警察官が俺を立たせる。
周囲に大勢の警察官と機動隊が集まって来て、俺は完全に包囲された。
「おい、護送車まで連行しろ」
俺は警察官たちに囲まれて護送車まで歩かされた。
護送車の周辺は野次馬たちが道路わきの規制線から出ないように、
そこにも警察官たちが並んでいた。
その隙間を縫うように、カメラマンたちがフラッシュをたく。
眩しい。
護送車の扉が開いて、俺が足を踏み入れようとしたとき、
「忍! 忍じゃないか!」
父さんが俺を見つけて名前を呼んでくれた。
ごめんなさい、父さん。
あなたの息子は犯罪者になりました。
「何やってんだ、お前ら!
これはわたしの息子だ。制服を着ているじゃないか。
どこからどう見ても高校生だろが!
おめぇら、どこに目をつけとるんじゃい!」
父さん?
こんなに怒っている父さんを見たことがない。
俺を身柄確保した警察官を烈火のごとく怒っている。
言葉も極道の人みたいで、どっちが悪者なのかわかりゃしない。
「む、息子さん?」
「この少年が行方不明者のハチ王子だ。
このバカたれがっ!」
「申し訳ありません」
「おい、間違いだってよ」
「誰だよ、一番先に誤認したやつ・・・」
警察官たちがざわざわしている。
俺は行方不明者になっていたのか。
ビュッ!!
俺の後頭部めがけて何かが飛んでくる気配を感じた。
と同時に右手でそれをつかみ取った。
「どうした忍」
「ああ、たぶん蜂。捕まえた」
「素手で蜂を捕まえるるな。危ないだろ。
手のひらは大丈夫なのか。蜂は死んだか?」
「動いていないから、たぶん」
俺は握っていた右の拳をそっと開けて見た。
「蜂じゃないな。父さんこれ何?」
蜂ではない黒い塊が手のひらにあった。
「ん?・・・ひぇっ! 銃弾じゃないか!
忍、何をつかんでいるんだ。
危ない、とりあえず早く護送車の中へ隠れろ!」
スナイパーが発砲した銃弾だろう。
慌てた父さんに押し込まれるような形で、結局俺は護送車の中に入った。
SAPが出動して玉が飛んで来た方向へ向かい銃を構える。
ヘリからも機動隊が下りてきて、寒風山は厳重警戒体制でスナイパーを捜索しはじめた。
俺はその様子を護送車の中から眺めている。
あまりはっきりと見えないが、たぶんそうだろうなぁという俺の想像も交えて。
俺が知らない間に、寒風山で一体何があったというんだ。
俺は、幻のとわちゃんを待っていただけなのに。
ブロッケンはスナイパーがいるとは言っていたが、冗談だと思っていた。
エバンスが陰で糸を引いているという話がだんだん真実味帯びてきた。
恐ろしい男だ。
ガチャ
護送車の扉が開いて誰かが入って来た。
俺は入って来た男に頭を下げてお願いした。
「お願いです。勘弁してください・・・
もう、家に帰らせてください」
「勘弁ならないな」
聞き覚えのある声に、思わずハッとして顔をあげた。
「ハヤブサさん・・・?」
俺の目は潤んでイケメンハヤブサさんの顔が歪んで見えた。
「ったく、心配かけやがって。勘弁ならないって言ってるんだよ」
「うわあぁぁ!ハヤブサさーん、俺はどうしたらいいんでしょう」
「うーん、そうだなぁ」
護送車の外が、再び騒がしくなった。
テレビニュースの中継で記者が説明している声が聞こえる。
「容疑者の身柄を確保した模様です。
今、向こうの林の中から警察官数名とSAP数名が、
容疑者を取り押さえてこちらの方に・・・・」
護送車の扉が再び開いて、警察官が乗り込んできた。
「なんだ、君たち、早く護送車から降りなさい。
今、容疑者を乗せるんだから」
ハヤブサは俺の手を引いて護送車から降りた。
おれもそれに続く。
すると、父さんが駆け寄ってきて俺を強く抱きしめた。
「バカ野郎! 心配・・・いや、無事でよかった」
とりあえず、容疑者身柄確保でひと段落つき、父さんはやっと安心したのだろう。
いつもの父さんに戻っていた。
「苦しい・・・父さん、そんなに力を入れたら苦しいよ」
「あは、そうか、悪かったな」
そのあと、警察の偉そうな人たちが父さんに近づいてきて、これからの段取りの確認をしていた。
俺は大人の会話から離れて、ハヤブサのところまで歩いた。
「ハヤブサさん、さっきの話なんだけど、
俺どうしたらいいんでしょう」
「とりあえず、あずさと話したら?」
と言って、スマホを渡された。
えぇ! 桜庭かよー、絶対怒っているって。
ハヤブサは大丈夫とでも言うように、頷きながら電話しろと促してくる。
ハヤブサが話せというなら話すしかない。
深呼吸し、息を整え、俺は怒られる覚悟を決めた。
「もしもし、俺です」
「どこで何していたのよ、三日間も!」
案の定、あずさの咆哮が響く。
夢で見た桜庭と同じだ。
何していたと聞かれてもなぁ。
ずっと幻の少女を待っていましたと言うしかないのだが。
「あのぅ、それ、今聞きたい?」
「うううん、聞かない」
「え?」
「質問を変えます。
今夜、何が食べたいですか?
わたし今からペンションに行って作ってあげる。
何が食べたいですか?」
「あの、今からペンションに付くのに、二時間はかかるかと・・・・」
「いいからっ! 食べたい物を言って!」
「桜庭・・・それなら、カツ丼! カツ丼が食いてぇ!」
「最上君? 取り調べ室じゃなくて、ペンションに帰って来るんだよね。
なんでカツ丼なのよ」
「カツ丼作ってください。お願いします!」
「しょうがないわねぇ。
カツ丼にみそ汁とお新香も付けるか」
「ありがとうございます!」
目の前に、桜庭がいるわけでもないのに、スマホを持ちながら深々と頭を下げる俺。
それを見ていたハヤブサは笑いを必死にこらえているのか、
それともうれし泣きしているのか、
両手で顔を覆いながら、肩を震わせていた。
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