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みちのくダンジョン・ハイスクール・ボーイ~ランキングより好きに生きていいですか?何か問題でも~  作者: 白神ブナ
第3章 レベル999(スリーナイン)、知らんけど

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第59話 寒風山小展望台

「おはよう、最上君。起・き・て」


俺は誰かの声で起こされた。

目を覚ますと、明るい太陽の光の下、小展望台の屋根に遮られて俺を起こした人物の姿が逆光になってよく見えない。


「ふふふふ、寝起きが悪いのね。そんなところも、案外可愛いじゃないの」


俺は起きようと体をよじったが、手が後ろ手に縛られていた。

小展望台の木造の手すりに腰かけ、一人の女の子ではなく、男が足を組んでいた。


「久しぶりね。あたくしのこと、覚えてらして?」


俺と同じ制服を着て、マントを羽織り、ベリーショートカットにきれいに化粧をしている男。

迷宮探索高等専門学校、東京校三年。

上級ダンジョン探索者ブロッケンだ。


忘れるはずがない。

小安峡ダンジョンで俺を騙し、魔物退治をさせている間にブラックダイヤモンドを持って帰ろうとした男だ。

結局は、俺がブラックダイヤモンドを取り戻したが。


「とわちゃんは、今日も来ないわよ」


「なぜ、とわちゃんの名前を知っている」


「頼まれたのよ、とわちゃんに。

寒風山でわたしを待っている先輩がいるから伝えてって」


「そうか、やっぱり何か事情があって来られないんだな」


ブロッケンは、思いっきり噴き出したあと、大笑いをした。


「ブッ!! オホホホホ、オホホホホ・・・・、

ああ、おかしくて腹筋が崩壊しそうよ!

頼むから、もうそんなに納得しないで~。なんておめでたい奴なの」


「何がそんなに面白い」


「きゃー、ハハハハハ! 信じられない、まだわからないの?

あんた、今、後ろ手に縛られているのよ。

いい加減に気づきなさいよ」


「あ、そう言えば・・・なんでだ?」


ブロッケンは手すりから降りてきて、俺の顔をくいっと持ち上げて言った。


「花館十和なんて存在しないの。

あのラブレターはあたくしが書いたのよ。

あんたの下駄箱に入れるのなんてお茶の子さいさいだったわ。

だって、あたくしも同じ制服ですもの」


「嘘だ」


「そう嘘だっだのよ」


「嘘だったというのは嘘だ」


「ああああ! もうっ! わかりにくい言い回しはしないで。

あんなハニートラップに簡単に引っかかるとは思わなかったから、

こっちは強引に拉致する方法まで準備していたのに、

案外ちょろかったわね。

ラブレターに舞い上がって本当に寒風山に来るなんて」


「何が目的だ」


「本当はねぇ・・・どうしようっかなぁ~、

教えてあげようかなぁ~。

ある人に頼まれたのよ。

ハチ王子を拉致してしばらく拘束しておいてくれって。

でも、拘束なんかしなくたって、

あんたは何もせずにただボーっと待っていた。

まさか三日間も待つとは、思ってなかったわ。

でもさすがに三日間飲まず食わずで、さぞ体力も落ちた頃よね。

これなら、あたくしにも勝機があるってことね。

ねぇ、何も食べていないんでしょう。

たとえば、ほら、こんなのを食べたいと思わない?」


ブロッケンは、指先をくねらせて

魔法でかつ丼を出して見せた。


「フフフ、取調室の定番ね。

ほかほかのかつ丼よ。食べたいでしょう」


「いや別に」


「やせ我慢しなくていいのよ。

三日間、何も食べていないのはわかっているのよ。

後ろ姿をずっと観察させてもらっていたのだから」


「食ってたよ」


「嘘おっしゃい! 

ずっと体育座りして待ちぼうけしていたじゃない」


「体育座りで、アイテムボックスから茹でトウモロコシ出して食ってた」


「アイテムボックスから茹でトウモロコシ?

アイテムボックスに、普通はそんな物は入れないのよ!」


「だめなの?」


「あんたね、学校で何を習っているのよ。

ああ、わかった、それは嘘ね。

だって、トウモロコシを食べた後の芯なんか無かったわ。

あたくしは、ちゃんとゴミのチェックもしてたんだからね」


「トウモロコシの芯は、アイテムボックスにしまった」


「何でよ! なんで生ごみまでアイテムボックスに入れるのよ。

レジ袋じゃないのよアイテムボックスは!」


「トウモロコシの芯は、

馬のエサや、バイオマスプラスチックの製作に使う。

大切な資源なんだ」


「はぁ? あんたと話していると頭が痛くなってくるわ」


「それで? 誰に頼まれたんだ。

おれを拉致して拘束しろなんて依頼は、穏やかじゃないな」


「依頼主の名前をそう簡単に教えるわけにはいかないわ。

依頼主の利益と、あたくしの利益が一致しただけの話よ。

あたくしは、ブラックダイヤモンドの復讐ができればいいの」


「あれは、お前が俺を騙して手に入れたんだから、

俺が取り返して当然だ」


「ん? 盗んだ、でしょ」


そう言いながらブロッケンは、嬉しそうに剣を構えた。


「手癖の悪い子にはお仕置きが必要ですね」


「悪いけど、お前には負ける気がしない」


前回もブロッケンに騙された。

今回もこいつに騙された。

いくら同じ学校の先輩でもこいつだけは許せない。

しかも、今回は俺の純粋な恋心を弄んだのだ。

バカヤロウ!

腹立たしい気持ちが湧き上がってくる。

久々に大暴れしたくなってきた。


俺はゆっくりと立ち上がった。

と同時に、後ろ手に縛っていたロープがはらりと床に落ちた。


「いつのまに・・・・」


「『とわちゃんは、今日も来ないわよ』のあたりから。」


「面白い。指も手首も自由自在ってわけね」


ブロッケンは構えていた剣を俺の鼻先に突き出し、俺が一瞬ひるんだ隙を狙って左から切りかかる。

とっさに俺は小展望台の手すりから、地面に飛び降りて攻撃を避けた。


「お待ちなさい。あたくしから逃げられるとでも思っているの?」


ブロッケンも地面に飛び降りてきて、俺に覆いかぶさる。

それを避けようとももみ合っているうちに、二人とも寒風山をゴロゴロと転がり落ちて行った。


草原をどこまでも転がっていくかと思われたが、低木が茂っている場所で転落は終わった。

すかさず俺は剣を取り上げ、遠くに放り投げる。


「刃物で襲ってくるなんて、殺す気かよ」


「言ったでしょ。お仕置きが必要だって。

これは先輩からの指導よ」


「それはよかった。てっきり殺されるのかと思ったよ。

俺は指導と言う名のしごきには慣れているんで」


「そう、それじゃ遠慮なく」


ブロッケンは懐から拳銃を引き抜いて発砲した。


パーン!


銃弾は俺の右頬をかすめ、後ろの樹木に当たった。


「・・・・・外れた? いえ、よけられた?」


ブロッケンが判断できないで迷っているほんの数秒の間に、俺は瞬時でブロッケンの後ろに回り腕を締めあげた。

ねじられた右手から、拳銃が落ち、それを足で踏みつける。


「痛い! 痛いわ! 腕が折れる!」


「先輩、一体誰から依頼されたんです?」


「言うワケないでしょ、おバカさん」


「いいんですか。このまま腕、折っちゃっても」


「痛っ! あたくしだって雇われてんのよ。

あんたのせいでトップランキングから落とされて、

こっちだって生きていくのに必死なんだから」


「両腕とも折っちゃっいましょうか」


「名前を言ったって、あんたなんか知らないでしょ。

エバンスよ。エバンスというイギリスの投資家」


「エバンス? なんだってエバンスがお前を雇うんだ」


「知ってるの? エバンスを・・・

ユズリハの配信でハチ王子と戦っているところを見ていたんだって。

あの時の悔しさを晴らすチャンスをくれるって。

ダンジョン開発を進める間、

邪魔な坊やを拘束しといてくれるだけでいいからと」


「殺せとは言われなかったんだな」


「あたくしはね。

でも、他にスナイパーも雇われているし、

誰があんたを撃ったって同じでしょ」


「俺、狙われてんのか」


「そうよ、エバンスの力は甘く見ない方が身のためよ」


「そう。アドバイスをどうもありがとう。お礼させてくれ」


「な、何よ、ちょっ・・・ちょっと、どこに連れて行く気?」


俺は、ブロッケンをひょいと右肩に背負い込んで・・・


「ここから投げる気?」


「いや、もっと楽しいことだよ。

おーい、そこのお兄さんたちー! 

お願いがあるんですけどー。

この人も空を飛んでみたいそうなんで、体験させてください」


寒風山でパラグライダーをしている青年たちに向かい、肩に乗せたブロッケンを指さしてお願いした。

青年たちは快くブロッケンを迎えてくれた。


「初心者大歓迎ですよ。どうぞ、どうぞ。

僕と一緒に飛びましょう」


「あ、あ、あたくしは結構です・・・」


「大丈夫、体験するだけですから、僕がついてますし」


大学生くらいの爽やかな青年がにっこり微笑んでブロッケンの手を取り、俺の肩から降ろした。


ブロッケンは頬を染めて、青年に言われるまま連れていかれた。

青年の笑顔にイチコロだ。お気に召したようだ。


「あ、費用は体験希望のこの人から取ってくださいね。

俺はちょっと先を急ぐので、じゃあ」


俺は駆け足で寒風山を下りて行った。


しばらくすると、後方の空から絶叫が聞こえた。

よかったじゃん、ブロッケン。

好みの青年と一緒に空を飛べて。

そんな体験、なかなかないぜ。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ってくださったら


下にある☆☆☆☆☆から、

ぜひ、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、

つまらなかったら星1つ、

正直に感じた気持ちでちろん結構です!


ブックマークもいただけるとさらに泣いて喜びます。


何卒よろしくお願いいたします。


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