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みちのくダンジョン・ハイスクール・ボーイ~ランキングより好きに生きていいですか?何か問題でも~  作者: 白神ブナ
第3章 レベル999(スリーナイン)、知らんけど

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第56話 ハチ王子を探せ(狩野談)

 ブーッ、ブーッ、ブーッ、ブーッ、


スマホが鳴った。

寮で夕食のカレーライスを食べているときに、誰からの電話だろう。

僕の尊い食事時間を邪魔するな。


“桜庭あずさ”


えっ! 桜庭から?

おいおい、こんな時間に電話して告るんじゃないだろうな。

ほんと、マジであいつがきれいになったのは、僕のせいかもしれない。


口の中のごはんを水で飲みこんで、他の生徒がいない場所までわざわざ移動した。

ふぅーっと深呼吸をし、自分を落ち着かせてから電話に出る。


「はい、どうした?」


「もしもし、桜庭です。狩野君、今、電話大丈夫?」


「ああ、大丈夫だけど?」


「今ね、最上君のお爺ちゃんから電話があって、最上君が帰ってきてないというのよ」


なんだ、最上の事か。

残念、愛の告白ではなかった。

なんで、いつも最上なんだよ。

最上よりも僕の方がずっと優しいのに。


「ああ? あいつのことだから、

ダンジョンで畑仕事に夢中になってんじゃないか?

いつものことじゃん」


「それがね、

いつもは学校のカバンを家に置いてからダンジョンに行くんだけど、

カバンが家に置いていないって。

帰宅しないままでどこかへ行ったようなの」


「慌てていたんだろう。

そういえば、あいつ終礼のチャイムと同時に猛ダッシュして教室出て行ったな」


「それ、わたしも見た。陸上部の代表選手みたいだった」


「いやあれはオリンピック選手並みだろ」


「そんなの、どっちでもいいわ。どこへ行ったのかしら。

狩野君なら何か聞いていると思って電話したんだけど」


「僕は別に何も聞いてないけど。

どうせ、行くならダンジョン第5層界だろ。

そのうちケロッとして帰ってくるよ。

八幡平のムーミン谷の時もそうだったじゃん。

あいつのことだ、心配ないって」


「そうね、そういう人だもんね」


「ああ、そうだよ。

僕もきのう第5層界に行ったけどさ。

自動販売機の飲み物は売れているし、

無人販売の野菜も売れているし、

トレスチャンがうまく接客までして商売繁盛していたぞ。

経理の仕事もあって、遅くなってるんじゃないのか?」


「そうなのね。なら、心配いらないわね。

わたし、心配しすぎてお兄ちゃんに電話しようと思ったけど、

先に狩野君に電話してよかったわ。ありがとう」


「いや何。最上のことなら僕に聞けよ。

たいていのことはわかるから。

ハヤブサさんより僕の方が最上については詳しいぞ」


「そうよね。最上君のお爺ちゃんにもそう伝えておくわ。

忙しい時間帯にごめんね」


「なんでもないよ。寮のカレーを食ってただけだから」


「え? 男子寮って今日はカレーなの?」


「は? まさか、女子寮は違うのか?」


「女子寮は鶏肉のみそマスタード焼きだったわよ」


「うっそー! すごい豪華じゃん。何それ」


「それに春雨の酢の物とわかめスープだった。

デザートにシューアイスまで付いてきたわ」


「マジで? 僕、女子寮行きてー。ほんとうに?」


「嘘よ」


なんだ。

やっぱり僕はいじられキャラか。

桜庭に電話で遊ばれた。


でも、好きな人にはわざと意地悪しちゃうって線もあるか。

なんだよ、桜庭。

やっぱり僕のことが好きなんじゃん。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


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