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みちのくダンジョン・ハイスクール・ボーイ~ランキングより好きに生きていいですか?何か問題でも~  作者: 白神ブナ
第3章 レベル999(スリーナイン)、知らんけど

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第54話 第5層界北エリア

 第5層界。


みんなから『最上の館』と呼ばれる俺の小屋から南西に向かう。

『もがみのやかた』でも『さいじょうのやかた』でも、どっちでもいい。

人里離れたというより、人里とは異次元のダンジョンであるこの場所は、荒々しい景観の山々もあり、どこまでも続く海もあり、森林や草原も広がっている。

俺の大好きな大自然の懐に包まれている世界だ。


南西の山の中腹で指笛を鳴らす。


ピューイ、ピューイ。


音を聞いて上空に現れたのは、俺に懐いているドラゴンだ。


ギュルルルル・・・


俺の近くに降り立つと、嬉しそうに首を押し付けてくる。


「やあ、元気だったかい? ドラゴン。

ああ、君にはまだ名前を付けていなかったね。

俺ってネーミングのセンスないからなぁ・・・・ドラでいいっか」


キューン


「悲しいかい? ハヤブサさんならいい名前を思いつくのにな」


ギュルルルル・・・


「今日も空を飛んで、上から地上を見下ろしたい。乗せてくれるかい?」


ドラは背を低くして、俺が乗りやすい姿勢をとる。


ドラに乗り込むとゆっくりと浮上して、空を飛んでいく。

眼下の草原を見下ろすと、野生の馬たちがのんびり草を食んでいるのが見えた。

さらに北上するにつれて風を受けていると、連なる山々に思わず背筋がピンとなり、胸が膨らみそうな光景だ。


地上には、ポツンポツンと人家が建ち始めていて、人々の姿も見える。

どこからか来た探索者だろう。

ここで休憩をとって、食事をしたり、洗濯したりしてからまた探索に出かけるのだ。


 下で手を振る男がいる。

条件反射で俺も手を振り返した。

それでも男はドラを必死に追いかけてくる。

なにか伝えたいことでもあるのだろうか。


「ドラ、あの男の人の近くに降りてくれ」


ドラは走って来た男の近くに着陸した。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・・すみません、

ここに住んでいる人ですか?」


息を切らして、男は必死の形相だ。


「住んでいないけど、趣味で住んでます。

どうかしましたか?必死に追いかけて来るなんて」


「妻が産気づいたって電話があったんですが、

妻の元に戻る洞窟までは遠いから、乗せて行ってもらえませんか?」


「ええ、いいですけど。奥さんは今どこに」


「仙台の病院です」


「その洞窟からは近いんですか?」


「洞窟を出たら走って15分位のところです」


「わかりました。乗ってください。ドラ、この人を運ぶよ。

ちょっと重くなるけど頑張ってくれ」


「すみません」


男が指示した洞窟はここから東の山の中腹にあった。

男を降ろすと、すみません、すみませんと言いながらゴールドを差し出すので、


「ゴールドなんか要りませんよ」


「ほんのタクシー代です。本当に助かったので受け取ってください」


「そんなことよりも、早く奥さんのところへ行ってあげてください」


「わかりました。ありがとう! 

みんなにドラゴンタクシーに乗ったと宣伝して回ります」


「そんなことはいいから」


俺はドラゴンタクシーじゃないと言いたかった。

だが、ここで説明している時間はないので、早く男を洞窟のむこうへ行くようにせかした。


タクシー業かぁ。考えてもいいなぁ。


 次に狩野が作ったジュリアの家を見に行った。

ほぼ完成しているようだ。

厩が見える。

狩野が設計から担当したと言っていたその家は、かっこいい。

素人の俺が作った小屋よりも、断然かっこいい。

ジュリアが用意した資材もいいものだったんだろう。

白い外壁に赤い屋根。

ジュリアが好みそうなデザインだ。



 さらに北上すると、大勢の人が地面を工事している場所を発見した。

こんなところで何をやっているんだ。

工事現場監督らしき人物が作業員に何か指示をしている。

その隣に、見覚えのある英国紳士が立っていた。

エバンスだ。

エバンスは、ドラゴンに気が付いて上空を見上げ、帽子を取った。


「やあ、ミスター・ハチ王子」


俺はドラに命令してエバンスの近くに着陸した。


「こんなところで何をしているんですか」


「ドラゴンに乗って登場するなんて、かっこいい登場の仕方じゃないか。

さずが、探索者ランキング日本一位。世界ランクでは知らないけど」


「質問に答えてください。ここで何している」


エバンスはあきれたように両肩をすぼめてから、口ひげを撫でた。


「ご覧の通りですよ。リゾート開発です。

それと同時にインフラ整備もするつもりです。

水道を通し、発電所から電気も通す。そう道路も整備する」


「公共事業?・・・なわけないよな」


「あははは、もちろん、エバンス財団による開発だ。

水道料金、電気料金、有料道路通行料。

このエリアに住む人々に、文化的生活を提供する代わりに、

対価を支払っていただく。」


「文化的生活?」


「北エリアには、ノマド・キャンパーのコロニーがあることがわかった。

君はまだ若いから想像したこともないだろうが、

探索者が高齢化するとどうなると思う? 

長く探索をしている者のなかには年齢や病気のため、

探索者としての生活ができなくなった者もいるんだよ。

でも、彼らの居場所はダンジョンしかない。

そんな高齢探索者がこれからも増えていくんだ」


「ここで福祉事業をするのか。

でも水も電気も道路も有料に? それはどうよ」


「君だって、自動販売機で水を売っているじゃないか」


「そうだけど・・・

ミネラルウォーターを売るのと、水道有料化とは違う。

それに、高齢探索者なら地上で福祉を受けられるはずだ」


「甘いね。国によって対応は違う。

彼らは家族の迷惑になりたくないと思っているのが大半だよ。

住む家を失い、車であちこち移動し続ける。

わたしはノマド探索者の受け皿を作るんだ」


言っていることは立派だが、本当に受け皿になるのだろうか。


「俺は頭悪いからよくわからないけど、

どこの国にも属さないダンジョンで、

インフラをあなたが独占するのは危険な匂いしかしない」


「もちろん、ノマド探索者を雇用する。

ここに大きな配送センターを作り、ホテルやカジノを作る。

雇用元があれば、彼らはここで働ける。

素晴らしい計画だと思わないかい?」


「たいそうな計画ですね。立派なことを言うわりにはあざとい。

それって受け皿じゃなくてザルですよ。

ザルの目から零れ落ちた者はさらに落ちていく。

そして、だれも救わない。

それが文化的生活なんですか?」


「それは、今の社会だって同じだろう。

わたしだけが責められる筋合いはない。

だいたいね、だれかが財力で開発を進めないと、

こんなダンジョンなんか不便で住めないから開発を進める。

それのどこが悪いのかね」


「住めなくて結構。俺は村人募集しているんじゃない。

文化的生活をしたいのでもない

他のダンジョンとのハブ空港的存在になって、

ほっと一息つけるような世界にしたいだけだ」


「最上忍くん、

君の理想通りにダンジョンを快適化しようなんてのは、傲慢というんだよ」


「なぜ、俺の本名を知っている」


「ビジネスに下調べは基本だ。いろいろ知っているぞ。

東京生まれで、迷宮探索高等専門学校、東北分校2年。

父は通商産業省、迷宮探索政策室長の最上。

母は秋田県田沢湖出身、

母方の祖父母がペンション白鷺を経営している」


エバンスは俺についての情報をすらすらと並びたてながら、ステッキの先で地面に丸を描いている。


「まだあるぞ。

夏休み中にどこからか金塊を見つけてきたんだって? 

金塊に刻印されてあるナンバーや商標を調べれば、

どこの金塊かはすぐわかる」


ゾッとした。

そんなことまで調べ上げていたんだ。


「もういい。目的はなんだ」


「ビジネスと言ったでしょう。

ビジネス戦略を練るには敵を知らなければ。

この開発を止める権利は君にはない。

これが大人のやり方だよ。

資金力がある方に物事は流れる。よく覚えておきなさい」


俺は言い返すこともできなくて、ぐっと拳を握り締めていた。

こんなやつ、グーパンしてやる価値もない。


「最上君、あまりグダグダ言うようなら、

ちょっと大人しくしてもらわないといけないね。

わたしの関係者は世界中に散らばっているから、気を付けたまえ。

これは忠告だ」


何か違うと思う。

エバンスの言っている高齢探索者の受け皿と、奴隷からの搾取とどう違うのか。

言い返したいのに、父さんみたいに理路整然と論破できない。


俺は悔しい気持ちでいっぱいになり、何も言い返せずにドラに乗った。

情けないが、今の俺には自分の小屋へと飛んで帰るしかなかった。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ってくださったら


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つまらなかったら星1つ、

正直に感じた気持ちでちろん結構です!


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何卒よろしくお願いいたします。


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