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みちのくダンジョン・ハイスクール・ボーイ~ランキングより好きに生きていいですか?何か問題でも~  作者: 白神ブナ
第3章 レベル999(スリーナイン)、知らんけど

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52/122

第52話 ダン技研、応接室

ここから第3章です。

ランキングトップに躍り出たハチ王子こと最上忍は、とうとう身バレしてしまいます。

ダンジョン第5層界北エリアの開発を巡り、事件に巻き込まれていく最上忍。

事件解決のために、ついに国が動くことに・・・


どうぞラストまでお楽しみください。


 ペンション白鷺にチェックインしにきたお客さまが、フロントに荷物をおろし残念そうな顔をする。


「あれぇ? 

可愛い女の子がフロント係でなかなか予約の取れない宿って、

ここで間違いないですか?」


「口コミにはそう書かれてますね」


「女の子は? 今日はお休みですか?」


「あの子は夏休みの短期バイトで来てもらってたんで、

もう辞めました」


お客様はよほど楽しみにしていたのか、桜庭がいないと知るとうなだれた。

もうこれで、今日は5人目だ。


「あ~あ、一緒に写真に撮ってもらおうと思っていたのに」


「申し訳ございません」


「君もホームページに女の子と一緒に写っていた子だよね。

君は辞めないの?」


「俺、じゃない、わたくしはこの家の者なんで・・・」


フロントにいるのが俺で悪かったな。


桜庭あずさは、夏休みが終わりそうな五日前の朝に寮へと帰って行った。

桜庭がいなくなると、そのあとを埋める役目が俺に回ってきてしまった。

人前に出るのが苦手だからひたすら裏方に徹していたのに、

爺ちゃんに引っ張り出されてしまったのだ。


「あずさちゃんがバイトやめて寮に戻ったがら、

忍、おめぇフロントさ出れ」


「ええーーーー、嫌だよ爺ちゃん」


「何言ってる。

おめぇだってホームページさ写真載ってるんだがら、ここの顔だべ」


ペンションの顔とか言われたくないし、勝手に写真撮ったのは爺ちゃんじゃないか。

と思いながらも、聞き分けのいい俺は今素直にフロントに座っている。


 あずさと入れ替わる形で、ここにやって来たのは父さんだ。

何のために父さんが来たかというと、

それは母さんを東京に連れ戻すためだと俺は勝手に思っている。

夏休み期間だけの帰省という約束で母さんは来たけど、

放っておくとずーっとここに居座りかねない。

父さんだって東京の家で、ずっと一人暮らしを続けるのは大変だろう。


その父さんは、さっきからずっとテラス席で誰かと電話中だ。

真剣な顔をして話している。

何もこんな休みの日まで、仕事の話を電話でしなくてもいいのに。

父さんの電話が終わったようだ。

フロントに向かって歩いて来る。


「忍、このあとチェックイン予定のお客さまはいないか?」


「あとは、夜に一組だけだよ」


「じゃあ、フロントは爺ちゃんに任せて、ちょっと出かけよう」


「マジで? やったー。父さんから出かけようなんて言うのは珍しいね。

どこへ行くの? 映画館に行ってみたいなぁ。

『怪盗アンパンの城』が絶賛上映中なんだよ」


「寝ぼけたこと言ってないで、早く支度しなさい」



 30分後、俺は父さんと黒い皮のソファーに座っていた。

映画館の椅子ではない。

そこは、ダンジョン探索技術研究所 田沢湖支部の応接室。


俺また何かやっちゃった?


「忍、何故ここに来たかわかるかい」


「全然」


「嘘をつくな」


「なんとなく」




―――二日前、

俺はダン技研田沢湖支部でステイタス画面を読み込ませ、魔石を提出した。

担当したのは、前回とは違う女性研究員だった。


「毎日ステイタス画面を確認なさってます?」


「はい、一応」


「スキルが変わって、レベルも変わったのはご存じですか?」


「うーん、なんか一回だけメンテナンスと表示されたけど、

意味がわからないからそのままに。

ちょうど、怪我をして入院していたころなんで、

あまり気にしていませんでした。

何か悪いことでも起きているんですか?」


「いいえ、そんなことありません。

アイテムボックスの中で提出するのは、魔石だけでいいんですよね・・・」


何故か研究員は、震えている。

まだ仕事に慣れていないのかなぁ。


「ポイントは換金しますか?」


「いいえ」


「ゴールドは換金しますか?」


「いいえ」


第5層界快適化計画のためにかなり出費していたから、本当は換金したかった。

しかし、魔石を10個提出すれば報奨金はそれなりになるだろうと読んで、ポイントとゴールドはそのままにした。



 そして、このダン技研の応接室に父さんと座っている。

ドアを開けて職員が入って来た。


「室長、お休みのところをわざわざお呼びして申し訳ございません。

集計していたら、どうしても室長に相談しなければならない事になりまして・・・」


「前置きはいい。早く集計したものを見せてくれ」


父さんは職員が持ってきたノートパソコンの画面をのぞき込んだ。


父さんの仕事先なのに、俺まで一緒に連れて来るということは、やっぱりアレか?

金塊を持っているのがバレたのか?

このあと、警察に突き出されるってことはないだろうな。


パソコン画面に何が映っているのか知らないけど、俺はドキドキしていた。


「室長、いかがしましょう。

ランキングデータを夕方には本部に転送しないとなりませんが・・・」


「ううむ、登録変更届を出そう。

ステイタス内容はさすがに偽装できない。

とにかく、すぐ変更だ」


「はい、では。こちらが変更届の用紙です。

ご本人に書いていただきます」


机の上に、一枚の紙が置かれた。


「忍、これに記入しなさい。

以前はハンドルネームの欄に本名を書いたと言っていたね。

これは、ハンドルネームを変更しますという用紙だ」


「はーい」


「なぜこれを書くか、わかるかい?」


「さっぱり」


父さんはため息をひとつついて、それから言った。


「忍のスキルが環境依存から環境応答に変わったからだよ」


「はあ、・・・そういえば、メンテナンス期間があったよ。

頭を打って入院していたから、

俺に休みなさいという意味かと思ってたけど」


「そうか、そういう物の考え方をしていたのか」


父さんの言い方は、メンテナンスとはそういう意味じゃないと聞こえた。


「いいか、わかりやすく説明しよう。

環境依存というスキルは環境応答というものに変化したんだよ」


「なんだ、そうなの?

俺は環境応答って二つ目のスキルかと思っていたよ。

結局スキルは一つしかないんだ」


「父さんが言いたいのはスキルの数じゃない。

要するに、今の忍がランキングインしたら名前が文字化けしない。

つまり、本名が晒されるということだ」


「ふーん、それは困るね。

だからこの紙でハンドルネームに書いてしまった本名を変更しろと」


「そうだ。きちんとハンドルネームを書きなさい」


「わかったー」


おれは、ボールペンを手にしてから父さんに質問してみた。


「ところで、父さん、環境応答って何?」


「ちょっと難しい話になるが、付いて来られるかな?」


「がんばる」


「環境応答とは、

植物が重力、水、光、温度、機械的な刺激などの環境の変化を感知して、

成長を制御したりして、環境ストレスを回避、軽減する生存戦略だ」


だめだ、難しくてついていけない。


「まだ研究を進めている段階で、DNAの修復や老化、

寿命に与える影響を調べている。

研究段階だが、生き残れる種を残すために必要な戦略なんだよ。

ちょっと難しかったかな。」


「かなり難しい。

でも言おうとしてることはなんとなくわかる。

だって、俺はそれを体験したもん。

海で生命の危機を感知して、環境応答が緊急発動したよ。

それは、環境ストレスを感じて、生き残ろうとした

という解釈であってる?」


「海で?」


「海の中でも呼吸できたし、水圧にも対応できた。

凄いでしょ。細胞レベルで生存できるように

ストレスを回避したってことだよね」


父さんは口をポカーンと開けて俺を見ている。

自分の息子が海で死にそうになったことを聞いて驚いているのか。

俺はそう取った。


だが、違った。

父さんが驚いたのは、俺が環境応答の説明を理解できたことだった。


「そうか、理解できたのかすごいな」


驚くポイントはそこかよ。


「では、父さんからも聞いていいか? 

アイテムボックスに入っていた宝石や金塊はどこで手に入れた?」


ヤバい! 尋問が来た。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ってくださったら


下にある☆☆☆☆☆から、

ぜひ、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、

つまらなかったら星1つ、

正直に感じた気持ちでちろん結構です!


ブックマークもいただけるとさらに泣いて喜びます。


何卒よろしくお願いいたします。


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