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みちのくダンジョン・ハイスクール・ボーイ~ランキングより好きに生きていいですか?何か問題でも~  作者: 白神ブナ
第2章 秘密のダンジョン第5層界快適化計画

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第51話 クラーケンは表情豊か

 クラーケンの触手に捕まって、激流の流れに逆らいながら俺はふたたびダンジョンの通路を戻って行った。


向かい風ならぬ逆流では呼吸が出来ない。

そのことに、クラーケンは気が付いてくれた。

直接潮流に当たらないように、クラーケンはおなかに俺を抱きかかえて泳ぐ。


 やっと御積島周辺の海中まで戻って来た。

自分の住処まで俺を連れて行くつもりなのか、クラーケンは俺を離さずに泳ぎ続けている。

目の前をいくつもの魚群が通り過ぎていく。


柱状節理の岩壁の窪みにそれはあった。

大きな宝箱をクラーケンが器用に触手で開けると、沈船から拾った陶磁器の壺や、美しい青磁の皿、宝石、真珠のネックレス・・・


「これが、お前のコレクションかい」


「旦那、さっきの貨物船にあった宝石箱がこれ。

中は青い宝石たくさん入っている」


「マジか。これサファイアじゃないか」


それだけではなかった。

コレクションの中には魔石がいくつか混ざっている。


「この魔石はどうした? おまえが魔物を倒したのか」


「あっしの仕事、海を守る。魔物が現れたら退治する。

だけど魔石はキラキラしてない。美しくない。

欲しくはない。貯まってしまった。要らない」


「そんな・・・要らないなら俺が欲しい」


「旦那にあげる。あれもこれも欲しいか」


「そんなに高価そうなものは要らない。

あ、いや、やっぱり一個か二個なら欲しいかな」


クラーケンは誰かが海に落としたであろう潮干狩り用の網を取り出し、

そこに魔石を10個と、おまけだと言って宝石を何個か入れて俺に渡した。


「旦那のボート探す。手伝う」


「ありがとう。何から何まで・・・

あの、悪かったな、足を食いちぎって。

あ、足だか触手だかわからんけど」


「問題ない。すぐ再生する。

旦那の豪快な戦いぶり、かっこよかった」


「何言ってんだ。お前、被害者なんだぞ。

お前みたいに優しいタコを俺は知らない」


クラーケンは長い触手で頭を掻いている。

こいつ、照れているのだ。

セリフで表現するなら「てへへ」だな。



 柱状節理の住処から俺はクラーケンに捕まりながら、ゆっくりと浮上した。

海面から顔を出すと、ハヤブサが手配したダイビングボートを見つけた。


「見つけたよ、クラーケンあっちの方角に向かって泳いでくれ」


「かしこまり」


俺はハヤブサのボートに向かって手を振った。


「おーい! おーい! ハヤブサさーーん!」


ハヤブサとボートのスタッフは俺に気が付いて、ボートをこっちに向けて発進した。


「最上くーん! 大丈夫かぁー?!」


ハヤブサは一生懸命に俺に手を振りながら、何かおかしいと気が付いたようだ。

イルカに乗った少年ではなく、

タコに乗った少年

それが波に乗りながら現れたのだから驚くのも無理はない。


ボートは俺の近くまで寄って来て、ハヤブサは俺に手を伸ばした。


「何に乗って来たんだ? これさっきのタコじゃないか!」


「普通のタコじゃありません。大タコです」


「それは見ればわかる。そうじゃなくて・・・

まあいい、早くボートに上がれ」


ハヤブサの手に捕まってボートに引き上げられた。


「こいつ、海の魔物クラーケンです。今日から仲間になりました」


「はぁ? さっきまでこいつに襲われていたじゃないか。

大丈夫なのか?」


「大丈夫です。クラーケンは俺を助けてくれたんで」


ハヤブサにしてみれば、海中で俺がクラーケンに襲われ深海に引きずり込まれそうになった所しか見ていない。

大丈夫なのかと訝しむのも当然だ。


そんなハヤブサの態度がクラーケンを刺激したのか、みるみる体の色が黒に変わっていく。

クラーケンがハヤブサを威嚇しているのがわかった。

俺はクラーケンに注意した。


「なんだ、お前、この人は俺のバディーだ。文句あんのか」


クラーケンはびくっとして、体色を元の薄茶色に戻していった。

俺はハヤブサにこの様子を見せ納得させる。


「ね?」


「ずいぶん可愛いのを仲間にしたねぇ」


ハヤブサの言葉に、クラーケンはデレはじめた。

ほんのりと赤く染まって触手をこっちにニュルニュル、あっちにニュルニュル。

左右に体を振りながらもじもじしている。


「あー、こいつ可愛いと言われてデレてますよ」


「ハハハ、面白い仲間だ。タコなのに表情豊かなんだね。

そうだ、いい名前を思いついた。

このタコはクラーケン改め、『表情ユタカ』にしよう」


「ハヤブサさん、さすがです! ネーミングのプロですね!」


ダイビングショップのスタッフが遠慮がちに声を出した。


「あのぅ、盛り上がりのところ申し訳ないんですけど、

もうボートで港に戻っていいですか」


「あ、すまない。いいね、最上君。ユタカとお別れするよ」


俺はユタカと命名されたクラーケンにボートから手を伸ばして撫ででやった。


「お別れじゃないよ。また会える。あの海でまた会おうな」


ユタカは名残惜しそうに触手で俺の手を握った。


ボートは港を目指して発進した。

ユタカは何度も海面から触手を振っていた。


「さっき、またあの海で会おうと言っていなかったか? 

あの海って、もしかして」


「第5層界の海ですよ。繋がっていました」


「そうか、あっちに行けたんだな! 凄い発見じゃないか」


「それから、これ、ユタカからもらったお土産です」


俺はボートの床に、潮干狩り用の網袋を置いた。


「もらったのか」


「はい、コレクションしていました」


「魔石じゃないか、ユタカは魔物退治をしていたのか?」


「海を守るのが仕事だと言ってましたよ。

あとは沈船からひろった宝石とかを回収しているみたいです」


「宝石まで・・・もらったのか」


「驚くのはまだ早いです。

第5層界の小型貨物船、あれはユタカが追い詰めて座礁させたそうです。

その船に乗って調べたんですが、もしかしたら密輸船かもしれません」


「驚いた。もう驚いていいんだよな」


「いいえ、まだ早いです。実はこれ内緒なんですけど・・・・」


俺はウェットスーツのチャックを緩めて、腰の周りにしまっていた物をハヤブサに差し出した。


「ちょっと、拝借してきました。金塊です。

これが船にわんさかありました」


ハヤブサは絶句して、スタッフに見られないように、すぐにダイビングバックの中に金塊や宝石を隠した。

そのあとは、港につくまでずっと無言だった。



 港につくと、ハヤブサはダイビングスタッフに多めに代金を支払っていた。


「お釣りは要らないよ」


「すんません。またのご利用お待ちしております!」


そのあと、ハヤブサはまず第5層界で待機していた狩野に電話をした。


「あ、ハヤブサだ。無事に海中ダンジョン探索は終わった。

第5層界に繋がっていたそうだ。最上君はこっちに戻ってきている」


「こっちに来てたんですかぁ? 第5層界の海に。

全然気が付かなくて申し訳ありませんでした。

でも、やりましたね。僕は最上ならやると信じてました」


「君もご苦労だった。では」


ハヤブサには、狩野への電話で用件を伝えるとすぐに切った。

次に、妹の桜庭あずさに電話をしている。


「あずさ、お兄ちゃんだよーん。うん、うん、大丈夫だから。

最上君も一緒だよ。心配ないからねー」


「お兄ちゃん、本当に心配したんだからぁ。もう!

 もう・・・・うっ、うっ、うぇーん」


「泣かない、泣かない。心配してくれてお兄ちゃんは嬉しいよ。

もうすぐ帰るからね。いい子にして待っているんだよ」


なんだ、狩野と桜庭に対するこの温度差は。

兄妹の感動の電話が終わるまでの間、俺はその辺をウロウロしているしかなかった。


「お待たせ、最上君。

あずさが煮込みハンバーグ作って待っていると伝えてほしいってさ」


「そうっすねー。ここから田沢湖まで時間かかるでしょ。

俺、ひもじくて倒れてしまうかも」


「よし、酒田ラーメンでも食べに行くか」


「それのった! 行きましょう。お腹ぺこぺこで死にそうで」


「海中で大タコと戦っても死ななかったやつが、空腹で死ぬわけがないだろ」


「それはそれ、これはこれ」


ハヤブサと俺は酒田港から車で市内の飲食店が並ぶエリアまで移動した。

そこで食べた酒田ラーメンは、胃袋にしみ渡り美味かった。


生きて戻れてマジでよかったと、俺は幸せを嚙み締めた。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ってくださったら


下にある☆☆☆☆☆から、

ぜひ、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、

つまらなかったら星1つ、

正直に感じた気持ちでちろん結構です!


ブックマークもいただけるとさらに泣いて喜びます。


何卒よろしくお願いいたします。


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