第46話 ドラゴンの恩返し
空から一匹のドラゴンが小屋まで舞い降りてきた。
ハヤブサとトレスチャンは驚いて、警戒態勢をとった。
しかし、俺にはこのドラゴンに見覚えがあった。
「待って、待って、そのドラゴンを攻撃しないで!」
「ご主人さま、ここはわたくしが取り押さえます。
危険ですからお下がりください」
トレスチャンは身をもって俺を守ろうと立ちふさがる。
「いや、そのドラゴンはたぶん俺に会いに来たんだ。
こいつに、以前、オオバの葉を嗅がせて大人しくさせたことがある」
以前、ジュリアと桜庭が鉱石を採りに行ったときに、出会ったドラゴンだった。
「最上君、そんな無防備な状態で近づいて大丈夫か」
ハヤブサはトウモロコシ畑の中に身を低くして隠れながら、注意しろと促す。
グルルルル・・・
ドラゴンは低く唸って、口からくわえていた鉱石を俺の前にそっと置いた。
「これを俺に?」
グルルルル・・・
「ありがとう。鉱石を持ってきてくれたんだね。
とても助かるよ。そうだ、待ってろ」
俺は畑に植えてあるオオバの葉を5~6枚摘んで、ドラゴンの鼻に持って行った。
ドラゴンは嬉しそうに目を細めて、俺に顔を寄せてきて甘えてきた。
「いい子だね。いい子だ」
グルルルル・・・グルルルル・・・
ドラゴンは地面に低く這いつくばるような姿勢で何か言っている。
「トレスチャン、なんて言っているのか通訳してくれないか」
「はい、ご主人様。
ドラゴンはオオバをもらったお礼に鉱石を持ってきたと申しております」
どうやら、危害を加えなさそうだと安心したハヤブサは畑から立ちあがって言った。
「ドラゴンの言葉がわかるのか」
「魔物どうしですから」
ドラゴンはまだ這いつくばる姿勢を崩さずにまだ何か言っている。
「どうしたんだろう、腹でも痛いのかな。トレスチャン、教えてくれ」
「背中に乗れと言っております。
ご主人様の行きたいところ、どこへでも連れて飛んで行くと」
「え、乗っていいの」
俺は躊躇した。
だって、ドラゴンに乗るのは、馬に乗るのとはわけが違う。
空を飛ぶということだよね。
「最上君、ドラゴンの好意に甘えて乗った方がいいんじゃないか?」
「だって・・・」
「だっても、くそもない。
第5層界の全体像がわかるいい機会じゃないか。
全体像がわかれば、マップを作れるぞ」
「この周辺のマップなら作りましたけど」
「上空から見たことはないだろ。
川があるなら川が流れる先に海があるかもしれない。
あるいはほかに移住者が居る村もあるかもしれない」
「そうか、それは俺も知りたい」
「快適化計画を遂行するなら、全体像を把握したほうがいい」
「わかった。ドラゴン、乗っていいかい?」
グルルルル・・・
ドラゴンは翼を下に降ろして、俺が乗りやすいようにと首を下げた。
俺は、ドラゴンの背中に登って、そっと首の辺りにつかまった。
「最上君、ちょっと待った!
今、ドローンにカメラを付けるから。
これでわたしに中継して、画像を送信してくれ」
ハヤブサがドローンに自分のスマホを装着して、空に飛ばした。
ドローンのブーンという機械音に驚くドラゴン。
「大丈夫、大丈夫。あれはドローンといって、
俺たちの仲間みたいなものだ。
あのドローンから離れすぎないように飛んでくれ」
グルルルル・・・
ドラゴンは、わかりましたとでも言うように返事をして、バサッバサッと翼を羽ばたかせた。
俺を乗せたドラゴンは徐々に上昇していく。
ハヤブサやトレスチャンの上空を旋回してから、飛んでどこへ行きましょうかと低く唸った。
小屋や畑がどんどん小さくなっていく。
あまり高く飛び過ぎるとドローンが追い付いてくれない。
「ドラゴン、あのドローンってやつと速さと高度を合わせてくれるかい」
ドラゴンは速さと高度を調整しながら飛んでくれた。
全身に浴びる風がとても気持いい。
馬よりも早く移動できる。
これは爽快だ。
「どこへ向かおうか。
そうだな、とりあえずジュリアの土地に行ってみるか。
狩野がそこで設計について商談しているはずだ。
確か、小屋より北の方角と言っていたな。
ドラゴン、北に進んで平坦な土地にいる人間を見つけてくれるかい」
ドラゴンは軽く頷いた。
「ドラゴンに乗っているところを狩野に見せて、驚かせてやろう」
ドローンはうまくドラゴンを追跡しているようだ。
俺はハヤブサから借りたヘッドフォンでハヤブサさんに話しかけてみた。
「テスト、テスト。ハヤブサさん、聞こえますか?」
「・・・・・・・」
「ハヤブサさん、音声が届かないのかな。映像は見えていますか?」
「あ、ああ聞こえているし、見えているよ」
「どうっすか? 下の地面や地形の様子は見えてます?」
「ああ、よく見えているよ」
「今からジュリアの土地を探しにいきます。角度は大丈夫ですか?」
「・・・・・最上君、落ち着いてよく聞いてくれ」
「はい?」
「決して、驚いて取り乱したり大声をあげたりするなよ。
操縦を誤ると危険だから」
「なんですか? そんな前振りはナシでお願いしますよ。
早く言ってください」
「そのぅ、君がね・・・今、ハチ王子のアバターになっている」
「ん? そうか、そうですよね。
急いでハヤブサさんのスマホを取り付けたから、
俺の顔を認識して秋田犬になってるんですね。
了解です。驚きませんよ」
「それだけじゃない」
「まだあるんですか?」
「設定がわたし個人用に送信ではなく、
・・・・配信設定のままだった。
つまり、この画像は配信されている。
すごい勢いでリスナーのコメントが流れている」
「はぁ?」
「今はステイタス画面を開くな! よそ見して落下したらどうするんだ」
「・・・・・・そうなんだー」
「すまない、最上君」
「・・・・やっちまいましたかぁ」
「慌てて取り付けて、確認しなかったわたしが悪い」
「俺の声もリスナーさんに届いていると。
やちゃったものはしょうがないですよ。
今さら引き返してドローンを回収するわけにいかないので、
このまま配信します」
「悪いね、最上君」
「ハヤブサさんの声はリスナーさんに聴こえてないんですよね」
「ああ、そうだ」
「じゃ、映像を見てなにかひらめいたことがあったら、
自由に俺に言ってください」
「そうだな。
だが、これからジュリアの土地に向かうと言っていなかったか。
君が狩野君のところへ行ったら、狩野君の様子も配信されるが・・・」
「あいつはぁ・・・・カリノだし、いいんじゃないですか?」
「そうだな、カリノだしな」
どういう納得の仕方なんだよ。
しばらくすると、ドラゴンはちょうど平坦な土地にいる人間を見つけたのか旋回を始めた。
地上では、噂のカリノが働いていた。
狩野がまじめに大工仕事をしているところを見つけたのだ。
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