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みちのくダンジョン・ハイスクール・ボーイ~ランキングより好きに生きていいですか?何か問題でも~  作者: 白神ブナ
第2章 秘密のダンジョン第5層界快適化計画

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第43話 女子の激戦区かよ

「おかえりなさいませ、ご主人様」


小屋の・・・・いやコテージの前、樹木の執事トレスチャンの枝には誰も吊るされていなかった。


「ただいま、トレスチャン。何事もなかったようだね。

今日は俺の仲間たちを連れてきたから、よろしく頼むよ」


「ご主人様、頭に包帯・・・お怪我されたのですか?どちらで」


「家の風呂場だ。自分で転んだんだ。大丈夫だから」


樹木の精霊トレントと会話している様子を見て、仲間はみんな驚いた様子だ。

探索者が魔物と会話する様子にきょとんとしている。

言葉も出てこないのか、誰にも何も言われなかった。

玄関に立って手をかざし枝葉の鍵を解除した。


「みんな、入っていいよ」


一番先に元気よく入って来たのは狩野だった。


「おじゃまんぼー! ユズリハさんも入っておいでよ。

桜庭もハヤブサさんも、遠慮せずに」


「お前が遠慮せずにと言うのは違うだろ。それは俺のセリフだ」


「僕はさ、あれだよ。ここのレギュラーだからさ。

勝手知ったる人のうちってね」


「じゃあ、わたしとあずさは準レギュラーだな」


「あら、お兄ちゃん。わたしはレギュラーだからね。

バイトが休み時にここへ来てるところを、

お兄ちゃんもスマホで見てたでしょ!」


「そうだね。あずさはレギュラーだった、ごめんよ」


ユズリハは何もかもが初めてで、まだ警戒心が解けない様子だ。

無理もない。

ダンジョンに畑や家があって、それを樹木の精霊が見張り番をしている。

こんな光景はめったに見られるものではないのだから。


「ハチ王子、あなたってほんとうに何者なの?」


「こないだの配信で、

ブロッケンから取り戻したブラックダイヤモンド覚えてる?

あれを手にしたからトレントが転生してトレスチャンになった」


「意味不明だわ。

覚えているのは、あのダンジョンであなたが

ずっとわたしをお姫様抱っこして走ってくれたこと」


「思い出すのはそこじゃない」


ハヤブサと桜庭がこちらに冷たい視線を送ってくるのがわかった。


「なんだね、最上君は。

君はあずさじゃない女性もお姫様抱っこしたのか」


「それは、ダンジョン内のトラップがあって、

しょうがなくそういう流れに・・・」


「最上君、妹はそれを見ていたのか?」


「さ、さあ・・・彼女はダンジョンに入らないで外で待っていたので」


「一緒に入らなかったのか。あずさ、いいのか?こんなことされて」


「お兄ちゃん、わたしはダンジョンの外で配信を見てたから知ってるわ。

いいんじゃないかしら、勇者なんですもの。

困っている人を助けるのは当たり前でしょ」


桜庭の言い方には棘があった。

敏感に感じ取ったユズリハは、桜庭に向かって近づく。


「困っている人? 

じゃあ、あなたはダンジョンのトラップを完璧に通り抜けられるの?」


「あら、わたし? 

通り抜けられないかもしれないけど困っている人にはならないわね。

だって、わたしには最上君もお兄ちゃんも味方についてるし」


「は? わたしだって全国に一万人のリスナー登録者がいるわ」


「リスナーさんは、現場に駆けつけてくれないじゃない。

結局おひとり様だわね」


なんだこの女子の戦いは・・・

ハヤブサも狩野もこの戦いはそのままにして、関係ないような顔をし、そーっと忍び足で小屋の外へ出て行った。

待って! 俺を置いていかないで。


「最上はそこで安静にしてろよ」


狩野が入り口から顔だけ出してニヤリと言う。


「おい、待て、狩野。

俺、なんだか頭が痛い。外の空気を吸いたい」


「しょうがねえなぁ。ほら肩を貸してやるよ。つかまれ」


狩野の肩につかまりながら、女子の戦場を後にした。

すると、トレスチャンがノコノコとこちらに付いて来る。


「恐れながら、ご主人様をお支えするのはわたくしの役目かと」


「トレスチャン、ありがとう。

でも本当は、支えてもらわなくても大丈夫なんだ」


「承知いたしました」


トレスチャンは定位置に戻ると、目を閉じて樹木のように佇んだ。


遠くから馬の蹄の音が聞こえてくる。

どうやら、その音はこっちに近づいて来るようだ。

馬の蹄の音はマロンだった。

そして、マロンに乗ったジュリアが俺に向かって手を振って来た。


「少年、また来てしまったわ。やっぱり君の住環境は快適だね。

あら、頭どうしたん?」


狩野は初めてジュリアを見て、そのまま動けなくなっている。


「きれいな人・・・だなぁ。最上はこんなきれいな女性と知り合いに?」


「おー、少年の友達? ロサンゼルスからきたジュリアよ。

よろしく。 あれぇ? なんだか今日は人が多いわねー。

パーティーかなにか?」


「あ、仲間と一緒に楽しく過ごそうっていうか、

仲間を泊める部屋がなかったからというか・・・」


「いいわね。わたしも参加したい。

いいでしょ? マロンを厩につないだら手伝うわ。

畑でもなんでも・・・ん? むこうにハヤブサに似てる人が。

ハヤブサが一緒に居るの?

なんでよ、少年、わたしをハヤブサに紹介しなさいよ」


ジュリアは急いで馬から降り厩につなぎながら言った。

ハヤブサは海外でも人気の配信者だ。

ハヤブサは畑からトマトを採って、ちょうど桜庭に渡そうとしているところだった。

桜庭は、ジュリアの声に気が付いて振り向きこっちを見た。


「な! なんで、あんたまで来るのよ」


「は? あんたまでって何よ。までって。ほかにもいるの?」


桜庭は、玄関階段に腰かけているユズリハがいる方を、クイッと顎で教えた。

ジュリアは誰にでも気軽に声をかける。

オープンな性格だ。


「ハーイ、そこで暇そうにしている少女。はじめまして!

あなたもこっち来なさいよ」


あ、女子の激戦区になってしまう。

なんとかしなくては・・・、そうだハヤブサさんにジュリアを紹介するんだった。


「あ、ハヤブサさーん、この人ジュリアさんっていいます。」


「そうだったわ、少年よ、よく思い出した。

ハーイ、ジュリアです。ロサンゼルスから来ました。

少年には馬の事でお世話になっています」


こんな美女が挨拶しているのに、ハヤブサはきわめてクールだ。


「ああ、エバンスから話は聞いています。あなたがジュリアさん」


「あらぁ、エバンスから話は聞いているってどんな話かしら。

悪い噂じゃなきゃいいけど」


「この場所をきれいなご婦人に教えてもらったと」


「きれいかどうかはエバンスの主観ね。で?どうなのよ」


「どうって」


「実際に会ってみて、どうなのよ」


「まぁ、普通より、やや上」


「ちょっと、言ってくれるわね。初対面でそれ?」


「君が聞いたから答えただけです。

わたしがお世辞を言う時は、怒っている時だから気を付けた方がいい」


俺はジュリアの手を取って後ろを向かせ、小声でアドバイスした。


「ハヤブサさんにとって、

妹の桜庭あずさ以外はみんな普通なんだよ。悪気はないんだ」


「妹のあずさ? ハヤブサの妹だったの? あずさって」


「妹をいじめたら激怒するから気を付けて」


「やだ、シスコン・・・なの?」


「しっ!」


ハヤブサは桜庭に取れたての野菜を渡して、何か話している。

次に、狩野がハヤブサに呼び出されている。


「狩野君は狩野って名前だから狩ができるんだろうな」


「ハヤブサさん、つまらないジョークはよしてくださいよ。

ストレートに狩に出ようと言ってくれればいいのに」


「そうだな。じゃ、ジュリアさんはあずさを手伝ってくれ。

最上君は休んでいろ」


あと一人、誰もかまってくれない子がいるんですけど。

俺は、階段でずっとふてくされているユズリハに近づいた。


「どうした?」


「別に」


「アイドル系の顔が台無しだぞ」


「・・・こんなに、ライバルがいるなんて」


「ライバル?」


「何でもないわ」


「よく来てくれたね。ありがとうユズリハ」


「・・・うん」


俺のその一言ですべてが報われたように、ユズリハは頬を赤く染めていた。



 しかし、安静にしているってのは暇だなあ。


などと言っていられる余裕は、実は無かった。

ハヤブサと狩野が出かけた今、俺は女子の激戦区に取り残されたことに気が付いてしまった。

頼む、早く帰って来て。


「最上君、ちょっとー」

「少年、こっちに来てくれる?」

「ハチ王子、手伝ってー」


三者三様の呼び方をしているが、これはどれも俺を呼んでいる。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ってくださったら


下にある☆☆☆☆☆から、

ぜひ、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、

つまらなかったら星1つ、

正直に感じた気持ちでちろん結構です!


ブックマークもいただけるとさらに泣いて喜びます。


何卒よろしくお願いいたします。


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