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みちのくダンジョン・ハイスクール・ボーイ~ランキングより好きに生きていいですか?何か問題でも~  作者: 白神ブナ
第2章 秘密のダンジョン第5層界快適化計画

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第41話 メンテナンス

 一晩入院して、頭の怪我以外は異常がないとわかると、昼には退院できた。

ペンションは宿泊客のチェックアウトと客室清掃を終え、比較的のんびりできる時間帯だった。


 俺と母さんが来るまでペンションの駐車場に着くと、桜庭が飛んで来た。

メイド服のような真っ白いエプロンを付けて、ポニーテールの髪を揺らしながら走ってくる。

あいつ、あんなに可愛かったっけ。


「おかえりなさい、最上君、大丈夫?」


「ああ、なんともないよ」


「お母さま、荷物は私が持ちます」


その、お母さまという呼び方おかしくないか?

と思いながら別にツッコミを入れることなく、俺はペンションの玄関をくぐった。

爺ちゃんと婆ちゃんも心配して、フロントから顔を出してきた。


「ささささささ、忍、頭さ包帯巻いで、痛そうだごど。

婆ちゃん、忍が元気になるようなもの、何か作ってやれ」


「あんや、まんじしかだね。

忍が元気になるものっていえば、何だ。

忍、夕飯は何食べたい」


「別に、いつも通りでいいよ」


心配してくれる家族には申し訳ないが、俺はそっけなく通り過ぎた。


 自分の部屋に戻って、スマホを確認する。

ゲッ? メールが34件、不在通知12件、留守番電話5件。

俺が一晩スマホを見ないだけで何が起きたんだ。


「ごめんね」


急に背後から話しかけられておれは驚いた。


「うわっ!」


後ろに立っていたのは桜庭だった。


「びっくりしたぁ。部屋に入ってくるときはノックぐらいしろよ!」


「ごめんね。わたしがお兄ちゃんに電話したの。

だからいっぱい通知来てたでしょ」


「ハヤブサさんだけではないな。他には?」


「狩野君」


「それから?」


「ユズリハさん」


「あとは?」


「あとはいないわ。本当よ」


「まあいい。それにしても、ユズリハさんって関係なくね?」


「逆に、ユズリハさんからメールが来たのよ」


ユズリハからのメールと聞いて俺は眉をひそめた。


「へえ、配信へのゲスト出演なら断ってくれよな」


「もちろん、断ったわ。そしたら、理由を聞かれたので・・・

最上君は大けがをして救急車で運ばれ、入院中です。

現在、意識不明の重体ですと返したの。それで大騒ぎに・・・」


「意識不明の重体だと?」


「だって最初はそうだったんだから。嘘じゃないわ。

本当にこのまま死んじゃったらどうしようって、わたしは心配したんだからね」


「それを、泣きながらハヤブサさんにも狩野にも言ったと」


「だって、わたしのせいだから。

最上君が怪我をしたのは、わたしのせいだから・・・・」


エプロンの裾をぎゅっと握りしめていた桜庭の目から、ポロポロと涙がこぼれだした。

いつもすぐ泣くから、こいつは面倒くさい。

と思っていたはずなのに、今日はなんだか違って見える。

ずるいなぁ。女の子ってずるいなぁ。

うつむきながらシクシク泣いているこいつの肩を抱きしめたくなっちゃうだろ。


ドギマギしながらそっと腕を伸ばし、桜庭の肩を抱きしめてしまった。


「桜庭は悪くない。俺の心に余裕が無かったからだ。自業自得ってやつ」


俺の胸の中で泣いている桜庭は子猫みたいにふわふわしていた。


すると突然、部屋のドアが開く。


「あずさちゃん居るぅ? あら、ごめんなさい。

お取込み中失礼しちゃったかしら。居るならそれでいいのよ・・・」


母さん、違う。

取り込み中じゃない、誤解だそれは。


「お母さま、何か御用でしょうか」


急いで俺からはなれた桜庭は、ドアの向こうの母さんに向かって平静を装っている。


「いえ、あの・・お茶、ここに置いておくね。

忍とあずさちゃんの分ね。では、ごゆっくりぃ。

ああ、青春っていいわねぇ・・・・」


ドアが閉まると桜庭は母さんが持ってきたお茶を運んで来た。


「あれ絶対、なにか勘違いしてるな」


「いいじゃない? 勘違いしてもらいましょう」


え?良くないだろ。

さっきまで泣いていた桜庭が、もう笑っている。

さっきのは、さっき抱きしめてしまったのは事故だからな。

なんだか、俺の顔がほってって熱い。

熱が出たのかな。

俺はソファーに横になった。


「そういえば、今、狩野君がダンジョン配信してると思うんだけど」


「何! それを早く言えよ。見逃すところだったじゃないか」


俺はソファーから飛び起き、急いでスマホで『カリノ・チャンネル』を開いた。

画面には、日に焼けた狩野の顔がどアップで写った。


「こいつの顔はアップに耐えられない」


「はい、ここで配信は終わります。見てくれてありがとねー。

いつもよりも短いって? はい、今日はここまでです。

あ、コメントありがとうございます。ん? あ! ごめんなさい、さようならー」


「なんだ、急に終わっちまったよ」


すると今度はスマホが鳴った。

狩野からのテレビ電話だ。


「もしもし、俺です」


「最上ぃ! びっくりしたよ。

突然、僕の配信にアクセスしてくるからさぁ。

何?大丈夫なの? 頭、包帯巻いてんじゃん。

入院して意識不明の重体だって聞いてたけど、起きてるのか。

あれ? 最上、自分の部屋に戻って来た?

背景が見おぼえある部屋だけど。退院したのか?」


「おいおい、いっきに喋るなよ。よく息切れしないな」


「ホント、相変わらずの慌てん坊さんね」


「あれ? 桜庭? なんで最上の部屋にいるの?」

え? え? 僕が知らない間に・・・

何? お前たちそういう関係になったの?」


「ここでバイトしてまーす」


「バイトに来てもらっているだけだよ。

狩野が考えてるような関係じゃない。

そんなことより、お前さ、日に焼けたなぁ。どこに行ってた?」


「あ、これね、ハワイ焼け」


「うっそ!」


「嘘。土方焼け。僕の実家の手伝いで現場に行かされたんだ」


「何それ、ウケる。マジで?」


「マジだよ。これからそっちに向かおうと思ってるんだけど」


「なんで」


「だから、重体の友を見舞いに決まってるだろ」


「ハハハ、来れば? 重体じゃないけど」


「わかった。今から向かう。待ってろ」


俺が電話を切ると、今度はハヤブサからの電話が鳴った。


「もしもし、俺です」


「あずさから聞いて驚いたよ。大丈夫かい? 

今からそっちに行くから、なにか欲しいものはないか。

あ、わたしの妹が欲しいというのは無しでお願いする」


「ハヤブサさん、心配かけてすみませんでした。

大丈夫ですから、何も・・・」


「そうだ、今から向かうからあまりいいお土産はないが

・・・君が食べたい物を言ってくれ」


俺の爺ちゃんみたいなことを言うんだな。

嬉しいけど、俺って食べ物で元気になると思われているのか。

当たっているけど。


思わぬことで、仲間が集うことになった。

ところで、ペンションの空室あるのかな。


ピコーン


通知音が鳴ったので、ステイタス画面を表示する。


『ミッション・クリアしました。メンテナンス終了です。

10pt 受け取りました』


何もしていないが・・・

何もしないことがメンテナンスだったとか?

このミッション、間違っていないか。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ってくださったら


下にある☆☆☆☆☆から、

ぜひ、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、

つまらなかったら星1つ、

正直に感じた気持ちでちろん結構です!


ブックマークもいただけるとさらに泣いて喜びます。


何卒よろしくお願いいたします。


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