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みちのくダンジョン・ハイスクール・ボーイ~ランキングより好きに生きていいですか?何か問題でも~  作者: 白神ブナ
第2章 秘密のダンジョン第5層界快適化計画

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第38話 完璧執事トレスチャン

 秘密のダンジョン第5層界に着いてから小屋までの道のりは、

長い距離ではないが、ちらほらと人を見かけた。

ロサンゼルスから来たジュリアではない。

彼女から話を聞いてロンドンからやって来たというエバンスとブラウンでもない。

俺の知らない人物がここに探索に来るようになっていた。

もう秘密のダンジョンという名を改名しなければならないかも。


***


 朝起きると、桜庭はもうロビーで働いていた。

今日の桜庭はペンションでバイトの日だ。

またダンジョンに連れて行ってとせがまれるかと覚悟していたが、そんなことはなかった。

昨日は馬を走らせたり、ドラゴンに出くわしたり、ジュリア、エバンス、ブラウンといろんな人との出会いもあって疲れたのだろう。


「じゃ、行ってくる」


「快適化計画がんばってね」


「君も、バイト頑張れよ」


「ジュリアさんには会わないで」


「そんなの無理だよ」


俺にジュリアを避ける理由は無い。

第一、厩の掃除と馬の世話を彼女に頼んでいるのだ。

逆に来てもらわないと困る立場だ。

そんなことより、エバンスとブラウンが本当にまた来るかもしれない。

こっちの方が、面倒くさそうだ。

ハヤブサの仕事仲間というだけで、何者なのかよくわかっていない。


「畑の野菜を何か採ってきて欲しいって、お母さまが」


「ああ、わかった」


俺の母さんを、桜庭は「お母さま」と呼ぶ不思議。

母さんも、そう呼ばれて否定しない不思議。

また謎が増えた。

桜庭、俺の家族に馴染すぎてないか。


***


 小屋に着くと、畑に植えた覚えのない小さな木が生え始めていた。

その木が生えている場所は、昨日いろんな木の実を捨てた場所だ。

山からいろんな木の実を採ってきて、

食べられるか食べられないかちょっとかじってみて、

ほとんど食べられなくて畑の隅に捨てておいたのだ。

その中のひとつから芽が出て、あっという間に成長したのだろう。


「お久しぶりでございます」


誰かに声をかけられて、左右を見たが誰もいない。

気のせいかと思い、小屋へと歩く。


「ご主人様、再会できて嬉しゅうございます」


俺は、声のした方を振り向くが誰も立っていない。

確かに聞こえた。

いまのは、なんだ。


畑の隅に生えたばかりの木が、のそのそと歩き始めた。

魔物だ。

まだ細い若木のトレントだ。

こっちに向かってくる。


「お忘れでしょうか。わたくしを」


「トレント? のミニ版」


「前世はトレントと呼ばれておりました。

けれども、わたくしはご主人様にここに植えられて

転生したのでございます」


ここに植えたというか、木の実を捨てたのは確かに俺だが。

ご主人様とはどうやら俺のことらしい。


「わたくしは前世ブラックダイヤモンドを守るために、

何百回、何千回と戦い続けておりました。

それはつらい毎日でした。

しかし、ご主人さまがそんな人生、

いや樹生からわたくしを救ってくださったのです」


「君を真っ二つに割っただけだけど。

それに、君のことをウザいと言った」


「そして、新しい生命をここに植えてくださった。

ここからわたくしの第二の樹生が始まるのです」


樹木の魔物が転生しただと?

確かに、小安峡ダンジョンで見たトレントと違って、優しい顔の木の爺さんだ。


「生まれ変わったばかりで体は若木だが、いきなり爺さん顔だぞ。

普通、生まれたては赤ん坊じゃないのか」


「成長が早いようで・・・」


「いや、老化だろ」


「オッホン!・・・とにかく、

ご主人様のお役に立てるように努めます」


「そのご主人様と呼ぶのはやめてくれないか。

俺はそんな器じゃないし」


「けれども、ブラックダイヤモンドをお持ちですよね。

その所有者でいらっしゃる。

わたくしはブラックダイヤモンドを守っていたように、

その所有者である方をご主人様と呼ばせていただきます」


「・・・なんか、よくわからないけど。言いやすいなら構わない。

で? トレントに何ができるんだ」


「トレントは前世の名前。

どうかわたくしに新しい名前をお授けください」


「名前かぁ・・・ムズイな。

だから、君はここでどんな仕事ができるんだ。

それによって考えてもいい」


「ご主人様のためになることでしたら、何でも。

そうですね、執事みたいな役割を」


「執事って、貴族が雇っているようなあの執事か。

たしかにこれから人手不足になりそうだし、必要だな。

具体的にはどんな仕事ができる」


「予算管理、ボディーガード、泥棒除け。

木で出来ている物や木の実から、

従者や労働者を作り出すことも可能です」


「それは助かる。

じゃ、執事の名前ね、執事の名前を付ければいいんだな」


「はい、ご主人様」


「うーん、うーん・・・・・、ダメだ。

いくら考えても執事といったら、セバスチャンしか思いつかない」


「セバスチャンもよろしいと思いますが、

できれば・・・もうひとひねりできないでしょうか」


「トレントだったセバスチャン。

長いな。

そうだ、トレスチャンはどうだ」


「トレスチャン。嬉しゅうございます」


「トレスチャン、さっそく仕事があるのだがいいかい?」


「なんなりと」


最近、第5層界に人が増えてきたので、セキュリティ対策したいと思っている事を俺はトレスチャンに伝える。

まずは、小屋と厩に鍵を付けること。

そして、畑と温泉に侵入者が来ないように見張りをたてること。

この二つは早急に取り掛かりたい事案だ。

それをトレスチャンに相談してみた。


「お安い御用でございます。」


そう返事をすると、トレスチャンはのそのそと小屋の玄関に向かって話しかた。


「おい、板でできた扉。聞こえるか? ご主人様の命令だ。

この扉に鍵を付けよ」


すると、玄関扉の木目に顔が現れた。


「はい、かしこまりました」


扉のどこからか枝葉がニュルニュルと伸びてきて、扉が開かないように絡みついてしまった。


「凄げぇ・・・魔術も使えるのか。

でも、開ける時はどうすればいいんだ、トレスチャン」


「ご主人様が手をかざしてくだされば、枝葉は引っ込んでなくなります。

扉はちゃんとご主人様の顔と手を認証します」


半信半疑で俺は扉の前に立ち手をかざした。

すると、枝葉はすーっと引っ込んで元に戻った。


「いかがでしょうか? ご主人様」


「うん、気に入った。だが、見張りはどうやって増やすんだ」


「わたくしと同じ土地に植えられた木の実たちがいます。

せっかく植えられた木の実たちです。新しい役目を与えましょう」


トレスチャンは、今度は畑のほうへのそのそと歩いて行って、地面に寝ている木の実たちに話しかける。


「おーい、新しいご主人様の命令だ。

早く目をさまして、この土地を守る番人じゃなくて番樹になっておくれ」


すると、畑の隅っこに転がっていた木の実たちが目を出し、ぴょこぴょこと木の形をしたミニトレントになった。


「はーい、お呼びですか」


「ふぁぁ、よく寝た、よく寝た」


「仕事だ、仕事だ」


こいつらにも名前を付けないといけないのかと、俺は困った。

それを察したトレスチャンが言う。


「これはわたくしの従者ですから、名前は結構でございます」


俺の表情で何を考えているかまで読んで、即答してくる。

トレスチャンは完璧な執事だ。


「あいがとう、トレスチャン。

彼らはミニトレントでいいか、安直だけどな。

ところで、君たちは樹木だから報酬は何がいいのかなぁ・・・」


「何も求めません。

使っていただけるのが何よりの報酬でございます」


「そうはいかない。

そうだ、井戸水を好きに飲んでいいよ。

あと、温泉の横に川があるからそこから引いている水も」


「そんな、よろしいんですか?」


「あ、俺が困らない程度にしてくれ。全員で飲まれたら枯れてしまう」


「よろしかったら、

川から水を引いている水で貯水槽作って貯めておきましょうか」


トレスチャンは頭も切れる執事だ。

彼はもう魔物ではない。

第二の樹生をここで生きてくれれば俺も嬉しい。

生まれたばかりで、いきなりジジイだが・・・


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


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