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みちのくダンジョン・ハイスクール・ボーイ~ランキングより好きに生きていいですか?何か問題でも~  作者: 白神ブナ
第2章 秘密のダンジョン第5層界快適化計画

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第37話 魔法の呪文と謎の紳士

 第5層界の小屋でスマホからテレビ電話で連絡すると、

ちょうどハヤブサが高級ホテルのラウンジで女性と別れて手を振っている場面が映し出された。


 女性がスマホの画面に映りこんでいるのに、

全く気にも留めずに電話に出るハヤブサ。

あいかわらずイケメンの彼は今日もクールだ。


「やあ、最上君」


「あ、今取り込み中でしたか・・・かけ直しますけど」


「ちょうど雑誌の取材が終わったところさ、

女性誌で特集記事を組むんだって。

インタビューを受けていて、担当記者が帰ったところなんだ。

ところで、ダンジョンで鉱石は手に入ったのかい?」


ハヤブサの特集記事だって?

人気配信者の日常を垣間見たような気がした。

俺には縁遠い世界だ。

そんなハヤブサから直々に魔法を教えてもらうなんて、なんて恐れ多いことをお願いしたのか。


「で? 何を作りたいんだね」


高級ホテルのラウンジテーブルに残っていたコーヒーを一口すすって、ハヤブサは本題に入った。


「あの、そんなところでハヤブサさんの魔法を披露しちゃっても、大丈夫なんですか?」


「ここに、魔法の資材である鉱石はない。

呪文の唱え方を教えるだけだから、魔法は発動しないよ」


ホテルのラウンジで魔法を発動させても大騒ぎにならないと聞いて、安心した。


さっそく、ハヤブサに言われた通りに手のひらに乗るサイズの鉱石を手に持った。

そして、落ち着いて深呼吸をし、作りたい物のイメージを膨らます。


「慣れないうちは、精神統一するのが大変だ。

いろんな雑念が入ってきちゃうからね。

イメージは出来たかい?」


「はい」


「呪文を言うよ。

ジェネラ・チョッキ・デシデリ」


「は?・・・すみませんが、もう一度言ってもらえますか」


「ジェネラ・チョッキ・デシデリ」


「ジェネラ・チョット・デリシャス」


「おいおい、何だねその言葉は。似ているけど違うね。

最上君、今君はお腹がすいているだろ」


「よくわかりましたね、ハヤブサさん」


「おいしいジェラードが食べたくなったんじゃないかい?」


「すごい! ハヤブサさんは読心術もできるんですね」


「こんなのは読心術ではない。

君の発したくそでたらめな呪文を聞けばだれでもそう思う。

こっちは忙しい合間をぬって呪文を教えているのだ。

まじめにやってくれないと困るよ」


「まじめですよ。ただ聞きなれない言葉は覚えられなくて。

紙に書いてもいいですか?」


「だめだ。呪文は口伝だ。紙に残したものを誰かが見たらどうするのだ」


言われてみればその通りだと納得し、もう一度だけハヤブサに教えてもらう。


「ジェネラ・チョッキ・デシデリ」


「ジェネラ・チョッキ・デシデリ」


何度か繰り返しているうちに、やっと魔法を発動できた。

俺の手に乗っていた鉱石は、空き缶になった。


「空き缶か? 失敗したな」


「いいえ、これ成功です」


「ええ? 君は空き缶を作りかったのかい?」


「そうですが・・・なにかマズいんですか」


「空き缶なんか作ってどうするつもりだ」


「これに、水やコーヒーを入れて自動販売機で売ります。

ダンジョンに人が増えたら、飲み物は絶対欲しがると思いませんか。

これで大儲けはできませんが、そのあと誰かが真似してくれればいいんです。

俺の目的は空き缶回収ですから」


「空き缶回収が目的だって?」


「自然保護のため、ゴミの投棄場所は一か所に決めます。

みんなゴミは捨てたくなるから、それをタダで回収します。

回収された空き缶はまたエネルギーに、再生可能エネルギーです。

これなら、経済が回るでしょう」


「どうやら、冗談を言ってるわけじゃないようだね。

君の理解不能な発想には驚かされる」


俺が夢を語っている間に、小屋の外から桜庭の声がした。


「最上君、お兄ちゃんとの電話おわったぁ?」


「まだだけど、どうした?」


「知らない男の人が畑の前に立ってて、話しかけられた」


「なんだって?」


また新しい住人がやって来たというのか。

物騒な奴だったら嫌だな。


俺よりも驚いて大騒ぎしている人がいる。

それは、スマホ画面に写っているシスコンのハヤブサだ。


「あずさ、あずさ、危険だから知らない男の人と話しちゃだめだよ。

なんてことだ。わたしがいない時に・・・・

も、最上君、どういう男か私も確認したい。

このままスマホで映しながら、男のところまで移動してくれないか」


「わかりました」


俺は床に転がっていたバットを拾って、小屋の外に出た。



 トウモロコシ畑の向こうに、シルクハットとハンチング帽が揺れている。


「ハヤブサさん、二人組のようです」


二人組は争うような声で話している。


「だから、言っておくが、くれぐれも失礼のないようにしてくれ」


「ほんとに、さいじょうの館はここでいいんですか? 

あの女の言うことを信用して大丈夫なんですかね」


「あの女とは何だね。

ジュリアのことをそんな呼び方するとは、

身分をわきまえたまえ」


この小屋を『さいじょうの館』という呼び方は、

ジュリアがここをはじめて訪れた時に、最上を『さいじょう』と読み間違えたとき以来だ。

ジュリアという名前を出しているし、ジュリアの知り合いなのか。


「何か御用ですか」


俺は右手にバット、左手にスマホを持ちながら男たちに声をかけた。


「はじめまして、君がここの家主かね」


スーツ姿の男はシルクハットを取って、俺に挨拶をした。

紳士的な態度に、俺は少しだけ拍子抜けする。


「家主っていえばそうですが、あの、どちら様で」


「失敬したね。こちらから名乗るところを・・・」


その名前を声に出したのは紳士ではなく、スマホの中のハヤブサの方だった。


「エバンス! ジョン・エバンスじゃないか!」


「ハヤブサさんの知り合いですか?」


エバンスと呼ばれた紳士は、スマホ画面のハヤブサに気が付いて俺に近づいてきた。


「ミスター・ハヤブサ! なぜ、こんなスマホの中にいるのかね。

魔法で閉じ込められたのか」


「エバンス、相変わらず冗談きついな。元気でしたか?」


「ああ、ロンドンでは忙しくしているよ」


「どうやってここへ?」


「あるご婦人から、このダンジョンのことを聞いてね。

付き人のブラウンと探索に来てみたんだ。

さいじょうの館というところへ行くと面白い人物と出会えるとか」


「面白い人物って、このスマホに閉じ込められている人ですかい?」


付き人と呼ばれたハンチング帽の男は、まじめな顔をして紳士に聞いた。


「失礼なことを言うもんじゃない。

スマホに写っているのは、わたしの仕事仲間のハヤブサだ。

ところで、ハヤブサこそどうしてこんなところで・・・」


「妹の友達が、このダンジョンを発見していろいろと開拓しているんだ。

わたしは仕事があって、今日はそちらに行けないんだが、

エバンスが来ると知っていたら、仕事をキャンセルしてでも、行けばよかった」


新しく第5層界に現れた男は、ハヤブサの知り合いだった。

スマホ画面からの久しぶりの再会に盛り上がる二人に、スマホをただ持ち続けている俺はだんだんしらけてしまう。

俺の後ろに隠れている桜庭に気が付いた。

ハヤブサのことは妹である桜庭にお願いするのが一番得策だ。


「桜庭、このスマホ持っててくれ。

俺は小屋に戻って荷物を整理するから」


「ちょっと、最上君待って。

あ、お兄ちゃん、最上君が小屋に戻っちゃうわ。

やだ、いいかげんにして、お兄ちゃん。

このおじさんたちは、お兄ちゃんに会いに来たんじゃないでしょ。

最上君に会いに来たんじゃないの。もう!」


「あ、ごめんなさい。あずさ、お兄ちゃんが悪かった。

最上君、エバンスを紹介するよ。

エバンス、この少年が妹の友達の最上君だ」


「ハヤブサのお弟子さんかね。

わたしはジョン・エバンス。ロンドンから来ました。よろしく」


「あ、最上忍です。よろしく」


俺は桜庭を見て、促した。


「桜庭、もう帰ろう。家に戻らないと爺ちゃんに叱られる」


「そうね、わかったわ。

おじさんたち、ごめんなさい。タイムアップです。

お兄ちゃんもこれでスマホは切るからね。

最上君と一緒にペンションへ戻るわ」


「あずさ、待ってくれ。怒ってるのか?」


「いいえ、ちっとも怒ってないわ」


こういう言い方をするときの桜庭は、たいてい怒っている。


「エバンスさん、ブラウンさん、また後日来てください。

今日はもう閉店です」


「閉店? ここは店なのかね。最高ランクのホテルかと思っていた」


ジュリアと同じことを言う。

この小屋のどこがホテルに見えるんだ。


激しく後悔し、妹に謝っているハヤブサを画面いっぱいに映し出しているスマホ。

その電源を容赦なく切って桜庭は言った。


「帰ろうよ、ペンションに」


そうだ。

今日は魔法を覚えるのに疲れた。

早く帰って婆ちゃんが作ったジェラードを食べて、ゆっくりしたい。


「じゃ、エバンスさんたち。ごきげんよう」


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ってくださったら


下にある☆☆☆☆☆から、

ぜひ、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、

つまらなかったら星1つ、

正直に感じた気持ちでちろん結構です!


ブックマークもいただけるとさらに泣いて喜びます。


何卒よろしくお願いいたします。


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