第28話 小松先生と爺ちゃんの協力
【第二章 秘密のダンジョン第5層界快適化計画】は、第5層界が舞台の中心になります。
戦闘シーンよりもスローライフ系の話が多いですが、癖のある新しい登場人物が出てきて最終章へつながります。
コツコツと更新しますので、お楽しみください。
―ステイタス画面―
名前 :最上忍
ジョブ:実習生
ランク:C
レベル:27
ゴールドポイント:22760pt
*特別ミッション、クリアしました。
小安峡ダンジョンを攻略。おめでとうございます。
獲得アイテム:ブラックダイヤモンド(あらゆる魔法、使用可)
ステイタス画面を確認していた。
迷宮探索者としてダン技研に登録している者は、獲得した魔石を提出し、日々レベルアップに努めなければならない。
つい最近まで、ダンジョン探索はポイ活だと勘違いしていた俺にとって、その務めは重荷だ。
ランクやレベルが上がることにちっとも喜びを感じない。
数値が上がるよりも、ダンジョンで動き回る事そのものに喜びを感じているのに。
それに、一緒に探索できる仲間ができたことが何より嬉しい。
俺は、今まで通り俺流でやって行くつもりでいるが、それじゃダメなのかな?
教えて、偉い人。
新しく来た臨時講師の小松先生なら、俺の相談に乗ってくれるかもしれない。
生徒指導室と書かれた部屋に、俺と小松先生は向かい合って座っていた。
生徒指導室って名前が、なんだか印象よくない。
まるで取り調べ室みたいだ。
「相談って何かね。最上君からわたしに相談なんて珍しいね」
「小松先生以外に、相談できる人がいないんです」
「どんなことでしょう。わたしが力になれることなら協力しますよ」
「あの、ブラックダイヤモンドもダン技研に提出しなくちゃいけないんですか?」
「ブラックダイヤモンドだって?
手に入れたんですか? 凄いですねぇ、一人で?」
「いいえ、東京校の先輩たちと一緒に」
「ああ、先日校門にいたブロッケンとユズリハですね。
三人でダンジョン探索して、
君がブラックダイヤモンドを手に入れたということですか」
「いろいろ事情はありますが、結論を言うとそういうことです」
「・・・・事情ねぇ。では、わたしも結論から言いましょう。
ブラックダイヤモンドを提出する必要はありません」
「え、いいんですか?」
「ご自分で持っていなさい。
ブラックダイヤモンドはあらゆる魔法を使えるアイテムですから」
「持っていていいんだ」
「ブラックダイヤモンドよりも問題は別にあるんですよ。
本当はね、最上君のレベルは上がっているだろうから、
ステイタス画面を読み取る必要があるのです。
するとまた文字化け配信者がランクアップしたってニュースになるでしょう。
今後、君がレベルアップするたびにランキングを公表するのは控えたいと思うんだ」
「いいんですか?そんなことして」
「本当はダメです。上に見つかったら・・・そうですねぇ、
君たちの言葉で表現するとヤバイってやつです」
「ダメだよ、そんなの。ちゃんと俺のステイタスデータを取ってください」
「実を言うと、これは君の父さんとも相談して決めたことなんです。
最上君の身を危険に晒すくらいなら、データは公表しないと決めたんです」
「父さんまで、ヤバくなるんじゃないですか」
「大丈夫です。全くデータを公表しないわけじゃないから。
毎週取っていたデータが三か月に一回程度に減るだけです」
「そうですか」
「それに、最上君はあまりランキングが好きじゃないでしょう。
数値でしのぎを削るよりも、探索そのものを楽しんでいるんじゃないかね」
「当たりです。それって、いけない事なんでしょうか」
「素晴らしい事です。最上君は本物の探索者だと、わたしは思いますよ」
「じゃ、今まで通りに探索していてもいいんですね。
そして、ランキングに文字化けが出るのは三か月に一度という認識であってますか?」
「そういうことです。
だから、心配しないで今まで通りに探索してください。
学生時代の経験は今しかできませんからね。
それに、もうすぐ夏休みじゃないですか。
自分がワクワクするようなことをどんどんやって、
楽しい思い出をたくさん作りましょう」
夏休み。
忘れていた。
夏休みに入ったら、自分がワクワクするようなことをたくさんやろう。
「ありがとうございました!」
生徒指導室を出た俺の頭の中は、ワクワクするようなアイディアで溢れていた。
秘密のダンジョン第5層界をもっと快適な空間にしよう。
友達を呼んで楽しく過ごせるような、俺たちの秘密基地みたいな場所に。
もし、他のダンジョンからやってくる人たちが増えたら、
喜んでもらえるような商売をして、将来は財を築こう。
ポイ活より面白そうじゃないか。
廊下を歩きながら妄想は膨らむ。
*
爺ちゃんの軽トラのラジオから軽快なテンポの曲が流れている。
爺ちゃんはその曲に合わせて鼻歌を歌って上機嫌だ。
『ルージュの・・・』なんとかと言う曲で、爺ちゃんの懐メロなのだそうだ。
先日、魔石を提出した分の報奨金が銀行口座に振り込まれ、まとまった資金ができたので、
爺ちゃんと一緒にホームセンターで買い物をすることにした。
ダンジョン第5層界快適化計画のため、必要なものを揃えるのだ。
もちろん、爺ちゃんと相談をしてどういう物がいいかはだいたい決めてある。
爺ちゃんもわからないことは、ネットで検索して調べてきている。
まずは、今まで発電エネルギーに使っていた魔石を全て提出してしまったから、野外での発電方法が重要課題だ。
持ち運び型(ポータブル型)ソーラーパネルで発電し、ポータブル電源に蓄電する。
この方法なら、晴天率が高く乾燥したあの土地でも問題なく使える。
昼間はポータブルソーラーパネルで充電、夜間はポータブル電源で電気を賄える。
あとは、薪を作ってストックしておくことにした。
「ダンジョンで発電すると言うけども、
迷宮探索者はそんなこともさねばねえのか」
「みんながみんな、そうではないよ。
野営するために必要なんだよ」
「ほう、そんなこともするのか。大変だなぁ。たまげだ」
「畑も作りたいから、野菜の苗も買いたいな」
「それなば、買わなくてもええ。
爺ちゃんの弟のところから分けてもらえばええ」
「本当?いいの? ありがとう」
ホームセンターの店内に陳列されているトイレに目が留まった。
今は簡易的に穴を掘ってトイレにしているが、トイレの快適化は重要なポイントだ。
「爺ちゃん、これ、コンポストトイレだって。よさそうだね」
「ダンジョンにトイレはねえのか」
「ないよ。大自然だもの」
「大自然なら、野原で用を足せばいいんでねが?」
「それが、臭いとかあるし、
もし友達が来た時にそれじゃ困るんだよね。
コンポストトイレはいいね。
排泄物は堆肥になるんだって。畑にも使えるじゃん」
「ほう、ええなぁ。へば、それは爺ちゃんが買ってやる」
「嬉しい! 自分で組み立てるからDIYセットで安いやつでいいよ」
「へば、友達が来た時に、
恥ずかしくねえように壁になるものも買ってやるべ」
トイレは自然に優しいコンポストトイレに決まった。
あと不安なのは、飲用水だ。
自分で井戸は掘ったものの、飲むのが不安で、生活用水にしたり、煮沸したりしていた。
「井戸水の水質検査キットだど。
これで検査すればええなでねえが?」
「爺ちゃん、ナイスです。よく見つけたね」
次に、リサイクルショップへ行って、何か使えそうなものを探した。
冷蔵庫が欲しいけど、電力がどこまで食うのか不安だ。
そういえば、俺には小安峡ダンジョンで手に入れた魔石が一個だけ手元に残っている。
小さい冷蔵庫を買って、それに魔石を入れて冷やす方法があるじゃないか。
小型冷蔵庫を爺ちゃんと見ていたら、隣に中古の自動販売機を見つけた。
これは使えそうだ。
俺が居なくても無人販売が可能になる。
絶対、人が増えたらこれは重宝がられる。
リサイクルショップは爺ちゃんの友達が経営しているから、相談しやすい。
「この自動販売機は動くんだろうね」
「もちろん動きますよ、最近まで現役でしたから。
でも、こんな中古の自動販売機をペンションに置くんですか?」
「んでねよ、おれの孫がよ。
ダンジョン快適計画だとか何とか言って、これが欲しいんだと」
「ちょっと意味がわからないけど、かわいいお孫さんの為だ。
小型冷蔵庫はサービスでいいですよ」
「あやー、申し訳ねえな」
やったね。
爺ちゃんと買い物しているともれなくお得なモノが付いて来る。
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