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みちのくダンジョン・ハイスクール・ボーイ~ランキングより好きに生きていいですか?何か問題でも~  作者: 白神ブナ
第1章 迷宮探索高専 東北分校

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第27話 ブラックダイヤモンド

 戦いは終わった。

宝箱の番人トレントを倒したが、ブラックダイヤモンドはブロッケンの手に中にあった。


ブロッケンは宝箱からブラックダイヤモンドを、取り出し、まるで鑑定するように眺めると、一言つぶやいた。


「あたくしのものよ」


「きれいな石ですねぇ」


「間抜けなこと言わないでちょうだい、ハチ王子。

これは単なる石じゃありませんわ。宝石ですの」


ブロッケンはそう応え、ユズリハのところへ近づいていて行く。

そして、もう一度ブラックダイヤモンドを眺める。


「御覧なさい。この美しいブラックダイヤモンドを。

この美しい宝石を手にするのは美しいあたくし以外にいるかしら。

これで、あらゆる魔法の力を手に入れることができるのよ。

素晴らしい! なんて人生は素晴らしいのかしら」


「ブロッケン、あなたのその素晴らしい人生とやらのために、

わたしとハチ王子を利用したのね。

配信を利用して宝箱の番人トレントをやっつける派手なシーンを撮影させておいて、

おいしいところだけ持っていく。

はじめからそのつもりだったのね」


「なに怒ってるのよん。

あなただってアクセス数が10万は行ったんじゃないの?

お互いよかったじゃない。ウィンウィンの関係だわ」


そう言いながらブロッケンはブラックダイヤモンドをベストのポケットにしまいこんだ。


「さぁ、戻りましょう。配信はここまでよ」


俺は茫然としたまま動けない。

信用していた先輩に利用されたことに、さすがに心が折れた。


「ハチ王子、あなたもう帰っていいのよ。

外でお友達とマネージャーが待っているんでしょ。

ユズリハもいい加減に配信を切りなさい」


「いいえ、このまま配信を切るわけにはいかないわ。

コメント欄が荒れているので」


「何よ。もうお見せするシーンはなくってよ」


俺はブロッケンに言う。


「そうだろうか。俺はそうは思わないな」


「は? あたくしと戦う気? 

武器を使える3年生に2年生が素手で勝てるとでも? 

もっと先輩を怖がった方がいいわ。

君のために言ってるのよ」

 

「別にあんたは怖くない。

手ぶらで帰ってうちのマネージャーに怒られる方がもっと怖い」


「ハハハ!言うわね。

じゃあ、トレントが倒れた跡に転がってる魔石があるじゃない。

あれは君にあげるわ」


「魔石か。

あれはどうせダン技研に提出しなきゃいけないんだよな」


「ハチ王子、魔石だけでも貰っちゃいなさいよ」


いや、そういう問題じゃないんだ。

魔石をもらえば解決するってものじゃない。

俺の折れた心は魔石じゃ晴れやしない。

このブロッケンというあざとい男に利用されて帰るのが悔しいのだ。


とはいえ、確かにブロッケンは強敵だ。

ここはひとつ深呼吸をして、自分を落ち着かせてからユズリハに確認を取った。


「先輩、一発こいつを殴ってもいいですか」


「先輩って? 誰? わたし?あ、そうね。こいつをボコボコにしてちょうだい」


「じゃ、遠慮なく」


ブロッケンの顔面目掛けて右の拳を振り下ろす。

と、見せかけて、左手で脇腹を狙った。


「おっと、猫だましのつもり?」


左手のパンチはブロッケンの脇腹をかすっただけだった。


「もう下手なお遊戯はおしまいかしら」


「いえ、もう一つ」


俺は左足で地面を蹴り上げ、砂埃を舞い上げた。

一瞬だけ、ブロッケンがひるむ。

今度は軸にしていた右足を左足に変えて、

右足で回し蹴りをブロッケンの顔に向かって一発・・・・

とっさに、後ろに身をそらしたブロッケン。

俺の右足は空を切った。


「惜しかったわね」


ブロッケンは無傷のままだ。

次に、すかさず右で渾身の手刀を振り下ろすと、ブロッケンはサーベルから剣を抜き、俺の咽で寸止めした。


「うっ・・・・・」


「これ以上はやめましょう。あたくしと同じ高校の後輩の血を見るのは嫌ですわ」


かなわない。

武器を持った三年生には。


「ま、参りました。降参です」


「フフフ、ききわけのいいお利口さんだこと」


「よく言われます」


「じゃ、ユズリハ。あたくしはこれで失礼するわ。

あんたも配信を切って帰りなさいよ」


「あんたに言われなくたって・・・・」


「あたくしは、この先、東京に戻ってやることがたくさんありますの。

じゃあね。バーイ」


ブロッケンは、そのままダンジョン出口に向かって歩き出し、見えなくなった。

俺は岩の壁に寄りかかったまま、しばらく動けないでいた。


樹木の精霊で宝箱の番人、トレントとかいう化け物と戦ったあと、ブロッケンにはブラックダイヤモンドを持ち去られ、気が付いたら結果無報酬だった。

残った力を振り絞って、トレントが残した魔石だけでも拾おうと地面に手を伸ばす。


「あいたたたた・・・」


ユズリハに向かってヨロヨロと歩いた。


「ハチ王子、ごめんなさい。こんなつもりじゃなかったの」


「何でもないよ」


ユズリハはカメラに向かって、リスナーに語りかけた。


「みなさん、ご視聴ありがとうございました。こんな終わり方になるとは予想していませんでした。お見苦しいところを見せてしまい・・・もう、この辺で配信は終わりに・・・・」


「ちょっ、待った」


俺は、ズボンのポケットから石を取り出して、ユズリハのリスナーさんたちに見せた。


(この石・・・・)

(魔石じゃないぞ。これは、ブラックダイヤモンド!)

(え?マジか?どうやって)

(ブロッケンから奪った?)


ブラックダイヤモンドは、俺の親指と人差し指の間で怪しい輝きを放っていた。


「ハチ王子、いつの間に! ブロッケンから取り返していたの?」

「ああ、運も悪いが手癖も悪いようで」


ブロッケンに猫だましと言われた技のとき渾身の一撃を外したふりをして、実は彼のポケットからブラックダイヤモンドをかすめ取っていた。

手に入れてしまえば、もう戦う必要はなかったのだが、念の為に演出用に回し蹴りする真似だけはしておいた。

さすがに、剣で咽を切られそうになったときはビビったが。

あとは、すぐに降参して、ブロッケンに立ち去ってもらえばいい。

そこまでが俺の策だった。


(こいつ、最高じゃん!)

(すげえ! ハチ王子かっこいいじゃん)

(ユズリハ、お願いだからこいつに惚れないでくれ)


ユズリハ・チャンネルのコメントが物凄い勢いで流れて行く。


(ブロッケン、ざまあ)

(今頃悔しがってるんじゃない?)

(いや、まだ取られたことに気が付いていないかもな)

(笑えるーww)


「てなわけで、ユズリハ先輩、これは報酬としていただいていいですよね」


「もちろんよ! みんなもOKよね。・・・・ほら、リスナーさんたちもOKって言っているわ。みなさん、ありがとうございます。それでは、ここで配信は終了します。

あ、そうだわ。その前に、またよかったら配信に出てもらえませんか?」


「それはちょっと・・・・」


「マネージャーを通すんでしたね。ごめんなさい、直接交渉しちゃって」


「別に」


 小安峡ダンジョンを出ると、配信を見ていた狩野と桜庭が駆け寄って来た。


「おかえりーーー! 無事に帰って来てよかった」


「おう、自分でもそう思う」


そのタイミングで『大噴湯』が勢いよく噴き出した。


ビシュー!!!


「うわっ! これお湯じゃん。温泉が噴き出してんのか」


小安峡も俺たちの無事帰還をお祝いしているようだ。


桜庭が急に叫び声をあげた。


「忘れたぁ!」


「何を?」


「田舎者と呼んだのを謝罪してもらうこと」


「わたしがブロッケンの分も謝るわ。

ごめんなさい。田舎者と呼んで本当に申し訳ありませんでした。

東北にもハチ王子みたいな素敵な人がいるのね」


「いや、俺、東京出身だけど」


「え? そうなの?」


桜庭がどこから持ってきたのかピーっと笛を吹く。


「ハイ、お二人さん、そこまでぇ。

そこ、離れてください。仕事はもう終了しましたぁ」


「少しぐらい話したっていいでしょ。ケチ」


「ユズリハさん、ハチ王子にお姫様抱っこされたでしょ。

それも私の時よりも長く。

もう十分スペシャルサービスしましたから。

ここでタイムアップです。

ハチ王子には次のスケジュールがあります」


次のスケジュールって何だ。

俺は聞いていないぞ。

桜庭、適当なこと言うな。


「そうそう、次は畑仕事でーす」


狩野がそう言いながら手を挙げる。


「そうだった! 狩野よく教えてくれた。

俺、畑に行くんだった。

じゃあな。爺ちゃんの軽トラが待ってるから、俺は帰る」


「え、マジだったか。冗談で言ったのに・・・」


俺は残念な顔して見送る仲間を小安峡に置いて、爺ちゃんが待つ軽トラへと急いだ。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ってくださったら


下にある☆☆☆☆☆から、

ぜひ、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、

つまらなかったら星1つ、

正直に感じた気持ちでちろん結構です!


ブックマークもいただけるとさらに泣いて喜びます。


何卒よろしくお願いいたします。


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