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みちのくダンジョン・ハイスクール・ボーイ~ランキングより好きに生きていいですか?何か問題でも~  作者: 白神ブナ
第1章 迷宮探索高専 東北分校

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第15話 無事生還したのに


 やわらかい朝の光で目が覚めた。


「もう、朝か。いつものルーティンをこなすか」


俺はベッドではなく寝袋で寝ていたことに気が付いた。

目の前の景色が自分の部屋とは違う。

ここは小屋だ。ダンジョン第5層界の。


思い出した。

野営訓練の途中でムーミン谷ダンジョンに迷い込んでしまったのだ。

で、どうやって帰ろうかと考えているうちに寝ちゃったってことだ。


とりあえず、ルーティン通りに行動する。

この小屋に作ってある流し台で顔を洗って、家から持ってきて置いてあった歯ブラシで歯を磨く。

水は井戸を掘ってあるから、自由に使える。


身支度をととのえたら、右手を振ってステイタス画面を出す。


『新しいダンジョンを見つけました。おめでとうございます。

ボーナスポイント、300ptが付与されました』


よっしゃ! 朝からガッツポーズできて、幸先がいい。


『デイリーミッション:転移石でスタート地点に移動、協力者をみつける』


協力者? 協力者ってなんの事だ。

まあ、たいてい朝の時点ではミッションの意味がよくわからない。

帰ればなんとかなるだろう。

こんな風に、いつも楽観主義で俺は今までなんとかやってきた。


それで? 転移石というのは、狩野からもらった石の事かな。

まさか、あんな石っころでムーミン谷ダンジョンまで戻れるとか?

ご冗談はよしこさん。


俺は、ポケットから狩野からもらった石を光に透かせてよーく見てみた。

吸い込まれそうな瑠璃色をしている。

この石は2個もらっていて、もう1個はムーミン谷ダンジョンに忘れてきたリュックの中に置いてきた。

もしかして、転移発動とか言えば転移出来たりして。


「転移、発動」


突然、俺の身体は小屋から別の世界に引っ張られていく

マジか。




気が付いたときには、俺はムーミン谷ダンジョンに置き忘れたリュックの側にいた。

ここまで戻っていた。

すごい、やってくれるじゃん狩野。

この2個の転移石が、スタート地点と転移先になっているのだ。


「狩野の言う通り、何かの役に立ったよ」


あとはこの穴から脱出すればいいのだけれど。

しかし、そんなに深くないと思っていた穴が意外とそうではないことに気が付く。

手を伸ばしても穴の入り口には届かない。

ジャンプして穴の淵までなんとか届いたが、指先だけで体を支えるのはつらい。

落ちそうになるところをなんとか頑張ってぶら下がる。


指先が限界だ。

頑張れ、俺。


すると、誰かが俺の手を取って引き上げてくれた。

どなたか存じませぬが、仏様のような方、ありがとう。


「最上君、大丈夫か」


地上に引き上げてもらって、仏様の顔を拝んだらハヤブサだった。


「ハヤブサさん、どうもありがとう。

それにしても、どうしてここに俺がいるってわかったの?」


「妹から連絡があった。最上君がムーミン谷から戻ってこないと」


戻ってこない?

野営訓練だから野営してたのに、何故心配されるのだろう。


「とにかく、無事でよかった。

ここからスポーツセンターまで戻るんだろ。一緒に戻ろう」


「すみません」


「君の為じゃない。わたしは妹のためにやったんだ」


あ、そうですか。

てっきり仏様かと思ったけど、この人、シスコンだった。


登りにあれほど苦戦した水沢ルートだったが、帰りは下りなので笹さえよければ楽に下山できた。


「こんな道を、君はよく登れたなあ。誰も登山している人はいなかっただろ」


「はい、誰も」


「このルートを決めたのは先生か? 

無茶なことをしやがる。高校生が一人で登るルートじゃないだろ」


「はあ、そうかもです」


登山口まで戻ってくると、ハヤブサさんはちょっと用事があるからと言って、俺と別れた。

こんなところに何の用事があるのかわからないが。




なんとかスポーツセンターまで帰って来た。

二年生クラスは全員広場に集まって、先生の説明を聞いているところだった。


「あ、最上が戻って来た!」


「最上が帰ってきました、先生!」


「きゃー、生きて戻って来た。よかったわ」


そんなに歓迎してくれるのか。


「最上、どこに行ってたんだよぅ!」


狩野が泣きながら抱き着いてくる。

いや、おれはそういう趣味はないって断ったはずだ。

それにしても、みんな大騒ぎしすぎじゃないか?


「最上君・・・・よく無事で・・・」


桜庭まで泣いている。

君のお兄さんに助けてもらったんだよと言いかけたところに、

先生が遮るような形で俺の前に立ちはだかった。


「計画書通りに行動しない奴は失格だ。今まで何をしていた!」


「え、野営してましたが」


「計画書には、テント設営が終了したら

スポーツセンターに戻ってきて報告すると書いていなかったか」


「そうでしたっけ」


「テントはそのままにし、センターで夕食、宿泊。

朝に説明もしたはずだ。最上、お前まさか聞いていなかったのか」


「そうなんですか。

野営だから、てっきりテントで野営して過ごすものだと思ってました」


狩野が俺の発言に驚いて言う。


「ここでは、煮炊きが出来ないからと先生はおっしゃってたじゃないか。

僕たちはスポーツセンターで夕飯を食べて、温泉に入ってセンターに宿泊したんだ」


何だって? 俺だけずっと野営していたのか。

みんなはスポーツセンターに戻って夕食と温泉だっただと?

でも、俺もダンジョンで温泉に入ったが。


「夕飯はうまかったぞ」


俺のジャガイモのスープだってうまかった。


「デザートにプリンが出たし」


何?プリンだと。

さすがにダンジョンにデザートは無かった。

プリンが出ると知っていたなら、急いで戻って来たのに、

なんで教えてくれないのだ。


「すべては、行動計画書に書いてある通りだ。

読んでいなかったのか、最上」


先生の鋭い指摘に、俺はドキッとした。

行動計画書なんてリュックにしまい込んだままで、ムーミン谷ダンジョンに置きっぱなし。そして転移していましたなんて言えない。


詰んだ。


「お前は本当に落第生だな。

とにかく、学校の備品をここに出しなさい。

ちょうど備品の数を確認していたところだ」


備品? ああテントか。

使わなかったけど、それは内緒にしておこう。

俺は、皆が種類ごとにまとめて置いてある場所に、テントを置いた。


飯盒。

これも未使用だ。


ランタン。

これも未使用。


寝袋。

これは使った。使ったけれどもどこだ。

あ! しまった、第5層界の小屋に忘れてきてしまった。


「最上、寝袋を出しなさい」


「すみません、忘れました。すぐ取りに戻ります」


「お前バカか! 今から取りに行ったらここに戻るまで日が暮れてしまう」


「いえ、たぶん、大丈夫だと思います」


「お前はどこまで能天気なのだ。

じゃあ、やってみろ。先生は責任とらないからな」


「はい」


俺はダッシュで駆け出して行った。

ムーミン谷と反対の方向へ。


「最上! 家に帰る気かお前。逃げるんじゃない!」


先生が叫ぶ声が聞こえたけど、俺には俺の考えがあった。

いつもの秘密のダンジョンから第5層界に行けば早い。

なにも山登りしなくても寝袋は取りにいけるのだ。


ダッシュで第5層界の小屋にたどり着く。

馬たちが喜んですり寄ってきたが、今はそれにかまってやれる余裕はない。

寝袋を急いで丸めて小屋を飛び出し、

猛スピードでスポーツセンターまで戻って来た。

秘密のダンジョンが近くで助かった。


肩で息をしながら、先生に寝袋を差し出す。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・・お待たせしました。これです」


「お前、家に取りに戻ったのか?」


「違います」


先生は、寝袋に『迷宮探索高専 東北』の文字をみつけて愕然とした。


「確かに、うちの学校の備品だ。

怪しい・・・・お前はムーミン谷で野営しなかった。

家に帰っていたんだな。

全く! 野営訓練をなめるんじゃない!」


「ムーミン谷に行きました」


「嘘をつくんじゃない」


「本当です。写真だって撮ってます」


俺は、携帯で撮ったムーミン谷の写真を見せる。


「これはいつの写真だ」


先生はまだ疑っている。

野営したのはムーミン谷ではないダンジョンで、家には帰っていない。

それを説明したところで、どこまで信用してくれるのか。

無理がある。

俺だってそう思う。

だが、本当に俺は一人でムーミン谷に行ったんだ。

誰か俺の無実を証明してくれ。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ってくださったら


下にある☆☆☆☆☆から、

ぜひ、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、

つまらなかったら星1つ、

正直に感じた気持ちでちろん結構です!


ブックマークもいただけるとさらに泣いて喜びます。


何卒よろしくお願いいたします。


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