第119話 魔王が崩壊する呼び名
閃光を放ち、瞑層界宮殿が吹き飛ぶほどの大爆発だった。
これは、俺の体のプラズマによって起こした爆発だ。
魔王もろとも爆破して、俺は塵となって消える。
…はずだった。
*
目を覚ます。
俺の横に、元のサイズに戻った魔王が倒れている。
何だ、俺も魔王も死んだのか。
って、ことはここは天国か。
いや、魔王は天国に行く資格なんてそもそも無いしだろ。
じゃ、ここはどこだ?
「ハチ王子……、気が付いたか?」
ドンパンが目を真っ赤に泣きはらしながら、俺の顔を覗き込んだ。
「ドンパン… 俺は…塵になったはずなんだけど」
「ああ、そうだよ」
「自爆したはずなのに」
「ああ、そうだった。驚いたよ」
「俺の体が、吹き飛んでいない。五体満足だ。なぜだ」
「魔王が、空中に飛び散った光の粒子を、
必死にかき集めて、蘇生魔法を使ったんだよ」
「蘇生魔法?…で? その、魔王は?」
ドンパンはうつむいた。
「……」
「俺を蘇生させ、魔王は死んだとか」
「……」
「魔王は瞑層界の苦しみから解放されたのか」
「……」
瞑層界で何千年も生き延びるのは苦しみだと思った。
これでいいのだ。
いいはずだが、なぜ魔王は蘇生魔術を俺に施したのだろう。
なんだかモヤモヤする。
「どうして俺だけ生き返るんだ。全然意味ないよ!
蘇生させるんなら、責任取れよ。
魔王…マオ…爺ちゃん」
怒鳴っても、魔王が目を覚ますことは無かった。
「おかしいだろ! 俺はやっと会えた子孫じゃないのか。
だめだよ、後継者に何も引き継ぎしないで逝くなよ。
マオ爺ちゃんがいなくなったらダンジョンの運営はどうするんだよ」
モヤモヤの原因は、魔王を倒すことが幸せだという勘違いにあった。
魔王はどんな気持ちで俺がここに来るのを待ちわびていたんだろう。
後継者なんて、俺じゃなくてもいいはずだ。
「マオ爺ちゃーーん!! うわぁーーん」
ドンパンはうつむき肩を震わせている。
「マオ爺ちゃんって……、お前…、」
俺は魔王の手を握りながら号泣した。
その手はまだ温かかった。
すると、
「…おい、倒された魔王は、冥層界の苦しみから解放されるとでも?
そう思って捨て身にでたのか。
最上忍はわしの想像を超えるバカだな」
「え?」
その声は魔王だ。
「ドンパン、それにしても、お前の芝居は臭かったな。どうにかならんか」
「芝居じゃありませんよ。
事実、ハチ王子を蘇生していたじゃないですか。
わたしは魔王が死んだとは言っていませんからね。
勝手にハチ王子が勘違いしただけですから。
笑い堪えるのに必死だったんですよ、こっちは」
ドンパン? 笑いをこらえるって言ったか?
演技だったのか?
だが、不思議と怒りは湧いてこない。
むしろ、ホッとしていた。
「それにしても、マオ爺ちゃんはいただけないな。
独演会の聞いていなくてもいい部分だけ、覚えやがって」
「だって、あの場面は印象に残ったから。
それに、魔王のお爺ちゃんでは呼びにくいし」
「もうそれは、呼ばなくていい」
……そうかなぁ。ナイスな呼び名だと思ったんだがな。
「一番強い者とは、
生き残ったやつだとお前は言わなかったか」
「言った」
「愚か者め!!
そう発言した本人が、命を捨てる方法をとるとは何事だ。
お前は、一番強い者ではなく、一番愚かな者だ。
そんな奴は、後継者失格だ」
「よく言われる。学校では失格って」
「最上忍がどれだけ最強なのか、伝わらん者に構う必要は無い。
わしを倒すときにみせたお前の目は、わしだけが知っていればよい。
一番愚かな行動だが、
他人を助けるために命を捨てる行動に勝る愛はない…
と聞いたことがある」
「愛なんて言葉を魔王が言うのは、おかしくないっすか。
あの行動は、俺の身勝手な理由だから」
「ふん、そんな身勝手な理由で、今までわしを倒した奴はいない」
魔王は満足したような顔をして、俺の頭を撫でた。
「わしはまた長期休暇をとって復活する。
毎度毎度のテンプレだよ。いつものことだ。
あ~あ、それにしても久々に激しくやりあった。
あ痛いたたた」
魔王は腰を押さえながら、起き上がった。
「マオ爺ちゃん、大丈夫?」
俺は魔王の背中を支えた。
魔王は、両手で顔を隠して震えはじめた。
なに、また激怒されるのか?
「う、う、う…またその名で呼ぶ」
今度は泣いてる?
さっきから、いろいろと紛らわしいな。
「マオ爺ちゃんと呼ばれると、魔王としてのわしが崩壊する。
マオ爺ちゃんだと?
ふむ、それも、悪くないかもしれん。
不思議と、温かいものが体中を巡り芯から心地よい。
こんな気持ちは何百、いや千年ぶりだ。
ありがたい。
魔王になったわたしに、こんな人間らしさが残っていたとは。
最上忍を産み育ててくれた人間どもに感謝する」
魔王は『感謝』という言葉を使った。
「人間のお爺ちゃんは、俺をダンジョン探索者にするために、
肉体を徹底的に鍛えてくれたんだ。
マオ爺ちゃんは、俺に異能とスキルを与えてくれた。
そのおかげで、今の俺があるんだ。
俺にとっては、どっちの爺ちゃんも大切だ。
だから、どちらかでも倒れられたら困る」
「そうか。じゃあ、もう捨て身はするな。
そんなことしたら、ショックのあまり両方の爺ちゃんが倒れるぞ」
ドンパンは俺に耳打ちした。
「ハチ王子よかったな。魔王が自分のこと爺ちゃんって言ったぞ」
「俺は君と違って演技じゃないからな」
「はいはい。そうですか」
魔王は立ち上がった。
そして、宮殿の奥の方に控えている家臣たちに聞こえるように言った。
「さて、これから、わしは長期休暇に入る。
魔王の座を降りることは、まだまだない」
「長期休暇ってどこで?
どこかの病院に入院しちゃうのか?」
「ハハハハハ……入院はしない。自然回復するからな。
いつも通り、わしの静養の場所として作った第5層界に行くのだ。
ん? 待てよ、わしの第5層界には、
今ではかなりの人間どもが住み着いているではないか。
ううーーん、どこで静養すればいいものやら」
「申し訳ございません! 俺が勝手に第5層界を開拓したせいです。
待って…それなら、最上の館という俺の小屋で静養すれば?
第5層界は、もともとマオ爺ちゃんの静養地なんだから、
自由に使っていいんだよ」
「最上の館というのは知っている。最上忍が作った小屋だろう。
そこでトレントが、君の執事として生まれ変わっているのも知っておるぞ」
「あ、そうそう、注意事項。
トレスチャンはよそ者を絶対敷地内に入れないからね。
マオ爺ちゃんが来たら、つるし上げてしまうかもしれない。
参ったな、何かいい方法はないかな」
「ふっ、わしを誰だと思っている。
魔物を統括している魔王だぞ。
トレント…いや、トレスチャンは
わしの顔を見れば魔王だとわかるであろう。
あとは、何かこう、最上忍の敵ではないと証明できる何かがあれば。
それを見せて、トレスチャンに説明すれば
あいつだって納得するのでは」
なるほど、そういう方法があったか。
でも、俺の敵ではないと証明できる何かって、あるのかな。
アイテムボックス画面を開いて、中に入っている物を調べてみた。
「これしかないなぁ。学校の上履き」
それを見て、ドンパンはドン引きした。
「それはないだろ」
「面白かった!」
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