第112話 熱く燃えて
マグマが流れているダンジョンの第9層界。
絶壁に沿った細い道を慎重に歩く。
俺は高専の制服姿のままで、ズボンの裾だけ地下足袋の中に入れているから、奇妙な格好なんだろうなぁ。
こんな姿で死にたくないなぁ。
でも、マグマに落ちたら一瞬で骨になるから気にしなくていいのか。
いや、死ぬなんて考えるのは止そう。
絶対に生きて帰れるに決まっているんだ。
今にも崩れそうな細い道を進みながら、俺はそんなことを考えていた。
一方、岩壁にへばりつきながら、必死に俺に付いて来る怪盗ドンパンは、
ヘリコプターの中で見せたような余裕はない。
「ここで石橋を渡りまーす。
一気に加速しないと崩れるから気を付けてください」
「やたらと上機嫌だな、ハチ王子」
「久しぶりのダンジョン探索だもんで、ワクワクしちゃって」
「ワクワクだと? こっちは汗でドロドロだぞ」
「四の五の言わずに渡りますよ。いっせーのせ!」
「うわぁ、待て」
マグマの川に架かった石橋を、加速をつけて走り抜ける。
俺の後にいるドンパンが通過したところから、次々に石橋はボロボロと崩れていった。
崩れた石は、下を流れるマグマの川に落ちる。
ドボン、ドボン……
「ひえーーーーー!!!」
石橋を無事に渡り切ったところで、俺は急に足を止めた。
加速したドンパンの足は急ブレーキが間に合わなくて、俺に衝突。
「あ、痛っ! 急に止まるな」
「いいですか。ここから、一歩でも前に進んだら落とし穴ですから…」
「はぁ?」
話を最後まで聞かずに一歩進んだドンパン。
足元の岩が崩れて、落とし穴に落ちた。
アーメン。
「……、っつか、早く言え」
落とし穴の縁に指三本でぶら下がって、間一髪落ちずに生きていた。
「さすがっすねー。怪盗ドンパンは反射神経がいい」
「褒める暇があったら、引っ張り上げろ。
足が、足が……、オーブンで焼かれているようだ」
「なんで上から目線で命令するんですか。
そんな言い方されたら嫌な気分になるんだよな」
「わかった。助けてください、ハチ王子さま。早く、早く」
「ふむ、余熱でじんわり火を通して、
ふっくらと焼き上げたドンパンっておいしそうな名前」
「お願いします。バイト代を倍にします」
「やったー。それ、絶対な」
ドンパンの腕を引っ張って、岩場に戻してやった。
彼の紳士的な白いスーツは、汗と炎でカーキー色に変わっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ……、この先も、まだあるのかい?
時間外労働手当だけじゃ割に合わないな。
エバンスに特別料金を上乗せして請求しよう」
「生きて帰れればね」
「もちろん、生きて帰るのだ」
「よーーし! その意気、その意気。ドンパン、燃えてきたね」
「ああ、とっくに靴は燃えてしまったがな」
マグマが流れる岩盤は、いたるところにトラップがある。
俺の記憶しているトラップの場所を、ドンパンに教えながら前に進んだ。
「そこ右! そこ左! 斜め後方に下がったら危険!
できるだけ、俺の足跡を踏んで」
スパイク付きの地下足袋だから、うまい具合に足跡が付いた。
まさか、俺を拉致した奴を助けるために地下足袋が役に立つとは……。
「さてと、ここから先が未踏の地なんだ」
岩場が終わる地点から先は、石段が続いていた。
「ただの階段じゃないか。もしかして、この階段が崩れるとか?」
「階段は一つのようで、実は四つある。
この階段はパズルのように途中で消えたり、現れたりするんだ」
「そのパズルに規則性はあるのかい」
「たぶんね。でも、俺には難しくて解けないんだよなー」
「どうしたら階段は動くんだい?」
俺は地面の石を拾い、階段にむけて投げた。
すると、目の前にあったはずの階段は途中から消えていき、右から別の階段が現れた。
「階段の上に物体を感知すると消えていくのか……」
「登るのか、下がるのか、どっちが正解かもわからない」
「普通、登るだろ」
「だよね。下がったら、マグマの滝だもんね」
「もう一回、石を何個か続けて投げてみて」
「あいよ」
いつの間にか、俺とドンパンはタメ口で会話するようになっていた。
俺が投げた石に反応して動く階段を、ドンパンはじっと観察している。
何かの規則性を見つけようとしているようだ。
「ああ、腹が減ったなぁ」
「黙れ! 集中してるのだ」
「すみません…」
ドンパンは自分で地面から石を拾い、それを階段に向かって投げることを繰り返していた。
しばらくして、ドンパンは指をパチンと鳴らした。
「OK! パズルの規則性は読めた」
「わかったの? すっげー、さすが怪盗ドンパン!
じゃ、さっそくドンパンの解読した暗号に従って動いてみようぜ」
「完璧だとは思うが、万が一失敗したら二人ともお陀仏だぞ」
「大丈夫、大丈夫。
ドンパンは俺のスキルの影響を受けているから、絶対に死なない」
「何だ、そのスキルの影響って。何故、死なないって断定できるんだ」
「俺のスキル、環境応答だからさ。
さっきからドンパンは熱いって愚痴ってないよね。
それはね、生命を維持するために、
ここの環境にドンパンの細胞が適応しているからだよ」
「環境応答……て」
「この世で一番強い生物の法則。
生き残った種が一番強いと、太古の大昔から決まってんだよ」
「宇宙の法則か。お前はバカなのか賢いのか。
すごいことを知っているんだな」
「と、父さんが教えてくれた」
「なんだ、そういうことか。お前の父さんは何者だ」
「公務員だ」
ドンパンは「なんだ」という顔をしていたが、父さんが公務員なのは事実だ。
官僚だから。
「さあ、行こうよ。ここからは俺たちの挑戦だ!」
「少年漫画の主人公みたいなこと言うな」
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