第111話 第9層界
鬱蒼とした森の中に一か所だけ、岩だらけの場所があった。
ドンパンが大きな岩の一枚を力いっぱい横にずらすと、そこは洞窟になっていた。
天の岩戸かよ。
「ここだ。ここからがダンジョンだ。
この先は、君が一人で行くんだ」
「え? ドンパンは来てくれないの?
この先、どうなっているかもわからないのに、
一人で行けと?」
「ここからは、ハチ王子の本領発揮だろう。
魔物が出ようが、何が起きようが、無双して進めばいいじゃないか」
「まぁ、いいですよ。魔物はいいですよ、魔物はね。
でも、ドンパンは知らないかもしれないけど、
ダンジョンって階層がいろいろあって広いんですよ。
目的地がどこかもわからずに進むなんて、
何年もかかるかもしれないです」
「そんなことは、知ったこっちゃぁない。
わたしの仕事はここまでだ。あとは勝手にやってくれ」
「嫌だ。絶対入らない」
「入れ。これは命令だ」
「命令でも嫌だ。目的地まで誘導してくれなきゃ入るもんか!」
「……ったく、どこまでバカで強情なんだ」
その時、ドンパンのスマホが鳴った。
着メロは、ルパン三世のテーマだった。
「はい、ドンパンです。あ、エバンス様。
いつもお世話になっておりますー。
はい、おっしゃる通りに生け捕りにして、
今ダンジョン入り口に到着いたしました」
エバンス様だって?
ということは、あいつ保釈金出して仮釈放中なのか。
ドンパンのクライアントって、エバンスだというのか。
これは闇が深いぞ。
「はぁ、…中に入らないって強情はっているんですけどね。
とりあえず、わたしの仕事はここまでですから、
懸賞金は指定の口座にお願いしますよ。
え? そんな……、それでは話が違いま……、
まぁ、仕方がありませんね。
そこまで言うなら別料金になりますよ。
ここから先は、時間外手数料とオプション料金がかかりますが、
よろしいですか?
……、承りました。毎度ありがとうございます」
ドンパンはスマホの電話を切って、懐にしまった。
「ハチ王子、運はいいほうかい?」
「はい、割と」
「なら、ここからは時間外労働です」
「あ、それアニメでみたセリフ」
「言ってみたかったんだよ」
「ドンパン、かっけー! やっぱ、ハヤブサさんの色違いだ」
俺とドンパンはダンジョンの洞窟に入って行った。
「ダンジョンのどこが最終目的地なんですか?」
「瞑層界だそうだ」
「げ! マジで? それってかなりヤバいんですけど。
ドンパンはダンジョンの構造を知ってます?
瞑層界って、かなり深いですよ。
ラスボスがいるような世界だけど、
それって、何かの間違じゃないですか?」
「いや、確かに瞑層界と」
「ほう、そうかい?」
「つまらんダジャレはやめろ。
瞑層界だか、ほうそうかいだか、
わたしは探索者ではないからよく知らない」
「知らないんですかぁ!?
じゃあ、最終目的地まで連れて行くのは、
ドンパンじゃなくてこの俺ってことじゃないですか!」
「まあ、そういうことだ」
「時間外労働になるんでしょう?
こっちが手間賃欲しいくらいだ」
「いいだろう、君のバイト代をわたしが払おう」
「マジっすか? 絶対ですよ。
絶対、バイト代払ってくださいよ」
盗みと変装にかけてはプロのドンパンも、ダンジョン探索は初心者だった。
まさか、拉致された俺が先に立って誘導し、瞑層界まで行くことになるとは思ってもみなかった。
「だいたい、この辺まで来ると、壁に転移石が埋まっているはずだがな……」
「ここはまだ、魔物は出ないのか」
「まだまだ序の口ですよ。
スライムくらいはいるかもしれないから、
踏んづけて転ばないようにしてください」
「お、おおう」
しばらく進んだ場所で、転移石が壁に埋まっているのを見つけた。
「あった。ここだ。どの層に出るかわからないけど、
一番下の層を選択しとけばいいか」
「え、そんなの適当すぎないか?」
「いいんだって。ここは勘だよ、勘」
「勘……、そんなもんなのか」
「手! 繋ぎましょう」
「何を! 君と和解するつもりはないぞ」
「勘違いしないでください。
俺だけ転移しちゃってもいいんですか?
一緒に行くために手を繋いでおくんですよ」
「お、おう。そうか、そうだとは思ったけど、
一応な、警戒してみただけだ」
俺は、ドンパンと手をつないで、転移石に手をかざし、
空中に浮かび出た画面のボタンを押した。
―転移
眩しい光に包まれて、あたりが真っ白になる。
光の渦がおさまって、うっすらと目を開けると……
「暑い、なんだか暑くないかい? ハチ王子。
まるで、サウナの中にいるみたいだ。このダンジョンは何なんだ」
「ああ、何だ、ここかぁ。ここ第9層界ですよ。
地球の内部。マントルのダンジョンっすよ」
「マ、マントル?! くっそ暑い。
暑いっていうか、熱いって漢字を変換してくれ」
「ですね」
「ハチ王子はなんで平気なんだ。
まるで前にも来たことがあるような口ぶりじゃないか」
「来た事あります。何度もね。
でも、ここはなかなか攻略できなくて、諦めていたんだけどな」
「攻略できていないのか……」
「うん、何度も挑戦はしたけどね。
ほら、下にマグマが流れているでしょう。
何回やっても、そこへ落ちそうになっちゃって。
これじゃ、命がいくらあっても足りないと思って諦めたんです」
「おいおいおいおいおいおい…、お・い!」
「でも、ワンチャン、今持っているスキルを使えば行けるかも。
ドンパン、行けそうですか?」
「行きたくないけど。行くしかないんだろ。
今さら戻れないし。
ただし、わたしは素人だ。
マグマに落ちないようにちゃんと君がサポートしろよ」
素人のくせに、なんで偉そうなんだ。
あぁ、でも俺の方が今は囚われの身だから、しょうがないか。
「うぃーーっす。俺はスキルを使って進みますんで、
離れないように、体と体をロープで縛っておきましょう」
「待て。わたしが落ちなくて君が落ちたらどうなる。
わたしが巻き添えになるじゃないか」
「そうですよ。死ぬまで二人一緒です」
「冗談言うな!」
「じゃ、やめますかロープ。
俺が先に行くんで、遅れないでついてきてくださいね」
俺は、下でマグマが煮えたぎっている岩場をひょいと飛び越えた。
「おい待て。置いて行かないでくれ」
知らんがな。
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