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みちのくダンジョン・ハイスクール・ボーイ~ランキングより好きに生きていいですか?何か問題でも~  作者: 白神ブナ
第1章 迷宮探索高専 東北分校

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第11話 魔狼の森

 比較的安全だと思っていたダンジョンで悲劇は起きた。

姫は首に深手を負ったカリノに包帯を巻き、ポーションを飲ませている。

そして、カリノを襲った狼は森の方へと逃げこんだ。


「王子、魔狼を追うな。森に入るのは危険すぎる。

これ以上、けが人を出すわけにはいかない。

悔しいがここで引き返そう」


「まだ始まったばかりですよ」


「魔物には始まったばかりも何も関係ない。

深入りせずに引き返したほうがいい」


「俺、普段は聞き分けのいいほうなんだけど、

今日は聞き分けのない子になっていいですか?

俺の友達に傷をつけたお礼は、

きっちり熨斗(のし)つけてお返しさせていただきます」


カリノが笑う。


「バーカ、お前、任侠(にんきょう)かよ。

ハヤブサさん、こいつ止めても無駄ですよ。

僕も回復したら後から追いつきますから、

魔物を倒してください」


「カリノ・・・、俺は任侠(にんきょう)じゃない、カタギだ」


「おい待て、このダンジョンに誘ったのはわたしだ。

君たちを守る責任がわたしにはある」


「お兄ちゃん・・・お願い、もが・・・・王子を守って」


「もちろんだ、安心しなさい。お兄ちゃんは王子を守るよ。

姫にはカリノを頼むからね」



俺は森の中を猛スピードで駆けて行く。

ハヤブサも遅れないように付いてくる。

同時に、ドローンもハヤブサと俺を捕えて配信は続いていた。


(もしかして、これは魔物を追っているの)

(ハチ公、足が速くね?)

(ハチ公、走るの速っ! それに追いついているハヤブサも凄い)

(ハヤブサさん、気を付けてください)

(ハチ公じゃない、ハチ王子だ)

(謎の秋田犬キャラww、面白いことになってきたw)


魔狼の遠吠えが聞こえた。

奴はいる、この森の奥だ。

今の遠吠えに答えるように別の方向からも遠吠えがした。

仲間がいるのか。

また、遠吠えだ。今度は西の方角から。

三匹もいるのか。

こっちは二人、敵は三匹。

数では狼の方が勝っている。

もしも、群れで来られたら勝ち目はない。

さあ、どうする。

ハヤブサが提案した。


「わたしが二匹相手にするから、王子は一匹を攻撃しろ」


「だめです。奴らは群れで襲ってきます。

魔狼がオオカミと同じ習性なら、手口は見えています。

森に逃げ込んだように見せて、実は人間を疲れさせるため、わざと走らせた。

その罠に真っ先に引っかかったのは、この俺。

奴らの獲物は俺ひとり。

一匹が獲物の前に回り込み、他の二頭が獲物を追い込んでくる。

これがオオカミの狩りの仕方です。

つまり、罠に引っかかった獲物、俺にむかって三匹で襲ってくる」


「なら、どうする」


「大事なのは一撃で倒す事。一匹を一撃で素早く、しとめる」


山にこもってダンジョン探索している俺の経験上、動物の習性を読むのは得意だ。

魔狼といってもオオカミなら習性は同じだろう。


「魔物になると、オオカミでも夜行性じゃないんですね」


「王子、危ない!」


ハヤブサが叫んで危険を知らせてくれる。


しかし、狼が飛び出してくる方向はだいたい予想がついていた。

やっぱりな。

獲物の中で狙われた一人は、俺だった。


俺は、すでに狼に向かって駆け出していく。

駆けだしながら、ぐっと姿勢を低く落として、狼の体の下に滑り込む。

魔狼はすぐさま回避しようと上へ跳躍する。

やはり、動物の反射神経はあなどれない。

俺の不意打ちは失敗したかのように見えた。


「王子、逃げろ!」


上に跳躍した魔狼の四つの脚が視界に入る。

俺の狙いは四つのうちのどれでもない。

上空へ遠くなる魔狼を捕えようと伸ばした手は、狙い通りの物をつかみ取った。

モフモフの尻尾だ。


「うりゃぁ! 背負い投げぇーーー!!!!」


魔狼の巨体は、弧を描いていとも簡単に投げ飛ばされ、岩に頭から落下する。

巨体であるがゆえに大きな遠心力となった一撃は、魔狼の頭部にショックを与えるには十分だった。


「一匹目、終了」


すぐに二匹目が俺に飛び掛かってくる。


「やばっ、意外と早い」


軽く跳んで、かわす。

横には、今倒したばかりの魔狼が白目をむいて横たわっていた。

一匹倒したら二匹目も同じだ。


今度は、地面を蹴って俺が上空へ跳躍する。

かわされた先にある一匹目の倒れた巨体が邪魔をして、二匹目は踵を返すことができない。


「もらった」


俺は自分の落下地点を二匹目の頭頂部に狙いを定める。

踵が狙い通りの頭頂部に勢いよく落ちたタイミングで、思いっきり踏みつぶす。


ぐしゃ。


魔狼は先に倒れていた一匹目の上に、仲良く崩れ落ちた。


「二匹目」


安全な地面に着地したとおもいきや、息つく暇もなく三匹目の咆哮が耳をつんざく。


「お怒りのご様子で」


三匹目は猛スピードで距離を詰めてきて、気が付いた時には、俺は魔狼になぎ倒されていた。

こいつが、獲物を待っていたボスの魔狼か。

ここで待ち構えていたボスは、体力を消耗していない。

そして、巨体の脚は、俺を押さえつけて離さない。

大きな口から鋭い牙が俺を狙う。


「歯並びがいいな」


俺が必死に手で魔狼の顔を押し戻そうとしても、まるでびくともしない。

徐々に、鋭い牙は俺の頭を噛み砕こうと接近してくる。


「くっ・・・・・」


「王子、わたしが光線を出すから、その瞬間に離れろ」


「待って・・・策がある」


全身の筋肉を使って渾身の力を振り絞り、魔狼の大きく開いた口をめがけて会心の一撃をぶちこんだ。


ズボッ、ゴキッ。


鈍い音がして、咽の奥で何かを破壊した。

魔狼は顎が閉まらなくなったまま、ドーンと地面に倒れて動かなくなった。


「ボス討伐完了」



ハヤブサはあっけにとられて何も言えないで立っていたが、ふと我に返って配信用ドローンに向かって話しかけた。


「みなさん、ご覧になりましたか? これが王子です」



(なんじゃ、あれは・・・武器持ってなかったよな)

(おいおい、素手で巨大な魔狼三匹倒したぞ)

(アイテムボックスに何か武器を持っていたでしょうに)

(なんでアイテムボックスを開かない)

(いや、そんなの開いている暇がなかったぞ)

(前もって、開いていればよかったのに・・・)

(ハヤブサはハチ公は未成年って言ってたじゃん)

(武器使えないのか)



「すごいぞ王子。コメントがものすごい勢いで大量に流れて読めないくらいだ」


「ふぅん、そんなもんですか。興味なくてすみません」


そのとき、カリノと姫が遅れて走って来た。


「ごめん、回復に時間がかかった。あ、れ? 

・・・・もしかして終わったの?」


カリノが目にした光景は、

三匹の倒れた魔狼と、配信のアクセス数に狂喜乱舞しているハヤブサ。

そして、ひと仕事終わって汗を拭いている俺だった。


三匹の魔狼の姿が霧のようにもやってから消えると、そこには三つの魔石が転がっていた。

ハヤブサは魔石を拾いカメラに向かって、リスナーに見せていた。


「お、同時アクセス数10万ってなってる。

みんな見てくれて本当にありがとう。

今日のゲスト王子のおかげで、こうして魔石もゲットできました。

今日の配信はここでおしまいです。

また見に来てください。さよならー」


配信を切るとハヤブサはこっちに向き直って言った。


「はい、これは君がゲットした魔石だよ」


「え? いいです。ハヤブサさん、持っていてください。

ハヤブサさんの配信だったんですから」


「そうはいかない。君のおかげでアクセス数も登録者数も伸びたんだ。

タダ働きってわけにはいかないでしょう」


「ダメです。俺は受け取れません」


すると、狩野が控えめに提案を出してきた。


「あのう、ちょうど三個なら、桜庭兄妹、最上、僕で分ければいいんじゃない?」


「狩野くんは負傷しただけ・・・だよね」


「あら、どうしてわたしは、お兄ちゃんとワンセットなの? 別にいいけど」


桜庭兄妹が、狩野の提案に異を唱える。

報酬の山分けとか、こういう面倒くさいことが俺は嫌いだ。

さっさと結論出して、畑を見に帰りたいから、強引に俺は話をまとめる。


「桜庭が別にいいけどって言うのなら、それでいいんじゃない?」


「ま、あずさが言うならお兄ちゃんもそれでかまわないよ」


「じゃ、そういうことで。

俺はもうあがります。お疲れ様でしたー」


「おーい、最上。待ってよ、ぼくも帰るよ」


森の中まで来た道を急いで戻る。

ステイタス画面を確認しながら、走っていると通知音が鳴った。


『スペシャルミッション、クリアしました。おめでとうございます。

ステイタスポイント、ヒットポイント、ゴールド、全て2倍です』


よっしゃ!

おれは傷だらけの右手で小さくガッツポーズをしながら家路を急いだ。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ってくださったら


下にある☆☆☆☆☆から、

ぜひ、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、

つまらなかったら星1つ、

正直に感じた気持ちでちろん結構です!


ブックマークもいただけるとさらに泣いて喜びます。


何卒よろしくお願いいたします。


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