第107話 模擬店チェイス
体育館の横から、うまく外に出ることに成功した。
予想通り、ここはノーマークだった。
さてと、ここからが問題だ。
校門から昇降口までの広場は、真ん中の通路を挟んで両側に模擬店が並んでいた。
ここは、校舎の中以上に人で溢れかえっている。
なんてこった。
でも、この中を逃げ切るしかない。
俺は生徒やお客さまの間を縫うようにジグザグに走って、模擬店広場から校門を目指した。
「おいしいタコ焼きだよー。いかがっすかー」
タコ焼き屋のいい匂いが、食欲を刺激してくる。
ちょうどお腹が減っていたところに、男子生徒が味見用のタコ焼きを目の前に差し出してくれた。
うううう、タコ焼きの誘惑には勝てない。
俺は足を止めて、タコ焼きを受け取ろうと手を伸ばした。
ピュッ!
目の前のタコ焼きに矢が刺さった!
たこ焼き屋の男子生徒は悲鳴をあげる。
「ひぇ! 矢じゃないか、こえーーー。矢が刺さった!」
「え? 矢だけに、やだなぁ。なーんて、
矢じゃないよ。でかい竹串だってば」
俺は彼がパニックにならないように、ボケをかました。
「や、や、矢だろ、これはどう見ても」
「矢かもしれない。わりぃな。
後で必ず買いに来るから1パック取り置きしといて」
俺はタコ焼き屋を抜けて、隣の模擬店テントの中に紛れ込もうとした。
「ああ、そこの君、君。ちゃんと列に並んでくださーい。
順番待ちしているお客さまがいますから」
フランクフルト屋のスタッフに、俺はつまみ出された。
「実は俺が、目立つところにいると危険なんです」
「何、訳の分からない事言ってるんすか」
数人の女子たちがフランクフルトを手に持っていた。
フランクフルトを食べようと、大きな口をあけた女子。
瞬間、彼女の手元からフランクフルトが消えた。
「あれ?」
フランクフルトはどこへ消えたのか。
フランクフルトと書かれた看板に、矢と一緒に突き刺さっていた。
「え? え? 消えたんだけど。
これって、なんかの催し物?」
「ちょっと、この看板のフランクフルトの絵、
リアルじゃない? まるで本物みたい」
「これ、わたしが食べようとしたフランクフルト!」
何も知らない女子たちは看板をスマホで撮影し始める。
そうしている間にも、矢は飛んでくる。
パン、パン、パン、
お子様用に準備した風船が次々に割れた。
「キャッ、なに?」
「うぇーーーーん!!」
持っていた風船を割られた女の子が泣きだした。
「ごめんね。かわりにこれをあげるからね」
俺はアイテムボックスから、先日狩野からもらったクマさんグミの残りをあげた。
「うわぁ、クマさんグミだぁ! お兄ちゃん、ありがとう」
「どういたしまして、残り物でごめんよ。」
のんびり会話をしている暇はない。
俺は急いで、次の模擬店に逃げ込んだ。
「おっと、急に入って来るなよ。危ないじゃないか」
「すみませーん、ちょっと失礼します」
そう言って、通り抜けようとしたところを、ガタイのいい男子生徒に後ろ襟を捕まれた。
「待ってたよ、ハチ王子」
「ここにも居たのか、待ってなくていいよ」
条件反射的に、ガタイのいい男子生徒を思いっきり背負い投げした。
投げ飛ばされた男子生徒は、クレープ用につくったネタが入ったボウルへと着地。
ひっくり返かえったボウルの中身はドロドロのクレープの生地。
ガタイのいい男子生徒はドロドロの生地を浴びて倒れた。
「キャー――、ちょっと、あんた、なにしてくれたのよ!」
クレープ担当女子の怒りの矛先は、ドロドロになったガタイのいい男子生徒だった。
「技あり、一本だったんだ」
「技ですって? 冗談言ってる場合じゃないわよ。
もう一回生地を作り直さなくちゃ。あんた、手伝いなさいよ!」
クレープ担当女子に怒られて、クレープドロドロの男子は平謝りするしかない。
俺は知らん顔して、隣の模擬店へと逃げ込んだ。
おっと、子供たちが銃を構えている!!。
子供までおれを狙っているのか?
だがよく見ると、子供たちが狙っているのは俺ではなく、木の段に並んだおもちゃやお菓子だった。
なんだ、射的か、ああ、驚いた。
うっかり安心した俺は、射的台の前を歩いた。
パーン!
「やった! 僕当てたよ、ママ」
射的屋の生徒が、弾が当たったおもちゃを拾った。
「はい、おめでとう……、ん?
これ、もしかして本物の銃弾じゃねえか?」
異変に気が付いた母親が悲鳴を上げた。
「キャー――! うちの子に実弾撃たせるなんて!
なんて恐ろしいことをさせるんですか!
実弾体験だなんて、聞いてませんよ!」
興奮気味のお母さんを射的屋の生徒は、落ち着かせようと必死にだった。
「違いますよ、お母さん落ち着いてください。
お子さんが撃ったんじゃありません」
「うぇーーん!!! 僕が、僕が撃って当てたのに違うって言う。
僕があのおもちゃを当てたんだよぅ」
射的ではパニック寸前だ。
俺は泣いている子供のところまで引き返した。
「ごめん、ごめん。これ、君が当てたんだよね」
景品のおもちゃを、射的屋の生徒から奪い取って子供に与えた。
「おい、勝手なことをするな」
射的屋の生徒は怒って、俺に喧嘩を売りそうになった。
「待て、落ち着け、落ち着け。おわびにこれをやる」
俺はアイテムボックスから、人気配信者ユズリハのブロマイドとステッカーを渡した。
以前、ユズリハから強制的に渡されて、捨てることもできずに困っていたシロモノだ。
「お、ユズリハ先輩じゃん。いいのか? これもらっても」
「ああ、欲しいときはいつでも言ってくれ。掃いて腐るほどあって困っているんだ」
「逆に悪いな。ありがとな」
「何なら、これもこれも……」
アイテムボックスから俺は次々にユズリハグッズを取り出した。
「射的の景品に使ってくれ」
「これを的にしたら罰が当たる」
「いやいや、景品が当たるの間違いだよ」
と、その時、足元をなにかが突っ込んでくる予感がした。
俺は、反射的にジャンプしてテントの枠組みに捕まった。
突っ込んできたのは、剣だった。
「マジかよ。誰かが怪我したらどうするんだ」
俺がテントの枠組みに捕まったタイミングで全体のバランスが崩れ、テントが大きく傾いた。
周りの人たちが悲鳴を上げて逃げ惑う。
「キャー」「うわー」
傾いていくテントの先に、幼い兄弟が立っていた。
俺は、必死に叫んで、テントを支え、踏ん張った。
「早く、逃げろ!」
幼い兄弟は、突然の緊急事態に驚いて、固まって動けなくなっていた。
ああああああ、どうする。
幼い兄弟をとるか、
テントをとるか、
決まってんだろ!
幼い兄弟を救い出すために、俺はテントを支えていた手を離した。
ドッシャーーーン!
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