第102話 ノマド・キャンバーの協力―2
「ちょっと、いいかしら」
リンダが手を挙げた。
「ちょっといいアイディアがあるんだけど、
聞いてくれる?」
「さっき『自動販売機の収益だけでは』って言ってなかった?
ここで他の収益があればいいんじゃないの?
誤解しないでね。
給金をもっと欲しいっていう意味じゃないのよ。
この最上の館を活かして
もっといいサービスを展開できると思っただけよ」
「そうよ、わたしたちキッチンカーで来るんだもの、
とれたて野菜をここで調理して
小さなカフェが出来るんじゃないかしら。
外にテーブルと椅子を出して
テラス席を作ればすぐ出来るわよ」
「いいですね、それ!
もし、よかったら採れた野菜を持って帰って、
どこかで売りさばいてもいいですよ。
もちろん、その売り上げは働いてくれたノマド・キャンパーたちのもので。
こっちは、畑の管理さえしてくれればいいのから」
「それだと、ハチ王子の儲けがなくなるじゃないか」
「いいえ、俺はまだ高校生なんで、生活かかってないんで。
全然儲けが無しでも、大丈夫なんです。
ダンジョンで財を成すという夢は、お金じゃないんです」
「それじゃ、ひとつ提案だ。
畑の向こうの側に、
もうひとつログハウスを建ててあげよう。
わたし達のなかにはプロの大工がいるから、
そいつにお願いしよう」
「え、いいんですか?」
「素敵! わたしたちも手伝うわ。
ハヤブサさんたちにも
新しいログハウスを使ってもらいましょうよ」
「一部は、カフェにしてもいいかしら」
「リンダ、アニー、暴走しすぎだ。
ハチ王子のエリアなんだぞ」
「ごめんなさい、そうね。
わたしったら夢中になっちゃって…」
ノマド・キャンパーたちのアイディアには脱帽だ。
どこがリタイアした探索者なんだろう。
この発想は、現役の探索者でも思いつかない。
確かに、俺が一人で建てた小屋は手狭になっていた。
こんなに仲間やお客さんが増えると思っていなかったからだ。
もうひとつログハウスが増えたら嬉しい。
「ビリーさん、その計画、やろうよ。
俺には自分のエリアなんて認識は無い。
ここには国境も、土地の境界線も、元々無いから」
「でもそれでは、後々トラブルの元だよ。
暫定的でも、最上の館エリアとしておこう」
「素敵! ベスト・マンション・コーストね」
「あ、最上って、さいじょうじゃないんです。
俺の名前で、もがみというんです」
「あら、そうなの。知らなかったわ。
じゃあ、キャッスルプラザ・モガミなんてどうかしら」
「そこまでおしゃれだと違和感が」
「名前は後で考えるとして、
さっそく畑に入りましょうよ。アニー」
リンダとアニーが畑に行ってから、俺とビリーさんはテラスに置いた椅子に座った。
彼女たちが畑で収穫しているのを眺めながら、ビリーさんとまったりとした時間に浸っていた。
「ハチ王子、あれからギターの練習はしてるかね?」
「してますよ。
誰かに知られると恥ずかしいから、
ギターの練習は家族にも友達にも内緒だけどね」
「そうか、誰もギターを弾くハチ王子を知らないわけだ。
わたしだけが知っているのは特権だな。ハハハハハ」
嬉しそうに笑うビリーさん。
そんなビリーさんに、俺の不安をぶつけてみた。
「ビリーさん、北エリアを開発していたエバンスって、
何者なんでしょうね」
「何かあったのかい?
エバンスのことだからな、
日本警察に捕まっただけでは終わらなかったのか」
どこまで話していいものか迷って、俺は簡単に答えた。
「俺に懸賞金をかけているやつがいるって。
金額はわかんないけど。
日本のある山で命を狙われました」
「それは物騒だね。なるほど、たぶんアレだろう。
エバンスは秘密結社に入っているという噂があるから、
エバンスの上にもボスがいるんだろう」
「何っすか、それ。都市伝説みたいじゃないですか。
ラスボスがいるの?」
「ラスボスって言うのか。
でも、君の命を狙う理由がわからない。
少年ひとりの命を狙ったところでどんなメリットがあるんだ」
「でしょ。俺もそこがわからないんですよ」
「命じゃなくて、欲しいのはハチ王子じゃないのかな。
つまり、目的は生け捕りなんじゃないか?」
「俺を…ですか?」
「研究したいとか、何か知っている情報を聞き出すとか、
利用するほうが、メリット多いでしょう」
「怖いな」
「どうする。戦うか?」
「…ちょっと考えときます」
ビリーさんは心配そうに俺を見つめた。
「逃げたっていいんだぞ。戦うことがベストとは限らん」
畑に入ったリンダとアニーは、楽しそうにカボチャの収穫をしている。
笑い声が小屋まで届いた。
ビリーさんが立ち上がった。
「さてと、ギターの特訓でもするか」
「よろしくお願いします!」
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