第100話 昼休みのコント
やっと午前中の授業が終わった。
その前の休憩時間でも、狩野の話を聞くチャンスはあったが、
桜庭からの攻撃を避けるために、じっと我慢していた。
昼休み時間になれば、いつも桜庭は女子同士でどこかへ行ってしまう事を知っていた。
桜庭が居なくなったことを確認してから、俺は狩野の背中を突いた。
「な、狩野。教えてくれよ。驚くのはまだ早いって、どういう意味だよ」
狩野は振り向いて俺の顔をじっと見た。
「購買部で焼きそばパン」
「なるほど、そういう意味かぁ!
焼きそばパンは驚くよなぁ。美味いし安いし……
じゃなくって! なんで焼きそばパンなんだよ?」
「情報提供料として、焼きそばパンは当然の報酬かと」
「今から購買部行っても、もう売り切れてるかもよ。
人気商品は、予約が必須」
「じゃ、この話は無しだ」
「待て! 待て。俺の弁当をやる」
「お前の弁当って? わっぱめしだよな。
やっぱり、この話は無しだ」
「おい、何を言う。作ってくれたお婆ちゃんに失礼だぞ。
今日は久々の登校だからって、めちゃくちゃ張り切ってくれたんだぜ。
ペンション白鷺の特製のランチボックスだぞ」
「よし、乗った!
でも、僕だけ食べるのは悪いから……」
そうだろ、そうだろ。ランチボックスは仲良く半分こだな。
「最上には、これやるよ。
可愛いクマちゃんの形をしたグミ」
「あ、ああ、グミね。グミ。
等価交換じゃないんだ」
とても残念だが、ここは我慢するしかない。
俺は、ランチボックスを狩野に奉納し、代わりにクマちゃんグミをありがたく頂戴した。
狩野は、トルティーヤで巻いた、焼肉ラップサンドを頬張りながら言った。
「いいか、落ち着いて聞けよ。
……山上十和は高専の生徒だ」
「ん? 嘘だね。高校生にしては大人びていたし、
俺らよりも年上だと思うよ」
「…お前さ、まさかとは思うんだけど、
うちの学校、他の高校と同じだと思ってる?」
「何、違うの?」
「まさか、高専の最高学年は三年生だと思ってる?」
「思ってるよ。そんなの常識じゃん」
狩野はラップサンドを喉に詰まらせた。
「いやいやいやいや……、
お前、ダンジョン高専によく入学できたな。
高専が何年生まであるのか知らないなんて、どんだけ……。
いや待て、ある意味、最上だからこそか。
それでよく面接通ったよな」
「面接は父さんが圧かけたから…」
「なんだって?」
「いや、別に。
それよか、この学校何年生まであるんだよ」
「あのなぁ、最上。
今日まで学校で何を見て来たんだよ。
四年生とか五年生とか、
上級生を見たことないのか? 」
「バカにするな。
それくらい知っているよ。
四年生とか五年生とかって、
留年してる人たちだろ?
ああはなりたくないよな」
「おぉーい、
先輩たちに向かってなんてことを言う! 心改めよ!
高等専門学校っていうのはな、五年制だからな」
「えーー、五年? マジでぇ? そんなに通うの?
俺には無理だぁ。まだ三年もあるじゃないか」
「いやいや、最上、そもそもお前の問題じゃなくて。
山上十和は高専の五年生だという話だ」
「高専の五年生?」
「だから、山上十和は銃猟免許持っていたんだ。
ダンジョン探索者資格があって、
二十歳以上だからな。
ついでに言っておくけど、
あの事件だって被害者は出ていないから。
クマは死んだけど。
というわけで、無罪放免、お咎めなしだ。
何も法に触れていない」
「じゃ、あの女子は今もこのキャンパスにいるのか」
「ブブー。そこ、ちょっと違うね」
狩野は、完全に俺で遊んでいる。
悔しいけど狩野には勝てない。
俺は、クマちゃんグミを力いっぱい噛み締めた。
「山上十和は東京校の五年生だよ。
ここのキャンパスにはいないから安心しろ」
「東京校…、ブロッケンと同じ校舎じゃん。
ははぁ、なるほどね。
そこでブロッケンと繋がるわけだ。
でもさ、寒風山とか田沢湖高原とか、
なんで東京からわざわざ東北に来るのかな。
五年生って暇なのか?」
「五年生は就職活動や卒業研究などで、
外で活動する機会も多いんじゃないのか。
毎日登校しなくてもいいのかも」
「就活で内定が決まっていれば、
校内よりも校外での活動も多くなるってことか」
「やっとまともな意見が出たな。よかった、よかった」
「で? やまかみって、山の神様か?」
「いや違う。山の上だ」
「だろな。あんな山の神様がいるわけないもんな。
内定もらっても、バイトで雇われハンターってできるものなのか?」
「そこまでは知らない。僕が知っていることは以上だ」
俺は雇われハンターについて考えた。
確か、山上十和は俺に懸賞金が付いていると言っていた。
どんな金持ちか企業か知らないが、俺に懸賞金つけるなんて暇なの?
懸賞金を付けられるようなことしたのか俺は。
全く心当たりがない。
これが解決しないかぎり、俺は誰かに狙われ続けるってことか。
父さんが心配していた通りになってしまった。
「ランチボックスごちそうさまでした。ああ美味かった!
またお前のペンションに行きたいなぁ」
「来ればいいよ。桜庭がバイト辞めてから、
うちのお爺ちゃんとお婆ちゃんは、寂しがっているんだよね」
「桜庭は、文化祭実行委員になったからな。
忙しくて行けないだろ」
「何それ。俺、聞いてない」
「あ、そうか、知らないか。
僕たちが学校に来られなかった間に、
文化祭実行委員に推薦されたんだってさ」
「ってか、うちの学校に文化祭って、あったんだ」
「二年に一度しか開催しないからね。
で、うちら二年生組では何やると思う?」
「文化祭といえば、お化け屋敷だろ」
「惜しい!」
「ええー違うのかぁ。
でも惜しいってことは、…蝋人形の館」
「ああ、離れたー。もっと、ほら、
ダンジョン探索を楽しんでもらえるような企画だよ」
「ダンジョン系か。うーん、モンスターの館?」
「お、かなり近づいた」
「魔物ハンターゲーム」
「おおおお、これはほぼ正解と言っていいだろう」
「マジかよ。俺の日常と変わんないじゃないか」
「正解は、『スライム狩りリアル・タイム・アタック!
楽しくダンジョン探索者を体験しよう!』だ」
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