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第1話 演習用ダンジョン、だよね

この物語はフィクションです。 登場人物、団体などは全て架空の名称です。


たくさんの皆様にお読みいただいてありがとうございます。

皆様の応援が励みになっております。


 演習用ダンジョンだから、トラップやスライムしか出てこないって、確か先生は言ってたはずだが・・・・・

どーーーーん

どーっ、どーっ、どーっ、

地滑りのような重々しい不吉な音が、ダンジョン内に響く。

音の発生源からは煙がもうもうと立ちのぼっている。

その煙を引きずるように異形な魔物が姿を現した。


「うっそーーーーっっ!!! ここって演習用のダンジョンだよね。

なんで、あんな魔物が出るんだよ!」


 俺は、迷宮探索高等専門学校、東北分校の二年生、最上忍 (もがみ しのぶ)。

学校ではできるだけ目立ちたくなくて、友達付き合いを避けている。

気が付いたらスクールカーストの底辺にいて、イケてない男と呼ばれていた。

運悪く俺とバディを組まされたのは、同級生の桜庭あずさ(さくらば あずさ)。

彼女も俺と似たような存在だと俺は思っている。

彼女とはあまり話をしたことがない。

そんな桜庭は、初めての魔物遭遇を体験し、あまりの恐怖でへなへなとその場に座り込んでしまった。


「嘘でしょ・・・」


「俺だって聞いてねーよ、あれは何なんだ」


馬鹿でかい猿のような生き物は、どこからどう見ても魔物だ。

巨体を震わせ牙をむきだし、かん高い鳴き声をあげ、鋭い爪を桜庭めがけて振り降ろそうとする。


「危ない!」


とっさに俺は、ひょいと桜庭を抱き上げ地面を蹴って攻撃をかわした。

巨猿の魔物は、大人の探索者であろうと、まだ高校生であろうと、また女の子がどんなに悲鳴をあげようと容赦しなかった。

魔物は俺たちを狙うとくるりと向きを変え、ダンジョンの出入り口を塞ぐような形で威嚇してくる。


そのうえ運が悪いことに、今日の演習はRTAリアルタイムアタック

つまり、スタートからクリアまでにかかる実際の時間の短さを競うスタイルの演習だ。

まともにこんな魔物と戦っていたら、時間を消費してしまうのは目に見えている。

ここは戦いを避けるのが得策と計算した俺はつぶやく。


「絶対、どこかに別の出口があるはずだ」


とりあえず、面倒くさい戦いはしない。


「最上君、先生は

『リアルタイムアタックだから、もし魔物と遭遇しても深追いはしないこと。何かあったら、笛をならせ』

って、言っていたじゃないの。笛よ、笛を吹きましょう」


「バカ、そんなことをしたら余計に魔物を刺激するだけだ」


「じゃあ、どうすればいいのよぅ」


「正面から向かっても倒せない相手の場合、

何をするのがベストだと思う?」


「何か奇策があるの?」


「ある」


「まさか・・・・」


「そのまさかだ。逃げろーーーーーーー!!!!」


桜庭の手を引き、俺は逃げの一手に出る。

出入口にいる魔物から逃げるということは、ダンジョンの奥へ奥へと入り込むことだ。


「待っ! 待って! 奥へ行ったら戻れなくなる。

余計に時間がかかってしまうじゃない」


「急がば回れっていうんだよ」


「ムリ、ムリ、ムリ、ムリ! 最上君、それ無理だって」


逃げても、逃げても、魔物は追ってくる。

奥へ進んだところで、出口らしき出口はどこにもない。

ちくしょー! 詰んだか。

桜庭の言う通り無理なのか?

俺は無い知恵を絞って懸命に策を考える。

懸命に考えた末に腹をくくった。


「桜庭、よく聞け。俺が魔物を引き付けておくから、

お前はその隙に出入口に向かって逃げろ」


「そんな・・・・、それって最上君がおとりになるということ?」


俺が考えた作戦の詳細を説明している暇はもうない。

俺は逃げるのをやめ、魔物の方に向き直った。

窮鼠猫を嚙むである。


「ああーー、やめ、やめ! もう逃げるのやめた! 

さてと、こっからは腹をくくって戦いますからね。

さあさ、鬼さんこちら、手の鳴る方へ」


魔物をわざと煽って、軽く両手をパチンと鳴らし、魔物の気を引く。

案の定、魔物の太い腕は俺をめがけて飛んできた。

鋭い爪をギリギリかわして、魔物の腹に拳を一発お見舞いしてやる。

これが効いたのか、魔物の足がふらふらとおぼつかなくなった。


「今だ! 今のうちに早く逃げろ」


半泣きの状態の桜庭の背中を押し、その勢いで彼女は魔物がふらつく横をすり抜けて行く。


「あとは走れよ! 止まるな、ひたすら走れ!」


俺が桜庭に向かって叫んだ言葉をかき消すかのように、ぐぁーーーーと巨体が俺に襲い掛かってくる。

その攻撃を難なくかわすと、魔物の巨体はバランスを失って一瞬だけ浮いた。

その一瞬を突いて、俺のグーパンが魔物の顔面を直撃。

そして、次の瞬間には地面の石ころがパラパラと跳ね上がって、魔物は地面にどーーんと沈んだ。

そこをすかさず、魔物に躍りかかって、蹴り上げ、腕をへし折り、手刀で脇腹に打ち込む。


ダンジョン探索者を養成する高等専門学校とは言え、未成年の学生に武器の所持は禁止されている。

晴れて18歳になれば国から許可をもらって初めて武器の所持と使用が認められるのだ。

俺はまだ16歳。

魔物と対峙した場合、素手で戦う他手段は無い。

武器も持たない、特異なスキルも無い状態で、制限時間内にミッションクリアするための方法はただひとつ。

めっちゃくちゃにボコる。


「うわぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!」


魔物の姿かたちごとわからなくなるまで、俺はただ無我夢中で破壊行為を続けた。

魔物は息絶えると煙のように消え、そのあとには一個の魔石が転がっていた。


 桜庭はどうやらダンジョンの出入り口付近までたどり着いたらしく、ピーーッと笛が鳴って先生に異変を伝えているのが聞こえる。


 ダンジョン内の様子はミニドローンカメラで撮影され、その映像は先生が持っているタブレット端末に送られている。

だから、桜庭の笛が鳴る前から、先生は異変に気付いているはずだ。

それなのに救出に来ない。

それは、魔物出現も含めて計画通りに俺たちをこのダンジョンに送り込んだという意味だ。

アクシデントの対処方法も、演習の一貫ととるべきか。

それにしても、演習用ダンジョンに現れた魔物には魔石が無いと聞いていたのに、ここに転がっているのはどう見ても魔石だ。


これ、拾っちゃっていいよね。


「面白かったよ!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と、思ってくださったら


下にある☆☆☆☆☆から、

ぜひ、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでちろん大丈夫です!


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